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似た者同士

夜が明けて、すっかり暑くなった砂漠とは対照的に緑が多く過ごしやすいオアシスの中。

慣れない砂漠を歩き疲れ切っていたルドルフ達は、疲れを癒すためそれぞれ休息していた。


そんな彼らをよそに、まったく疲れを見せていないローランは、一人オアシスの外へ出ると

ジルベルトの被り物を被ったまま砂漠で剣を振るい鍛錬を始めた。

そんなローランの姿にジルベルトは、もうあの被り物はかぶれないな・・・と

どこか諦めた瞳で見つめるのだった。


『ローランは本当にすごいなぁ・・・』

「まったくだ・・・人族は恐ろしいよ・・・」

「言っておくけれど、あれは特殊な例よ?人族全部があれだと思わないでちょうだいね。」

「人族が全部彼のようだったら僕は泣くよ?というか、そんな地上嫌だ・・・」

「・・・せん、し・・・さま、と、ても・・・つよい・・・の・・・」

『もしかして、あいつより強いやつはいないんじゃないか?』

「・・・どうかしら?」

「彼より強いやつとか・・・魔族側で探すのも難しいよ?」

『まじか!?』


ジルベルトの発言に「そんなにローランは強いのか!?」と、彼の強さを再認識したルドルフは

ローラン一人でも、この大陸を救えたんじゃないか?と思ってしまう。


そんな人間離れしたローランは、ルドルフ達が話している間も黙々と素振りを続けていた。


素振りしているローランの視界に、被り物をしているため狭くなっている視界の端で

何かが映った。それは黒い影のようなものだった。


それを認識した瞬間、その黒い影はローランに襲い掛かってきた。


影の背丈ほどの大きさをした大きな剣が振り下ろされる。

ローランは避けずにその攻撃を剣で受け止めた。金属同士がぶつかり合う音が響く。


『なっ、なんだ!?』


その音に驚いたルドルフ達は、音のした方に向かった。

そこにはローランと、黒・・・いや、茶色いローブのようなものを羽織った大男がいた。


「くっ・・・あんた何者だ!?」


巨大な剣を受け止めた衝撃でよろめきながら、ローランはローブの大男を見た。

男は何も語らず、羽織っていたローブを脱ぎ捨てると大剣を構え直した。

ローブの下から現れたのは、健康的に日焼けした褐色の肌に鍛え上げられた筋肉をした

40~50代ぐらいの逞しい大男だった。

男の姿を見たローランは、彼が自分と同等かそれ以上の戦士だと直感した。


「・・・覚悟っ!!」


大男はひと言そう発すると、再びローランに襲い掛かった。

ローランはニヤリと笑みを浮かべ、「面白い」と呟きその攻撃に備えた。


かくして大男とローランの戦いは始まった。

剣と剣が何度もぶつかり合う音が響き、激しい攻防が繰り広げられていた。


その様子をオアシスの茂みに身を隠しながらルドルフ達はコッソリ観戦していた。


『あのおっさんすごいな・・・ローランと渡り合ってるぞ。』

「あの大男も人族だよね?なんであんなのが他にもいるの?」

「知らないわよ。」

「・・・でも・・・なん、で・・・たたかって・・・るの?」


ローランと互角の戦いを繰り広げている大男の強さに驚いていたルドルフ達は、

マリアナの言葉に「そういえば・・・」と口をそろえる。


「大方、魔族と勘違いされたんでしょ?」

『そういやジルの被り物かぶったままだな・・・』

「むしろ、なんであの状態であんなに戦えるんだろ?」

『てか止めなくていいのか!?』

「あの中に割って入れるならどうぞ。骨ぐらいは拾って上げるわ。」

「あぶ、な・・・いの・・・」

「決着ついてからでいいんじゃないかな。」

『お前ら冷たいな。』


ルドルフは未だに激しい戦いを繰り広げている二人をしばらく見つめ、

呆れるように「わうー」と鳴いた後、二人の中に割って入ることは無理だと諦めた。


『これ、どっちが勝つんだ?』

「実力は五分五分って感じだけど・・・」

「砂漠での戦いに慣れてる向こうが有利ね。」

「せん、し・・・さま、く、るし・・・そう・・・」

「ほんとだ、砂のせいで動きにくそう。」

『がんばれローラン!』


ローランと大男、互角に見える二人の戦いは、突然大きく動いた。

敵に向かおうと踏み出した瞬間、地面の砂に足を取られローランは大きくよろめいてしまう。

チャンスとばかりに大男は渾身の一撃をローランに放つ。

よろめきながらも剣を構え、その一撃を受け止めようとするローラン。


ガキンッ!!と剣の刃が折れた音が響いた。


折れたのはローランの剣だった。

旅立つ時与えられた、最高の鍛冶屋によって鍛えられた最高の剣。

幾多の戦場を共にした剣が、今ここで役目を終えたのであった。


剣の刃が折れたと同時に、大男の放った渾身の一撃の衝撃で

かぶっていたジルベルトの被り物が頭から抜けてローランの背後に落ちた。


