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初戦闘

東のバレッサ王国を旅立って一か月半、

ルドルフ達はようやく東の国と北の国の国境の砦に辿り着いた。

砦と言っても誰かが守っていたり見張っているというわけではなく、

ちょっとした休憩所のようなものである。


ルドルフ達はそのまま砦の中を通り抜け北の国「レミス王国」へと入国した。

北のレミス王国は東のバレッサ王国と比べ気温が低く、

国境よりさらに北にあるレミス城では年中雪が降るほど寒い地域であった。

砦を出たルドルフは身震いし「わふん!」と吠えた。


『なんだここ、ずごい寒いぞ!?』

「北国ですもの、寒いにきまってるでしょう?」

「ゆう・・・しゃ、さま・・・だ、い・・・じょう、ぶ?」


震えるルドルフをよそにリーティエンドとマリアナは寒さを感じていないようだった。

きっと、長袖の服を着ているからだろう。とルドルフは思った。


『早く街に行こう。寒くて凍えそうだ・・・』

「そうね・・・この先防寒着は必要になるし、街に向かいましよう。」

「こんな寒さで音を上げるなんて、勇者もまだまだだな!」

『・・・今のオイラ、冬毛じゃないから寒いんだよ・・・』


自分の体毛が夏毛であることを思い出したルドルフは

ローランの言葉に「くぅん・・・」と寒さに震えながら鳴いた。


そんなルドルフを気遣い、早々に街に向かうことになった一行。

リーティエンドが地図から近くの街の位置と方角を調べ

それをローランに伝えると、ローランを先頭に街へ歩き出した。




歩き続けて一時間ほどだろうか、目指していた街が見えてきた頃

ルドルフ達の前に、何かが立ちはだかった。


それは、ぷるぷるとしたすべすべの体をしたゼリーのような物体だった。

体の色は薄い水色をしていて、子供くらいの大きさをしたそれは

意思があるのかないのか、くねくねと体をくねらせながら立っていた。


『なんだこれ?』

「・・・敵ね。」

『敵!?』


リーティエンドが目の前の物体を敵だと告げると、ローランが一歩前に出て剣を構えた。

一瞬で空気が変わり、これから戦闘が始まることが肌で感じ取れた。


『北は安全なんじゃなかったの!?』

「比較的安全と言っただけよ。絶対に安全とは言ってないわ。」


焦るように「ワンワン」と鳴きながらそう言ったルドルフに、

目の前の敵を観察しながらリーティエンドは答えた。


『・・・あれが魔族なのか?』


ローランと対峙しているゼリー状の物体を見つめながら尋ねれば

リーティエンドは少し考えた後「違うわ。」と言った。


「魔族が作り出した生命体・・・かしら?生物じゃないわね。」

「・・・なん、だ、か・・・おいし、そう・・・」

「食べれないわよ?」


おいしそうと口にしたマリアナにリーティエンドが冷静に突っ込みを入れる。

甘いものが好きなマリアナには、この物体が本物のゼリーに見えているのかもしれない。


「おりゃああああ!!」


雄叫びのような声を上げながら、ローランがゼリー状の物体に切りかかった。

勢いよく振り下ろされた剣がゼリー状の敵を綺麗に縦に真っ二つにする。

ぐにゃりと倒れたそれを見て、ローランが「どうだ!」という顔をしてこちらを向いた。


「見たか俺の力を!」

『すげー・・・』

「ん、つよ・・・い、の・・・」


ふんぞり返るローランに、ルドルフとマリアナは拍手を送り

その光景に呆れながらため息をつきながらリーティエンドが口を開いた。


「それ、まだ生きてるわよ。」

「なに?」


リーティエンドの言葉にローランが振り返ると、真っ二つになったゼリー状の物体が

くねくねとそれぞれ動き出し、目の前の物体は二匹になった。


「なんだと・・・なら、これならどうだ!」

「無駄よ、やめなさ・・・」


リーティエンドが言い終わる前にローランは再びゼリー状の物体に切りかかった。

今度は二匹同時に横に薙ぎ払い真っ二つにした。

しかし、真っ二つにされた二匹の物体は再び動き出し、さらに切り落とされた部分も

動き出して、ゼリー状の物体は四匹となった。


「くそっ!どうなってんだ!?」


