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どどどど童貞ちゃうわ

 俺すげぇ……。

 すごすぎて怖いよ俺。

 まさか一発で宝具庫を掘り当てちまうなんて……。


 そんな畏怖の念を自分に抱きながら、俺と勇者は物音一つしない宝具庫を歩いていた。

 宝具はズラッと棚の上に並べられていて、大きな物は壁に立てかけられたりしてあった。

 これが宝具? って思うものもたくさんある。


「これは凄い……。

 世界中の宝具はここに集められていたんだ……」


「大量にあるけどどんな宝具とか分かんの?」


「エクスカリバーとの共有のおかげで大体はね」


 共有?

 知識を共有できたりするのかな。


「ふーん。

 てかこれ全部はパクれないよな。

 厳選しようぜ」


 この部屋は結構広い。

 地下なのに天井は10m近くあるし、どこが入り口かもわからない。

 少なくとも扉なんてものは探してもなかった。

 密室だったのだろうか。それとも人間が入れる仕組みになっていないとか。

 位置的には魔王城の真下にあるはずなんだが……。


 そんなことを考えている時、いきなり後ろから声が掛かった。

 

【バルト……!】


 びっくりした俺は思わず尻餅をついた。

 そのままビビりながらも体を入れ替えて振り向く。


 するとそこの壁には一本の剣が立てかけられてあった。


「エクスカリバー!」


 勇者の声。


 あ、こんな所で巡り合わさっちゃう感じっすか。


 勇者は剣の元まで走っていくと、それを手にとった。

 そしてすぐさま腰に添え付けた。


【魔王は私を封じたつもりだったらしいが、私達の因果力が(まさ)ったようだな】


「そうだね。流石エクスカリバーだ」


 いやいや……、売られて再会したあとの会話とは思えねーよ。

 そんなカッコイイやり取りされても困りますぜ……。


 しかしどこで売ったらこんな所まで流れ着くんすかね。

 まあ聖剣が魔王に回収されるのは必然ではあるけどさ。

 これがエクスカリバーの因果ってやつなんだろうか。



【レイヤじゃないか】


 エクスカリバーは俺に気づいたのか、声をかけてきた。

 これはエクスカリバーにも記憶喪失の事情を説明しないといけない感じかな。

 そう思って口を開きかける。


【……ティルフィング。やはり逝ったか】


 ティルフィング。俺のこの剣の名前だ。

 その名を読んだエクスカリバーの声はどこか寂しげだった。

 それより、エクスカリバーはなぜ分かったのだろうか。

 そんな疑問を返す前にエクスカリバーは続けた。


【ああ、お前が生きているところを見ると、あいつはまた色々とカッコつけたみたいだな。死ぬ間際に……。

 私でもそんな余裕がある自信がない……】


 ……?

 どういうことだ?


「もしかして俺に何があったか知ってんの?」


【それは分からない。だが、記憶喪失なんだろう?】


「ああ、なんでわかるのさ」


【分かるさ。あいつがやりそうなことくらい】


「……」 


【共有された多大な知識が消えると、契約者に絶大なダメージを与える。普通なら死ぬか廃人化するかだ。

 大方ティルフィングは、記憶を先に封印することによって、知識喪失のタイミングを殺したんだろう】


 なるほど。

 意味はわかる。


「それって俺の記憶は封印されているだけで取り戻せるってこと?」


【いや、封印を解くことはお前の死と直結している】


「……そうか」


 じゃあ記憶は取り戻せないのか。



 俺は心が痛かった。

 命を張って俺を守った相棒のことを、俺は忘れている。

 そんなのってダメだろ。


「レイヤ、仕方ないよ」


「そうは思えないぜ……」


 しかし考えても仕方ないのは事実だ。

 とりあえず今はこの宝具庫を掘り返す作業をしないと。


【しかしよくここに入ってこれたな。掘って入ってくるなんて発想はなかった。

 位置を把握していたのか?】


「たまたま掘り当てたんだよね、レイヤ?」


「うん、偶然だな」


 そこはもっと褒めてくれていいよ。


 とりあえずエクスカリバーを回収できたのはラッキーだ。

 俺も護身用の宝具とか欲しいけど何がどれとか分かんないからなぁ。


 と、思っていると俺は凄いものを見つけてしまった。


「おいバルト見ろよこれ!」


「うわ! なんだそれ!」


 体を見下ろすと、そこには何もない。

 いや、あるのだが見えないのだ。


 そう、俺が見つけてしまったのは透明マントってやつだ。


【それは……月影纏(ゲツイテン)じゃないか】


「あ、そんな名前なの」


 それにしてもこれはすごいチートアイテムを見つけちゃった感じかな?

 今日からアサシン目指そう。


「レイヤ、僕にもやらせてくれ!」


「ほら」


 勇者が目を輝かせていたので、俺はその透明マントを勇者の方に放り投げた。

 俺の体から離れると透明マントは姿を表す。


 勇者はそれをキャッチすると、すぐ様身につけた。

 が、勇者の姿は消えず、ただマントを纏っているようにしか見えない。


「あれ?」


【ああ、月影纏は童貞にしか使えない上に、使用者の魔力量が多すぎると使えない。

 バルトは両方当てはまらないな】


 くたばれや。



ーーー



 さて、宝具での完全武装が完了した。大体はエクスカリバーのチョイスだ。


 いやはや、もう負ける気がしないね。

 魔王でもなんでもかかってこいよって感じっすわ。


 しかし宝具ってのは直接攻撃力になるものは少ないらしく、それも多大な魔力を食うので、実質俺は防御力がアップしただけだった。


 言うならば、小細工で固めたウザキャラになってしまった。

 まあその宝具を俺が上手く使いこなせるかは分からないが。


 勇者の方も、これまたエクスカリバーのチョイスで宝具武装していた。

 後は持って帰れそうなだけ宝具を袋に詰めて、それを背負っている。


「さて、一旦魔界を出ようか」


 勇者が言った。

 しかしこれに俺は反対する。


「いやダメだ」


「なぜ?」


「魔王城を探検したいとは思わないのかね?」


 宝具武装のおかげですっかり自信が付いてしまった俺だ。

 それに、エクスカリバーのチェンジとやらで、危なくなればいつでも離脱できる。

 なんていうか、行ける気がする。


【……私は反対だ】


「ふむ、それもありだね」


「2:1で魔王城探検に決定っすエクスカリバーさん!」


【……好きにすればいい】



 そうと決まればここから出ないと。


「レイヤ、あそこから出られそうだ」


 勇者が指差した先は、天井。

 よく見ると、そこには2m四方くらいの穴があった。

 なるほど、魔王や魔族はあそこから出入りしてるわけか。


「行こう」


「りょ」


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