表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/39

王様はうっかりさん

今回、勇者たちはお休みです。

ルドルフが勇者としてフィーリシア大陸に現れ、

魔王を倒すために三人の仲間と共に旅立って早一週間が経とうとしていた。


東のバレッサ王国では、国王であるソルマンと神官のハーユが

バレッサ城の謁見の間でルドルフ達の帰りを待っていた。

玉座に座るソルマンが扉を見つめながら口を開いた。


「ハーユよ、勇者達はまだ戻らないのだろうか?」

「旅立ってまだ一週間しか経っていませんから、まだでしょうね。」


ソルマンの言葉にハーユは淡々と答える。

このやり取りはルドルフ達が旅立った日から始まり、本日で7回目であった。


「何故だ?勇者ならパパっと魔王を倒して世界を救えるものではないのか?」

「勇者達は徒歩です。そんなすぐに魔王のもとへは行けませんし倒せません。」

「勇者なら空を飛んだり、一瞬で移動できたりするものでは?」

「その様な魔法があれば可能でしょうね。」

「では明日には帰ってくるか?」

「・・・神殿に帰ってもよろしいですか?」


不毛すぎる会話にハーユは大きなため息をついてそう言った。

最初のうちは呆れる程度であったが、さすがに毎日となると嫌気もさしてくるもので

今すぐ静かな神殿に帰りたいとハーユは思うのであった。


「帰るな!お前が帰ったら誰が私の話し相手をしてくれるというのだ!」

「知りませんよそんなこと!王様なんですから、他に人を呼べばいいでしょう?」

「みな私と話すのは恐れ多いと、誰も話し相手になってくれんのだ!」

「えぇ!?」


ソルマンの言葉にハーユは驚く。

国王に話しかけられることは身分によっては恐れ多いと感じる者もいるだろう

しかし、王の話し相手に選ばれるという事はそれはとても名誉なことでもある。

そんな名誉を誰もが避けるというのは、いささかおかしな話であった。


ちらりと近くに立っている兵士に目をやる。

目が合った兵士はすぐに顔ごと目をそらしたが、その表情はどこかくたびれていた。


この瞬間、ハーユは悟った。

誰も、こんな不毛な会話を繰り広げる王様の話し相手になりたくないんだと・・・


臣下ならまだしも、神官は臣下より位が高く王の補佐である立場上、

ハーユは「恐れ多い」という言い訳を使うことができず

王様の話し相手を辞退することができなかった。

ため息をつくハーユの耳に、再び勇者の帰りを尋ねるソルマンの声が聞こえた。


「・・・勇者が現れたからって、そんなすぐに平和にはなりませんよ・・・」

「何を言う!勇者だぞ?魔王を倒すのなど朝飯前であろう!」

「ですから・・・魔王の居場所もまだわかっていませんので倒す以前の問題なのです。」

「勇者ならきっと、魔王の居場所がわかるはずだ。」


貴方の中の勇者像は一体どうなってるんですか?とハーユは思いながら

この不毛な会話をどう終わらせようかと考えを巡らせた。


ソルマンの話にハーユが頭を抱えていると、一人の兵士が謁見の間に入ってきた。


「王様、王様宛てに書状が届きました。」

「ん?なんの書状だ、読んでみよ。」

「はい。」


兵士が書状を広げ目を通すと、兵士の動きがピタリと止まった。

ソルマンとハーユが不思議そうに兵士が書状を読み上げるのを待っていると

兵士は困ったような表情を浮かべながら、ゆっくりと読み上げた。


それは、ニルマートの街の武器屋からの請求書だった。


「なんだそれは?私はそんな買い物はしていないぞ!」

「えっと・・・それが・・・勇者とその一行が買ったもののようで・・・」


書状・・・請求書には、しっかりと勇者達が買っていったものだと書かれていた。


「どういうことだ?」


請求書が自分の元に届く理由がわからず、首を傾げるソルマン。

そんな彼のもとに、他にも書状を持った兵士達がやってくる。


「ニルマートの街の宿屋から書状がが来ています。」

「エンリフの村の食品店から請求書と書かれている書状が・・・」

「レーヴゥの街から・・・」

