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最後の魔族部隊

すっかり回復したルドルフ達は、この国に来ている遠征部隊を地下世界に帰すため

説得という名の戦闘をしに出発しようとしていた。

そんな折、ガンゼル王から同行したいと言われ、ルドルフ達は困り果てていた。


なぜかというと、ルドルフ達はガンゼル王にジルベルトが魔族であることを

伝えず隠していた。もしこのままガンゼルがルドルフ達に同行した場合、

ジルベルトが前に出て魔族達を説得する時、彼が魔族であり同時に魔王であることが

ガンゼル王にバレてしまう。


そうなったら絶対面倒なことになると誰もがそう思ったからである。


『どうしたらいいかな?』

「彼が魔王だということは伏せてるから、同行されるのは困るわね。」

「余計な混乱は避けたいしねー、俺まだ死にたくないし。」

「だったら問答無用でぶちのめせばいいんじゃないか?」

「・・・? おう、さ、ま・・・を?」

「魔族共をだよ。今までだってそうしてきたじゃないか。」


ローランの言葉に「そう言われてみれば・・・」と、説得できなかった魔族達を問答無用で

倒していったローランの姿を全員が思い出すのであった。


「まぁ、こんな所にまで来るぐらいだもの、説得は通じないと考えた方がいいわね。」

「説得はもう諦める方向か、でもその方が安全だな、俺が。」

『お前がかよ!』

「ガンゼルは強いぜ。この俺が保証するぜ!」

『王様を呼び捨て・・・』

「そうね、戦力が増えるなら断る理由もないわ。」

「よし、決まりだ。ガンゼル、魔族共を倒しに行こうぜ!」


ローランがガンゼル王を呼び捨てしたことに周りの兵士たちはざわついたが、

彼自身が気にする様子もなく返事をしたことから、その後様々な憶測が飛び交かうのであった。


その後、魔族が襲ってくる方角から潜伏しているオアシスを割り出したルドルフ達は、

ベティに城の守りを任せガンゼルと共に出発した。


再び砂漠を横断するということで、ルドルフとジルベルトはローランに担がれ、

リーティエンドとマリアナはガンゼルに担がれるのであった。




魔族達が拠点としているであろうオアシスに向かう道中、ガンゼルはふと思い立ったように

肩に担いでいるリーティエンドに話しかけた。


「思ったのだが、こちらから出向かずとも奴らを城で迎え撃つ方がよかったのではないか?」


ガンゼルに担がれ、肩の上で魔法を唱え続けていたリーティエンドは、詠唱を一旦止め

ため息交じりに答えた。


「いつ来るかもわからないなら、待つのなんて時間の無駄よ。」

「しかし、お前たちは暑さに弱いのだろう?このまま進むのは危険ではないのか?」

「だからこうやって氷魔法で周囲を冷やしているんじゃない。でなきゃこんな所来たくもないわ。

 ・・・ほら、わかったら無駄口叩いてないで進んでちょうだい。」


そう言ってガンゼルを急かすと、リーティエンドは再び魔法を唱え始めた。

彼女を中心に小さな氷の粒が沢山浮かび上がり、その氷が周囲の空気を冷やしていく。

リーティエンドのこの魔法のおかげで、ルドルフもジルベルトもマリアナも

暑さにやられることなく進めていた。


ローランとガンゼルのおかげで、なんの苦労もなく目的のオアシスにたどり着いたルドルフ達。

そこにはテントが張ってあり、魔族達が武器の手入れや食事など、思い思いに過ごしていた。


そんな様子を茂みの裏からこっそり覗いていると、ガンゼルが驚いたように口を開いた。


「・・・これは・・・どういうことだ?あれは・・・人族ではないか?」


拠点としているオアシスで、魔族達は被り物をせずに過ごしていた。

そのため、ガンゼルには魔族が人族にしか見えなかったのだ。


「よく見なさい、彼らは私たちと違って赤い髪をしているでしょう?あれが魔族の証拠よ。」

「む・・・そうか・・・確かに赤いな・・・」


魔族たちを眺めながら髪の色を確認していたガンゼルが、ふとジルベルトに目線を移した。

その瞬間、赤い髪のままのジルベルトに全員が「しまった」と思った。


「そなたの髪も赤いな・・・もしや?」

「彼は突然変異で赤くなってしまったのよ。」


疑い始めたガンゼルにリーティエンドはさらりと嘘をついた。

さすがにそんな嘘は信じないだろうとルドルフは思ったが、ガンゼルはそれをすぐに信じた。


「そうであったか、苦労したのだな・・・」

『信じちゃうの!?』

「純粋というか、単純というか・・・いや、助かったけどさ・・・」


リーティエンドの嘘のおかげで疑われずに済んだジルベルトは、少し複雑な気持ちであったが

それでも命拾いしたことに変わりないと安堵するのであった。


