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三人の仲間と出発

まず最初に自己紹介を始めたのは、短髪で筋肉質の大男

2mはありそうなその大きな体はルドルフに威圧感を与えていた。

ルドルフは大男を見上げながら「クーン」と切なげに鳴くと

大男はニカッと歯を見せて笑って「自分は怖くない」とアピールした。


「俺の名前はローラン。この国一番の戦士だ、戦いなら任せてくれ!」

『お、おう・・・』

「早く魔族を全部ぶちのめしにいこうぜ!勇者」

『・・・脳筋?』


ルドルフの言葉にローランは首を傾げたが、ルドルフが「なんでもない」と言うと

特に気にならなかったのか「よろしくな」と言って、ルドルフの頭を撫でた。


次に自己紹介をしたのはロングヘアーのスリムな女性

黒を基調とした服に身を包み、どこかやる気のない瞳でルドルフを見つめながら

溜息混じりに彼女は名乗った。


「リーティエンド。見ての通り魔法使いよ・・・」

『魔法が使えるのか、すごいなお前。』

「・・・おかげで貧乏くじ引いちゃったわ。」

『貧乏くじ?』

「魔王退治なんて面倒なだけじゃない。」

『やる気ないな!』


自分の自己紹介はもう終わったと言わんばかりにリーティエンドは

持っていた本を読み始める。その姿にルドルフは何も言わずに次の人に視線を運んだ。


最後に残ったのは、ボブで眼鏡をかけた小柄な少女だった。

神官ハーユが着ている服によく似た服を着ていて、短い杖を抱えているその少女は

ガクガクと大きく体を震わせていた。口をパクパクと何度も動かして喋ろうとしているが

言葉が声になって出てこないようだ。


『おいおい、大丈夫か?』


気になったルドルフが少女に話しかけると少女はその声に悲鳴を上げて

頭を抱えてしゃがみ込んだ。ルドルフは少女を怯えさせてしまったと思い「クーン」と

慰めるような鳴き声で少女に擦り寄った。


「す、すみませ・・・わた、し・・・その・・・」


聞き取れないぐらい小さな声が少女の口から零れる。

その様子を見ていた神官ハーユが慌ててルドルフのもとへ駆け寄ってきた。


「申し訳ありません勇者様。マリアナは人見知りが激しく・・・

初めての人とは、なかなか会話ができないのです。」

『おいおい、そんなのを連れて行って大丈夫なのか?』

「神官としての能力は高いので、問題はないかと。」

『いや、そうじゃなくて・・・』

「・・・たし、が、がんば・・・り、ます・・・から・・・」


俯き震えながらも必死にマリアナは言葉を紡いだ。

神官ハーユに支えられながらマリアナは立ち上がると、ルドルフを真っ直ぐ見つめた。


「・・・だか、ら、つれ、てっ・・・くださ・・・」


マリアナの真っ直ぐな瞳と言葉に、ルドルフはゆっくりと頷いて答えた。


『・・・・・・わかった、連れてくよ。』


神官ハーユは安心した面持ちで一礼すると再び下がって行った。


「わた、し・・・マリアナ、です・・・よろ、く・・・おねが・・・ます・・・」

『あぁ、よろしくなマリアナ。』

「はい・・・」


こうして勇者のお供として選ばれた三人全員の自己紹介は終わった。

自己紹介が終わるのを待っていたソルマン王は、再びルドルフの前に立つと声を上げた。


「さぁ、今こそ我ら人族が立ち上がる時!

