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説明は簡潔に

魔王という存在、職業がどのような仕事をするのかをクルウから聞かされたルドルフ達は

自分たちが想像する魔王とかけ離れていたいために、大きなショックを受けていた。

一番ショックを受けていたのはローランだろう。信じられないと言った表情で口を開いた。


「魔王とは一番強い魔族がなるものじゃないのか!?」

「昔はそうだったらしいけど、それだと争いが絶えなかったからクジになったらしいよ。」

『なんでクジになったんだ?』

「その王様がクジを作るのが大好きだったからだってさ、そう日記に書いてあった。」

『日記を書く魔王って・・・』

「まぁ、それ以来、魔王はクジで決める。というのが決まりになってね、こうして

 子供が魔王に選ばれることも増えてしまったんだ。」


やれやれといった感じに肩をすくめるクルウにガックリと肩を落とすローラン。

魔王は最強だと思い込んでいただけに、そのショックは計り知れないだろう。


「・・・さて、話は戻るけど、魔族の全員を地下世界に帰すのが難しいって話、

 魔族には喧嘩っ早い連中が多いから、そいつらを連れて帰るのが難しいってことなんだ。」

「特に・・・どこだっけ?南・・・か?そこの王様がめちゃくちゃ強いらしくて、

 なんか血が騒ぐとか言って、みんな南の方に遠征に行きたがるんだよね。」

「南の国だと!?それは王一人が魔族の部隊を全滅させたというやつか!?」

「そうだけど・・・どうしてその情報を・・・?」


南の国と聞いて、情報収集で立ち寄った魔族の街で聞いた話を思い出し

ローランはバッと顔を上げてジルベルトの話に食いついた。


「まぁ、そんな感じでほとんどの魔族は今も南で戦ってると思うよ、多分。」

「・・・魔族も脳筋・・・」

「彼らを説得するのは骨が折れるだろうね。南の王を倒すことで頭が一杯だろうし。」


話を聞きながら、南の国を攻めていたはずなのに、なぜクルウが北の国に現れたのか、

それを疑問に思ったリーティエンドはクルウに尋ねた。


「うん?あの王がいる限り、南の国を手に入れることはできないと思ってね、

 僕は先に北の国を攻め落とそうと考えて、最高傑作と共に偵察に行っていたんだ。」

「あぁ、私が焼き尽くしたあれね。」

「・・・迂闊だったよ・・・まさかジョセフィーヌがはぐれて迷子になるなんて・・・」

『あれ迷子だったの!普通に敵が現れたんだと思ってたよ!?』


ジョセフィーヌがただの迷子であり、一方的に倒してしまったことに少しの罪悪感を

抱き、ルドルフは「なんかごめん」とクルウに謝罪するのだった。


「争い事が嫌いって言いながらも、しっかり攻め込もうとしてるのね。矛盾だわ。」

「それがジルの願いなら僕は叶えるだけだよ。」

「ジルの願い・・・魔王の願い・・・世界征服・・・」

「違うから!!」


ジルベルトの願いが何か考えていたユキだったが、魔王の願いは大体世界征服だという事を

思い出し、ジルベルトの願いも世界征服だと勝手に思い込んだ。


「そもそも地上に攻め込んできた理由は何?」

「あぁ・・・事の発端は、ジルの一言から始まったんだが・・・」

「説明は簡潔に、1分以内でお願いするわ。」

『1分!?』

「それはまた無理があるな・・・まぁ、努力はするよ。」

『努力しちゃうの!?普通の説明でいいんじゃないの!?』

「・・・ルーがツッコミに目覚めた。」

『何の話!?』


リーティエンドに「1分以内」というタイムリミットを与えられたクルウは

しばらく考えて、説明が簡潔に1分以内に収まるようにまとめた。


「ジルが地上に行きたいと言い出した時、他の魔族が攻め込むと勝手に勘違いしたんだ。

 そのまま訂正もできずに我々は地上に攻め込むことになった。こんな感じかな。」

「簡潔すぎて伝わらないわね。」

『自分で言ったのに!?』


簡潔に1分以内に収めた説明では結局わかりづらく、クルウは1から説明することにした。


「ジルが魔王になってしばらくたった頃、彼が突然言い出したんだ

 <地上世界に行ってみたい>ってね。多分、無意識に発した言葉なんだろうね。」

「俺自身、全然覚えてないもんな!」

「ただ、タイミングが悪かった。その時、ジルの側には僕以外にも数人の魔族がいたんだ。

 その魔族たちは、すぐにその言葉を他の魔族にも伝えていった。」