「それじゃあ、あとは貴方たちに任せるわ。」

「うむ。魔法を使い続け疲れたであろう。ゆっくり休むといい。」

「えぇ、そうするわ。」

「腕がなるぜ。」

『生き生きしてるなー・・・』


嬉しそうに口角を上げ、武器を構えるローランとガンゼル。

お互いに目配せをし頷くと、「行くぞ!」という掛け声と共に魔族達の前に飛び出した。


突然の敵襲に魔族達は驚いたが、すぐに武器を構え応戦する態勢を整えた。

しかし、相手は人族最強と言っても過言ではない戦士ローランとガンゼル王だ、

魔族達は防戦一方で次々とやられていくのだった。


そんないつも通りとも言える光景を、残ったルドルフと3人は茂みの裏から傍観していた。


『相変わらずすごいなー・・・』

「あの二人が組んだら、僕たち魔族は終わりかもしれない。」

「ふ・・・たり・・・は・・・さい、きょ・・・う・・・」

「あのペースじゃ、あまり休めそうもないわね・・・」


リーティエンドの思った通りに、さほど時間もかからず遠征部隊の魔族を全滅させた

ローランとガンゼルは、お互いに倒した魔族の数を言い合っていた。

そんな二人を放置してリーティエンドは倒れている魔族達に伝えた。


「今すぐ地下世界に帰るのなら見逃してあげるわ。帰らないのなら・・・死ぬわよ?」


ローランとガンゼルの二人にコテンパンにやられた魔族達はもう彼らには敵わないと悟り、

同時にリーティエンドの言葉が嘘でもハッタリでもないと直感した。


「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」


魔族の一人が叫び声を上げ走り出すと、それにつられるように他の魔族達も声を上げながら

オアシスから逃げ出して行った。魔族全員がオアシスから逃げたしたのを確認すると、

リーティエンドは「やっと終わったわ」と吐き捨てるように呟いた。


静かになったオアシスでルドルフは「くぅーん」と尋ねるように鳴いた。


『・・・これで全部終わったのか?』

「そうだね。あの遠征部隊が最後だと思うし、これで帰れるかな?」

「我々だけでは、魔族を追い出すことは叶わなかっただろう。勇者達よ、感謝する。」

「俺もお前と戦えて楽しかったぜ、ガンゼル。」

「・・・おわ・・・か、れ・・・なの・・・?」


ローランとガンゼルが固い握手を交わす中、マリアナは寂しそうな表情を浮かべ、

ルドルフとジルベルトは、ようやく家に帰れると涙ながらに喜んだ。

そんな空気をため息交じりに見ていたリーティエンドが口を開いた。


「感動してるところ悪いけど、確認のため一度西の国に戻るわよ。」

『・・・なんで?今ので魔族は終わりなんだろ?』

「彼らがちゃんと地下世界に帰って行ったかはわからないでしょう?」

「さすがに大丈夫だと思うけど・・・まぁ、俺は戻らないと帰れないから問題ないな。」

「ふむ・・・さすがに西の国までは同行できぬが、国境までは送らせてくれ。」

「そうしてくれると助かるわ。」


遠征部隊の魔族達が、ちゃんと天の柱に向かったか確認するため、ルドルフ達は再び

西の国ウィルパへと向かうこととなった。


国境までの道のりは砂漠のため、前回同様ルドルフ達をローランとガンゼルが担ぎ、

リーティエンドが魔法で周囲を冷やしながら進むのであった。





*おまけ*


ドン「わしの城を魔族から取り戻したそうだな。よくやったぞ勇者達よ。」

ルドルフ『・・・なんだこの偉そうなおっさん?』

マリアナ「・・・どこ、か・・・で・・・み、た?」

ベティ「西の国のドン国王です。」

リーテ「あぁ・・・あの悪シュ・・・金の像そっくりね。」

ルドルフ『言われてみれば・・・』

ドン「あれを見たか?あの威厳溢れるわしの像を!大黒鳥もあれを盗むことはせんのだぞ!」

ルドルフ『あー・・・そういや金ぴかが好きなやつなのに見なかったな・・・』

ドン「わしの威厳ある姿に恐れをなしたのだ!素晴らしいだろう!!」

ルドルフ『・・・うーん・・・単に重くて持っていけなかったとか?』

リーテ「そういう可能性もあるわね。(悪趣味すぎて盗まないだけかと思ってたわ)」

ドン「あぁ、もうすぐあの像たちにも会えるのだな!」

ルドルフ『ギクリ!』

ドン「きっと汚れているであろう。帰ったらすぐに清掃しなくてはな!」

ルドルフ『(・・・言えない。リーティエンドが魔法で全部壊したとか言えない・・・)』

リーテ「そうですね。綺麗にしてあげてください。(にっこり)」

ルドルフ『すごい爽やかな笑顔してる・・・』


******


そして後日、西の国に戻ったドンは変わり果てた金の像を見てショックを受けるのであった。


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