「セシャルペトの街から・・・」


兵士達が持ってきた書状は全て、勇者たちが買い物をしたその請求書であった。

その請求金額の合計は、王様が青ざめるほどだった。


「これは一体どういうことだ!?何故、勇者達の請求が私に来るのだ?」


訳も分からず高額請求がきたことに、怒りをあらわにするソルマン。

そんなソルマンを眺めながら、ハーユはふと、あることに気が付き口を開いた。


「そういえば王様、貴方、勇者たちに旅の資金を渡しましたか?」


ハーユは一週間前の勇者降臨の日の事を思い出していた。

あの日、武器を渡し、仲間を紹介し、旅立ちを見送ったが、

旅の資金として、お金を渡していた所は見ていないし記憶になかった。


「何を言う!私はちゃんと旅の資金は用意したぞ!」


そう言ってソルマンはビシッ!と壁際に置かれている宝箱を指差した。


「あの宝箱の中に!」


ハーユと請求書を持ってきた数人の兵士たちは、ソルマンが指差した宝箱を見た。

大黒鳥に狙われないようにか、黒を基調したシンプルなデザインの宝箱

ソルマンはその中にお金を用意しておいたようだ。


「・・・では、なぜその宝箱がここにあるのですか?」

「あ・・・」


動きが止まったソルマンに、

まさか・・・と思い、ハーユは一人の兵士に宝箱を開けさせた。


宝箱を開けるとそこには、旅の資金として十分と言えるほどのお金が詰められていた。


「やっぱり・・・渡してなかったんですね・・・」


呆れるようなため息をつきながらハーユは頭を抱えた。


「し、しかし、だからと言ってなぜ私の元に請求書が!?」

「貴方、言ったじゃないですか、<協力は惜しまない>って、だからでしょうね。」


一週間前のことを思い出していたハーユは、あの日、ソルマンが口にした言葉も

しっかり思い出していて、呆れながら「自業自得です」と言った。


ソルマンは宝箱に入ったお金を見つめながら、汗をダラダラ垂らしながらどうすべきか

どうしたらいいのか考えを巡らせた。

そして、閃いたのか、マントを翻しその場にいる兵士全員に告げた。


「今すぐこの宝箱・・・資金を、勇者たちに届けるのだ!一刻も早く!」

「はっ!」


兵士達が返事を返し、宝箱を運び始める。しかし、十分な資金の入った宝箱は重く

とても運べるものではなかったため、数人の兵士でお金を分担して運ぶことに。


「さぁ行くのだ!勇者達の元へ!!」


勇者に届けるお金を持った兵士たちがその一声で次々旅立っていった。

問題が解決したと思ったソルマンは晴れ晴れとした顔をして玉座に座った。

そんな顔をしてるソルマンに言いにくそうにハーユは口を開く。


「彼らは勇者たちの居場所を知らないですよね?無事、届けられるんでしょうか?」

「あ・・・」


ハーユの言葉にソルマンは考え込んだが、すぐに顔を上げた。


「問題ない。勇者なら必ず彼らと出会えるはずだ!」


だから貴方の勇者像はどうなってるんですか?と尋ねたいのをぐっと堪え、

ハーユは本日何回目になるか分からないため息をついた。


「王様!ギルウの街から請求書が・・・」

「ひぃっ!」


再びやってきた請求書にソルマンは悲鳴を上げた。

兵士たちが旅立ったのはたった今、その瞬間に請求が止まるなんてことはない。

彼らが勇者たちに出会いお金を渡すまで請求書は届き続けるのだ。


「早く・・・早く届けるのだ!早くぅ~~~~!!」


ソルマンの悲痛な叫びが謁見の間に空しく響いたのであった。



こんな王様でこの国は大丈夫なんだろうか・・・?


街の名前はテキトーに言葉並べただけなので特に意味はないですよ。

一週間なら、結構街とか行ってるかな?ってw


さてさて、彼らは無事、勇者たちに会える日がくるんでしょうかー?


*おまけ*


リーティエンド「・・・もう贅沢はできないかもしれないわ。」

ルドルフ『どうした急に?』

リーティエンド「なんとなく・・・ね。」


***


リーティエンドの予知。本編には入れなかったのでここでw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