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ようやく再会

仲間と離れ、一匹走るルドルフは、自分の主、ユキが待っているという部屋を目指していた。

長い通路を経てようやくたどり着いた部屋の扉の前でルドルフはあることに気が付く。


『あ、オイラ犬だから扉を開けられない!!』


ドアノブに前足をかけて、なんとか扉を開けようとするが中々開けられない。

それもそのはず、その扉は外側に開く構造になっているのだ。

扉を引くことができないルドルフには到底開けることはできないだろう。


『ど、どうしよう・・・』


部屋のの前で「くーん」と切なく鳴くルドルフ。この扉の先に主人がいるというのに

扉を開けられず自分はこの先へは行けない。

ルドルフは段々悲しくなり、大きな声で叫び出していた。


『ご主人ご主人ご主人ーーーーーーー!!』


雄叫びのように「ワォォォン!」と扉の前で吠えていると、突然ドアノブが動き

扉の向こうから黒髪の少年が顔を出した。


「何?うるさい・・・」


目の前に現れた少年、ユキは不機嫌そうな顔でドアを開けたが、そこには誰もいなかった。

外側に開く扉であったため、扉の前にいたルドルフは扉に押されてしまい

扉の陰に隠れてしまったのだ。ユキは不機嫌な表情のまま首を傾げる。


扉の陰に隠れていたルドルフが顔を出し、目の前にいる少年を視界に入れると

懐かしいその姿に、自然と尻尾が揺れ始め嬉しそうな表情で

目の前の少年、ユキに飛びついた。

突然飛びつかれたユキはバランスを崩ししりもちをついてしまう。


『ご主人だ!ホントにご主人だー!わーん、ご主人ー!』

「えっ!?・・・ルー?・・・本物?」

『そうだよ、オイラだよ、本物だよー。』


泣くように「きゅーんきゅーん」と自分の顔をユキの胸にすりつけるルドルフ。

そんなルドルフを観察していたユキは、この犬が自分の飼い犬のルー、

ルドルフであることを確信すると、ゆっくりと口を開いた。


「ルーの一人称、なんでオイラなの?」

『再会した第一声がそれ!?』


感動の再会が台無しだ。とルドルフは思ったが、自分の頭を撫でるユキの手が

とても優しかったので、すぐに機嫌を治していた。


『って、オイラの言葉通じてるの!?』

「うん」

『そのわりにはご主人、あんまり驚かないね・・・』

「だってここ異世界だし、喋る犬の一匹や二匹、いても普通かと。」

『異世界に馴染んでる!?』


あまりにも自然に会話をしているユキに驚きつつも「この世界の犬も喋らないよ」と

このフィーリシア大陸の犬も喋ることはできない事を伝えた。


「ふーん・・・」

『興味なし!?』

「で、ルーは勇者なのか?」

『うん、一応勇者って呼ばれてるけど?』

「ホントに勇者だったんだ・・・でもなんで勇者が犬?人材不足?」

『知らないよそんなこと!それより大変だったんだよー今まで!』


それからルドルフは、今までの事を話そうとしたが、うまく説明することができず

結局、「とにかく大変だったんだよー」の一言で終わった。


「そっか、ご苦労さん。」

『そんだけ!?』

「そんだけ。」

『・・・ホントに大変だったんだよ、オイラ・・・』

「うん・・・無事でよかった。」


落ち込むように「きゅーん」と下を向いたルドルフ。

そんなルドルフの姿に、ユキは小さく微笑んでルドルフ優しく抱きしめた。

懐かしい匂い懐かしい温もり、ルドルフはぶんぶんと尻尾を振り

その喜びを体現していた。


しばらくして、ローラン、リーティエンド、マリアナの三人とクルウが部屋にやってきた。


「感動の再会おめでとう、勇者サマ。」

「やっぱり君の犬だったんだな。よかったね、ユキ。」

『おう、ありがとな。』

「・・・勇者、なんだこいつは?黒髪だが魔族か?倒していいのか?」

『オイラのご主人だよ!!倒そうとしないでよ!!』

「なにこの脳筋、ルーの仲間?」


ローランの態度に「脳筋」と発言したユキに全員が首を傾げた。


「そういや前に勇者にも言われたが、その「のうきん」ってなんだ?」

「ルーが?意味知ってたっけ?」

『ううん、知らないよ。ただ、ご主人が前、ローランみたいなやつをそう呼んでたから。』

「あぁ・・・」

「それで、のうきんとはどういう意味だ?」


ローランの問いにユキは少し考え、「あー・・・」と言いながら説明した。


「<のう>りょくが高くて<きん>にくしつの頼れる仲間・・・って意味。」

(嘘だ・・・)

(嘘ね・・・)

(うそ・・・か、な・・・?)