「気づいたら<地上世界に行きたい>が<地上世界を攻めに行く>に変わってたんだよな・・・」


遠い目をして、どうしてかなー?と呟くジルベルトに、

まるで、伝えていくうちに内容が変わっていく伝言ゲームのようだとユキは思った。


「地上世界に攻め込むと聞いた魔族たちは、意気揚々と戦いの準備を始めてね・・・

 訂正する暇もなく、我々魔族は地上界に攻め込む事になったんだ。」


事の発端はこんな感じだとクルウが言うと、魔族が攻めてきた理由がねじ曲がった言葉による

勘違いだということ知り、リーティエンドは頭を抱えた。

ルドルフは「わうん」と首を傾げながら不思議そうにジルベルトに尋ねた。


『地上世界ってここだろ?なんでお前はここに来たかったんだ?』

「地上世界は地下世界と違って空と太陽があって、こっちよりずっと明るいんだ。

 それに植物もよく育つから野菜や果物も豊富だし・・・」

「待って。地下世界にいる魔王がどうしてそんなに地上世界に詳しいのかしら?」


地下世界にいるはずの魔族が、地上世界に詳しい事を疑問に思ったリーティエンドが

割って入った。ルドルフは地下世界がどんな所か知らないため地上世界に行きたいと言った

ジルベルトの気持ちがいまいちわからず「くぅん?」と鳴いた。


「俺、生まれつき違う世界を行き来できる力があるんだ。

 それで初めて異世界に行った時、大きな青い空と光る太陽にすごい驚いてさ。」


キラキラと目を輝かせながら当時の事を語るジルベルト。

自分が見たことないものや、自分と大して見た目が変わらない人たちがいたことを話し、

地上世界も、きっとこんな世界なのだろうとずっと思っていた。


「それ以来俺、地上世界にずっと行ってみたくてさ。念願だったんだ。」


嬉しそうに念願が叶ったと笑うジルベルトに、ユキは「おめでとう」と拍手を送り

ルドルフも「よかったなー!」と一緒に喜んであげた。

そんな様子に色々と言いたいことが増えたリーティエンドはジルベルトに質問を開始する。


「色々聞きたいことはあるけれど・・・まず、どうやって違う世界を行き来しているのか、

 それを教えてちょうだい。私の知らない魔法なら興味があるわ。」

「んー・・・魔法ってわけじゃないんだよなー。こう・・・なんていうか

 行きたいなーって願ったら異世界への道ができて自由に行き来できてるから・・・」


ジルベルトの答えに「そう・・・」と残念そうにするリーティエンドだったが、

すぐに次の質問を始めた。


「なら、貴方たち魔族は、どうやって地上世界にやってきたの?

 私の知りうる知識でも、地下世界に行く方法は分かっていないのに・・・」

「あぁそれは、天の柱を使ってきたんだ。」

「は?」


ジルベルトの言葉にリーティエンドは固まった。

天の柱がただの柱じゃないということはリーティエンドも気づいていたが、

それを魔族側はすでに解明し、利用していることにショックを受けて固まったのであった。


『あれって、ただのでっかい柱じゃないのか?』


ルドルフが北の国で見た天の柱を思い出し、ジルベルトに尋ねると

ジルベルトは興奮するように話しだした。


「俺もずっとそう思ってたんだけど、ある日異世界に行った時に同じものを見つけたんだ。

 それを見た時、これだ!って思ってさー。」

「・・・もしかして・・・」

「えれべーたーって言うんだろ?案の定、天の柱も同じだったんだよ!」

『えれべーたー?』

「やっぱりそれか・・・」


エレベーターに乗ったことのないルドルフは何のことかわからず「わう?」と首を傾げていたが

それを知っているユキは、「なんで異世界にエレベーターが?」と心の中で思うのであった。


魔族が地上世界に攻め込んできた理由が判明。伝言ゲームとか、ネタが古いかな?

簡潔な説明って難しいよね・・・


*おまけ*


リーテ「そういえば、どうして西の国を最初に攻めようと思ったの?」

ジル「西側にドアが開いたから・・・なくとなく?」

リーテ「あの城の悪趣味な像とか、壊してもよかったんじゃない?」

ジル「人の物勝手に壊したらダメだろ。たしかに悪趣味だったけど・・・」

リーテ「魔族ならそれぐらいしてもいいのよ。」

クルウ「僕の義弟に変なこと吹き込むのはやめてくれないか。」

リーテ「ちっ・・・」

ルドルフ『金の像を壊した事実を魔王のせいにしようとしたのか?』


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