勇者ルドルフよ、仲間と共に旅立ち必ずや魔王からフィーリシア大陸を取り戻すのだ!」


ソルマン王の言葉に国民は「おぉー!!」という大音声を上げた。

そして、ルドルフ達が通れるように人波が割れ大神殿の出口までの道が出来る。


『おぉーすげえ。』


ルドルフたちが感心しながら歩き出すと、

二人の鍛冶師がさほどの武具が入った木箱を持ってやってきた。


「勇者殿!是非この武具をお持ちください!」

『いや、オイラじゃそれ装備できないから・・・』

「これは我らの最高傑作!そんなことを言わずにお持ちください!」

『でも・・・』

「必ずや役に立つときが来ます!お持ちください。」

『だから・・・』

「お持ちください。」

『・・・・・・』


ルドルフは軽いデジャヴを感じながら、ふとゲームをやっていた主人の姿を思い出した。

正確には、主人がその時呟いた言葉を・・・


【・・・あぁ、これ無限ループだ。断れないや・・・】


面倒くさそうに溜息をついた主人が印象的だったため覚えていたが

その言葉はまさに今の鍛冶師とルドルフを表しているようでもあった。


『・・・これが主人が言っていた無限ループってやつか・・・』


ルドルフは鍛冶師の頼みを断れないことを悟ると、諦めた表情でその木箱を受け取った。

しかし、ルドルフでは持ち運ぶことができないので、木箱はローランが運ぶことに。

武具を渡し終えた鍛冶師は満足そうに大神殿を出るルドルフたちを見送った。




国民たちの歓声に見送られながら大神殿を出発した勇者ルドルフとその仲間たちは

大神殿が見えなくなり歓声も聞こえなくなった頃、

鍛冶師から受け取った武具をどうするか話し合った。


『これ、どうしたらいいと思う?』

「最高傑作に相応しい武具だな。」

「・・・ぴかぴか・・・」

「金色の鎧なんて趣味が悪いわね。でも売ればお金になるかしら?」

『売っちゃダメだろ!』

「やはり使うのが一番だと思うが?」

『でもオイラじゃ装備できないしなー・・・あっ!』


悩みだしたルドルフは何かを閃いたように「わん!」と吠えた。


『お前が使えばいいんだよローラン!』

「俺が?しかしこれは勇者の武具だろ?」

『荷物になるより使ったほうがいいって。それに勇者専用ってわけでもないだろうし。』

「たしかに俺でも装備できそうだ・・・。なら、ありがたく使わせてもらうぜ勇者。」


そう言ってローランは二人の鍛冶師の最高傑作である立派な剣と金色の鎧を装備した。

金色の鎧が太陽の光を反射してさらに輝きを増す。


『うおっ眩しい!』

「・・・着るとさらに悪趣味ね・・・」

「ぴかぴか・・・まぶしい、です・・・」

「身に付けてわかったが、これはいい装備だぞ!どんな敵にも負ける気がしない。」


金色の鎧を着たローランは拳を天高く上げガッツポーズをした。

そんなローランを頼もしく感じていると、突然空が暗くなり見上げればそこには

真っ黒い羽を持つ巨大な鳥が真上にいてローランをくわえて何処かへ飛び去った。


突然の出来事に呆然とするルドルフだったが、リーティエンドの言葉で我に返る。


「ローラン、あなたの死は無駄にはしないわ。」

『勝手に殺すな!てかあのでっかい鳥はなんだ?敵か?』

「ちが、う・・・あれ・・・大黒鳥・・・ひかる、の、集める・・・鳥・・・」

「あれは大黒鳥っていう鳥よ。昔からこの大陸に住んでいる鳥で光り物を集める習性があるの。」


マリアナのしどろもどろの説明をリーティエンドがフォローした。マリアナはコクコクと頷く


「あの、人・・・ぴかぴかしてた、から・・・」

『あの鎧のせいか・・・』


ローランに悪いことをしたなーと後悔しながらも、着れなくてよかったとルドルフは思った。


『とにかく助けに行かないと。』

「そんなことしなくても、自力で戻ってくるわよ。」

『そうなの?』

「大黒鳥・・・おとなしい、から・・・逃げるの・・・かんたん・・・」


ルドルフの心配をよそにリーティエンドもマリアナも、ローランはすぐに戻ってくると言った。

数分後、二人の言うとおりローランは戻ってきた。大黒鳥の巣は意外と近くにあるようだ。


『ホントに戻ってきた・・・』

「悪い、待たせたな。さぁ、魔族退治に行こう・・・ぜっ!?」


戻ってきたローランが全て言い終わる前に、再び大黒鳥が現れてローランを連れ去った。


「まぁ、こうなるわよね。」

「ぴかぴか・・・してるの、きけん・・・」


それから数分後、ローランは再び戻ってきたが、すぐに大黒鳥に攫われていった。

さらに数分後、ローランは戻ってくるもののまた大黒鳥に攫われ、数分後にまた戻り・・・と

ローランと大黒鳥のいたちごっこがしばらく続いた後、ルドルフが切れた。


『もうその鎧脱げ!捨てろ!』


ルドルフに「ギャンギャン」とやかましく吠えられ、ローランは渋々金色の鎧を脱ぎ捨てた。

その瞬間、大黒鳥は金色の鎧を銜えて飛び去った。その姿を涙ながらに見送るローラン


『これでよし。』

「あぁ・・・俺の鎧・・・」

「もう・・・大丈夫・・・たぶん・・・」

「無駄な時間を過ごしたわね。さぁ早く行きましょう。」

『そうだな、行こう。』


鎧を失ってショックを受けているローランを放置してリーティエンドは歩き出した。

それにルドルフとマリアナが続き、最後にローランがゆっくりと歩く。


かくして彼らは出発した。魔王からフィーリシア大陸を取り戻す旅に・・・



『・・・とりあえず、次の街で鎧買うか・・・』


最後尾をトボトボ歩くローランを見て、ルドルフは溜息混じりにそう呟いた。



しもやけ痛いから、ペースはゆっくりになります。

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