被り物がなくなりローランの素顔が現れると、大男は目を見開き酷く驚いた。


「なっ・・・人・・・だと!?」

「お前強いな、こんなに強い人族がいたとは迂闊だったぜ!」


強い相手と戦えて満足したのか、剣が折れ負けたにも関わらず

ローランは晴れやかな顔をしていた。


「なぜ魔族が人族に・・・まさか、操られていたのか!?」


被り物が外れ、現れたのが自分と同じ人族だったことに驚いた大男は、

その理由を自分なりに考えて理解しようとしていた。

その様子に、面倒なことになりそうだと思ったルドルフ達は、ローランと大男の所へ近づいた。


「・・・そうか・・・みんな操られているのか・・・」

『いや違うから!』

「どうしてその発想になったんだろう・・・」

「思い込みは恐ろしいわね。」

「む?君たちは・・・人族のようだな。なぜここに?難民か?」

「ち・・・がい・・・ま、す・・・」


状況がまったくわからない大男に、リーティエンドは掻い摘んで説明することにした。

自分たちが勇者の一行であること、西の国から魔族が撤退したこと、

南の国を攻めている魔族達を倒しにきたことなどを話した。


「そうであったか・・・すでに西の国は解放されて・・・ドンも喜ぶだろう。」

「それで、あなたはここで何を?見た感じ戦士のようだけど・・・」

「おぉ、自己紹介が遅れたな。私はこのノーファを治める国王、ガンゼル。

 我が友、西の国王ドンの願いにより、彼の城を取り戻しに行く道中であった。」


大男が国王ガンゼルと名乗ると、その場にいた全員が「は?」と聞き返した。


『おっさん、王様だったのか!?』

「国王が護衛も付けずに行動していいの!?」

「ほう、お前が噂の南の国の王だったのか。どうりで強いわけだ。」

「いや、お主もなかなかに強かったぞ。今度手合わせを願いたいものだ。」

「あぁ、いつでもいいぜ!」


固く握手を交わし、再戦の約束をするローランとガンゼル王。

そんな二人を見ていたルドルフは「わうー」と呆れたように鳴いた。


『まるでローランが二人いるみたいだ・・・』

「奇遇ね、私もそう見えるわ。」

「べつ、じん・・・な、のに・・・?」

「中身がなんだか似てるもんね。俺もそう見えてきたよ・・・」


二人に呆れながら、これからどうするかと話し合うルドルフ達だったが、

ガンゼルの申し出で一行は、ガンゼルと共にノーファ城へ向かうことになった。

しかし、ガンゼルの提案で最短ルートが提示されるとリーティエンドが反発するのだった。


「このルートで行くって・・・私たちを殺す気?たしかに城へは最短で着くけれど、

 オアシスが少なすぎるわ!こんなの無謀よ!」

『それにオイラ達、こんな暑い中歩くのは無理だよ?』

「あー・・・うん、無理だね。というかヤダ・・・」

「なんだ、若いのにだらしがないな。それでも勇者一行か?」

「俺は問題ないけどな。」

『お前はそうだろうなぁ・・・』

「ならば仕方ない・・・」


仕方ないと言ったガンゼルは、突然リーティエンドを肩に担いだ。

驚いたリーティエンドはジタバタと体を動かす。


「ちょっと!?何するのよ下ろして!!」

「歩けないのなら運んでやるしかないだろう。心配はいらん、これもよい修行になる。」

「そういう問題じゃないわよ!」

「確かにいい修行だよな。」

「ホントにそっくりだよ君たち・・・」


ガンゼルはリーティエンドとマリアナを肩に担ぎ、ローランはルドルフとジルベルトを肩に担ぐと

暑い砂漠の中、最短ルートを通りノーファ城へ出発するのだった。




*おまけ*


ガンゼル「こんなに強いとは、さすが勇者一行の戦士だ。」

ローラン「当然だ。俺が目指すのは最強だからな!」

ガンゼル「はっはっは、気に入った!娘の伴侶になる気はないか?」

ローラン「悪いが結婚には興味はない。身を固めては最強になれないからな。」

ガンゼル「だが、守るべきものがあると、さらに強くなれるぞ。」

ローラン「何、それは本当か!?ならば今すぐ・・・」

ベティ「だが断る!」

ガンゼル「おぉ、ベティではないか。いつの間に?」

ベティ「何やら嫌な予感がしたので・・・」

ガンゼル「丁度いい、ローランよ、これが娘のベティだ。」

ローラン「ほう・・・強そうだな。」

ガンゼル「やはりわかるか、ベティは強いぞ。私よりもな。」

ローラン「それは楽しみだ!」

ベティ「・・・はぁ・・・私は知的な人を伴侶に迎えたいです・・・」

ローラン「いくぞ!」

ベティ「(無言の腹パン)」

ローラン「ぐあっ!」(地面に倒れ込む)

ルドルフ『あのローランが一撃で沈んだー!?』

ガンゼル「さすがは私の娘だ。」


******


ベティ最強。ちなみにこれがきっかけでローランにライバル認定されてしまった

なんてことがあったりなかったりw

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