(嘘だな・・・)


ユキの説明にローラン以外の誰もが嘘だと見破ったが、

誰一人それを口にすることはなかった。

ローランは「うんうん、そうかー」とすっかり信じ込みご機嫌であった。


「ルーの仲間、へんなやつだな。」

『あ、ちゃんと紹介するよ、オイラの仲間の・・・』

「のうきんのローランだ。よろしく頼むぜ、勇者の主さんよ。」

「あぁ・・・うん・・・」

「バカは放っておいていいわよ。私はリーティエンド、見ての通り魔法使いよ。」

『それで、こいつがマリアナ。』

「は・・・はじ・・・め・・・ま・・・して・・・」

「・・・どうも、早川雪、です。」


お互いに自己紹介を終えたのを見届けると、ルドルフは何かに気づくように

ここにいる全員の顔を確認した。そして「あれ?」と口を開くのだった。、


『そういえば、なんでそいつが一緒なんだ?』

「今更かい!?」

「クルウいたんだ?」

「いたよ!さっきからずっといたし、君たちに話しかけもしたよ!?」

『気づかなかった・・・』

「で、なんでいるの?ジルを守って散るんじゃなかったの?」

「そんなこと言ってないよ!?君の中で僕はどんな存在になってるのさ!?」

「・・・魔王を守ろうと戦って無様に散る中ボス?」

「酷くないか!?・・・あぁ、もう・・・話が進まない・・・」


らちが明かないと思ったクルウは大きなため息をつき、「余計な話はしないでくれ」と

ユキとルドルフとその仲間たちに伝えてから話を始めた。


「僕がここに、勇者一行と一緒なのは、もう戦う理由がなくなったからだよ。」

『戦う理由?』

「私たちは魔王を倒すために、彼は魔王を守るために、そう思って戦ってきたけれど、

 そもそも私たちは魔王を倒す必要はないのよ。」

『そうなのか?』

「えぇ、神族の予言に<魔王を倒す>という言葉がなかったんですもの、それはつまり、

 魔王を倒さずにこのフィーリシア大陸を取り戻す方法があるということ。」

「もともとジルも戦いを好まない子だし、話し合いで解決できると思うんだ。」

「・・・まぁ、ジルなら平気だと思うけど・・・」


クルウとリーティエンドの話を聞きながら納得するユキであったが、

すぐ側でそれを受け入れられず不機嫌な顔のローランの姿が気になってしょうがなかった。


「そんな話納得できるか!魔王を倒してこそ最強の名に相応しいんだぞ!!」

「脳筋はこう言ってるが大丈夫か?」

「いざとなったら息の根を止めるから安心して頂戴。」

『さらっと物騒なこと言ったー!!』

「どこに安心できる要素があるのか僕にはわからない。」

「そせ、い、まほ・・う・・・ある・・・から・・・あん、しん・・・」

『そういう意味じゃないと思うなぁ・・・』

「俺はまだ戦い足りないんだ!!魔王と戦うぞ!!」

「やめてくれ!ジルを殺す気か!!」

『ローラン落ち着けって!!』

「・・・これが狂戦士バーサーカーか・・・」

『ご主人も手伝ってー!』

「えー・・・やだめんどい。」

「なら、今すぐ止めましょうか?息の根・・・」

「・・・勇者の仲間って・・・人族って怖いね・・・」


興奮するローランをなんとか全員でなだめ落ち着かせることに成功すると、

まずは「いきなり襲い掛からない」という約束をしっかりと取り付けた。

そして、さらに用心深くローランを最後尾に歩かせることによって

ルドルフ達はようやく、魔王のいる玉座の間へと向かうことができるのであった。


ルドルフがようやく飼い主のユキと再会。そして増えていく会話量・・・


*おまけ*


ルドルフ「ご主人に再会できて、オイラ嬉しいよー」

ユキ「俺も・・・どっかで死んでると思ってたから、会えて嬉しいよ。」

ルドルフ「何気に酷くない?」

ユキ「現実は無情。」

ルドルフ「でもオイラはちゃんと生きてるよ。」

ユキ「・・・そうだね。」

ルドルフ「この戦いが終わったら、オイラ達帰れるよね。」

ユキ「ルー、人はそれをフラグと言う。」

ルドルフ「・・・えっ?」


*****


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