増えていくゼリー状の物体に戸惑いながら、ひたすら切り刻んでいくローラン。

しかし、ゼリー状の物体は倒れるどころかどんどん数を増やしていく。


「人の話を聞きなさい馬鹿。それに物理攻撃は効かないわよ。」


怒りを含んだ声でリーティエンドはそう言ったが、ローランには聞こえないのか

手のひらサイズぐらいまで小さくなったゼリー状の物体相手に剣を振り回している。


『あいつは倒せないのか?』


不安そうにルドルフは「くーん」と鳴き、リーティエンドを見上げた。


「倒せるわよ。ただ、物理攻撃では無理でしょうね。」

『どういう意味だ?』

「剣で切ったら分裂するみたいだし。あの体じゃ打撃攻撃は効果ないでしょうから・・・

 倒すなら魔法で跡形もなく焼き尽くすしかないわね。」


ゼリー状の物体を倒す方法を話し合ってる間に、剣を振り回していたローランの動きが

鈍くなっていた。細かく刻まれても動く物体ががローランの体にまとわりついている。


「あら、あれはまずいわね。」

『まずいって?』


ローランの体にまとわりついたゼリー状の物体がどんどん繋がっていき

ひとつの物体に戻っていった。その体の中にローランを取り込んで。


『わー!ローラーン!!』


ローランの哀れな姿に「ぎゃんぎゃん」と吠えて慌てふためくルドルフ。


「・・・丁度いいわ。まとめて焼き尽くしましょう。」


嬉しそうに口角を上げると、リーティエンドは自分のカバンの中から

分厚い一冊の本を取り出して広げた。

目を閉じブツブツと何かを唱えると本のページがパラパラとめくれていく。

それが魔法の発動だと直感したルドルフは成り行きを見守った。


リーティエンドが目を見開き叫ぶ


「中身ごと焼き尽くしなさい!」

『中身!?』


リーティエンドの手がゼリー状の物体に向けられると、

その物体の足元に魔法陣が浮かびあがり中から大きな火柱が勢いよく現れた。


『ぎゃー!ローラーン!!』


近づけないほどの業火が、ゼリー状の物体とその中に取り込まれたローランを襲う。

ルドルフは「ぎゃんぎゃん」鳴きながらローランの名を叫んだ。


しばらくして火柱がゆっくり鎮火していくと、黒く焼け焦げたローランの姿が現れた。

ゼリー状の物体はさっきの業火で焼き尽くされたのか跡形もなかった。


『ローラン!しっかりしろー傷は浅くないがしっかりしろー!』


ルドルフは真っ黒になったローランを見てパニックになったのか「ぎゃんぎゃん」と

吠えながら訳の分からないことを叫びだす。


「大げさね、蘇生魔法があるんだから問題ないわよ。」

「だ、いじょ・・・ぶ、です・・・わた、し・・・かいふく・・・しま、す・・・から」


混乱しているルドルフを落ち着かせ、ローランを回復しようとマリアナが近づくと

黒く焼け焦げたローランが突然目を開け動き出した。

突然のことにルドルフは驚き「ぎゃー!」と叫び声を上げた。

マリアナもさすがに驚いたのか「ひっ!」と小さな悲鳴を上げていた。


ローランはそんな二人を気にする様子もなく、頭をボリボリかきながら口を開いた。


「あー、ひどい目にあったぜ・・・。まさか取り込まれるなんてな・・・」

「・・・い、きて・・・た・・・」

「あら、まだ生きてたの。」

『お前は化け物か』


業火に焼かれ黒く焼け焦げたローランだったが、何事もなかったかのように

動き出したローランに一同は呆れるしかなかった。

ルドルフの耳にはリーティエンドから小さな舌打ちが聞こえたきがしたが、

聞こえなかったことにした。気のせいだろうと。


初めて戦闘というものを体験したルドルフは、

これから先、こんな風に敵に襲われ戦うことが増えるのだろうと感じ取り

不安と恐怖を抱きながら街に向かうのだった。


『・・・ご主人・・・オイラ、帰りたいよ・・・』




戦闘シーンの表現が難しい・・・わかりにくかったらすみません。


リーティエンドの「いつか焼き尽くしてやる」発言のフラグ回収w

ローランの頑丈さが化け物w(闘技場で強さを求めた結果ということで・・・)


犬って、寒いところにいたら冬毛になるのかなー?

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