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バイバイサンキュー

「ほんと助かったぜルルパパ」


「かまわんかまわん!!」


 現在、俺はルルパパの頭の上に乗って海を進行中である。竜の里まで送ってくれるらしい。

 セラは無言で俺にしがみついている。


【ブルーダイン! 今の魔王は強いのかァ!?】


 ティルフィングが唐突にそんな質問をした。が、それは俺も気になっていた。

 俺はルルパパの顔を頭の上から覗き込む。


「そうだな! 強いぞ! 戦ったことはないがな!」


「ルルパパより強いん?」


「分からん!」


 分からん、か。

 勝てると断言しない辺り本当に強いみたいだな。

 対面した時に強いのは分かったけど、正直ルルパパより強そうには見えなかった。

 あいつも変身とかできるのだろうか。だとしたら萎えるな。


 つーか着実に強くなってる俺だけどルルパパより強くなれる自信なんてねーよ。何年かかるんだよ。

 もうルルパパが魔王倒してくんねーかな。なんか海の上なら最強っぽいし。


 半ば自暴自棄になりながらも、俺は言った。


「ティルフィング、俺はいつごろルルパパを超えられそう?」


【知るかよ! とりあえずそろそろ身体強化の質を上げた方がいいかもなァ! 体も出来上がってきたし】


 おお、次のステップか。

 しかしあんまりやる気起きねーな。なんでだろう。

 こうも上を見せつけられるとあんまりやっていける気がしないっていうかなんていうか。


「……」


【心配すんな、お前は強くなってる】


「分かってるよ。分かってる」


 どうやら俺はティルフィングに気を使われるような顔をしてしまっていたらしい。

 切り替えよう。 


「竜の里まではどれくらいで着く?」


「ガハハ! ワシの水中転移を使えば一瞬だ!」


「使えや! なんで泳いでるんだよ!」


 俺は思わずルルパパの頭を叩いた。もちろん、その後謝った。



ーーー



 竜の里がある島まで送って貰った俺は、ルルパパと別れて山を登っていた。

 ルルパパは俺を送り届けるとすぐに帰ってしまった。もしかして話がしたかったから泳いでたのだろうか。

 だとしたら少し申し訳ない。


 セラはもう自分で歩いている。

 流石に近所ならもう大丈夫らしい。当たり前か。


「よしセラ! 頂上まで競争だ!」


「うん……!」


 俺達は走り出した。

 セラは身体強化を使って一気に駆け上がる。

 俺はそれを追いかけるが、何もなしだと追いつけないので身体強化を使わせてもらった。


「ハハハ!! おにいちゃんには勝てまい!!」


 セラのギリギリ前を走る。セラが頑張ってスピードを上げると俺もそれに合わせて走った。

 セラの必死な顔は可愛い。ペロペロしたくなっちまうぜ。


 しばらく走ると、頂上に着いた。


 窪んだ小さめの入り口から竜の里へ帰ると、俺は真っ先にブリッジゲートの家に向かった。

 ブリッジゲートが家としてる洞穴に入っていくと、そこにブリッジゲートはいなかった。


「……帰ってきてないのか?」


【それはないだろ】


 あれから大体二日くらいは経ったよな。いや、今いないだけかもしれない。

 俺とセラを探し回ってるという可能性もある。


 俺はセラの部屋の扉を開ける。

 するとそこにはシャーラとルルがいた。


「おおシャーラ、ルル!」


「レイヤ……! 無事だったんですね……!」


「良かったぁ……。心配したよ……」


 セラはシャーラとルルを見ると俺から離れて二人の元に駆け寄った。そして二人に交互に抱きつく。

 シャーラとルルもセラをしゃがんで受け止める。

 なんか微笑ましい。



「ブリッジゲートは?」


「それが……」



 シャーラはこの二日間のことを俺に話した。

 俺は黙ってそれを聞いていた。シャーラが話し終えて、やっと口を開く。


「なるほど」


 シャーラによるとブリッジゲートは今、仲間と集まって会議をしているらしい。ブリッジゲートは俺とセラを助けに行ことしたそうだが、引き止められたみたいだ。

 そしてその会議もかれこれ半日は続いているらしい。

 肝心の何について話しているかは分からないようだ。


「魔王はここに来なかったか?」


「はい、来てません」


 ということは魔王はブリッジゲートを捉えてなかったのか。

 いや、そんなことはないはずだ。

 なぜ来てないんだろうか。


 ……いや、魔王と言えど一人で竜の里には乗り込めないか。

 里のみんなを相手にすればさすがの魔王でもやられるだろうからな。

 とすれば魔王はどう出てくるのだろうか。


「レイヤはどうやって帰ってきたの?」


「ああ、俺は大変だったんだぜ。なぁセラ?」


「……うん。……大変だった」


 俺はセラの頭を撫でてやる。


「あれ? 仲良くなってる?」


「……セラに何したんですか?」


「だから大変だったんだよ。こう見えて俺、魔界帰りだぜ? 魔王城なんかにも連れて行かれてさ。そりゃあ絆も芽生えるわ」



 その後、今度は俺がこの二日間のことを話した。



「本当に大変だったんですね……」


「可哀想に」


「……うん」


 シャーラ達はセラに同情していた。

 抱きしめてよしよししている。

 確かに、一番辛かったのはセラかも知れない。

 セラはよしよしされてちょっと涙目になっていた。必死に泣いてしまうのを堪えてる。



 ブリッジゲートが洞穴に帰ってきたのもちょうどその時だった。

 部屋の外で翼をはためかせる音が聞こえたので、俺は部屋を飛び出た。


『おお! レイヤ! 無事だったか!』


「ああ、セラも無事だ」


『そうか! 良かった。すまない、恩に切る……』



ーーー



「で、ブリッジゲートはなんの会議だったわけよ?」


『……レイヤには申し訳ないことになってしまった』


「……つまり?」


『お前達を、里から追い出すことになった』


 沈黙。

 すぐにティルフィングはそれを破った。


【まあ、そうだろうなァ!】


「……仕方ないな」


 そうか。

 ブリッジゲートのその一言で大体の事情を把握した俺は言った。


「世話になったな」


『いや、すまない……』


「いいよ。俺達のせいで魔王とやり合うってなるのも困るし。

 シャーラ、ルル、支度してくれ」


「……はい」

「分かった……」


『すまん……、すまない……』


「気にしてないって」


 俺は笑ってそう言った。


 しかし次はどこで身を隠そうかな。もう一回海底神殿ってのもアリかもしれない。


 俺が腕を組んで考えていると、ふと服の裾が引っ張られた。

 振り返ると、そこにはセラ。


「……いっちゃうの?」


「ああ、魔王倒したらまたくるわ」


 いつになるか分かんねーけど。


「……やだ」


『セラ……』


【どうすんだよお兄ちゃんよォ!】


 やだ、って言われてもねぇ。


「……セラも行く」


「ダメだ」


 本気で言った。

 セラはその一言だけで俺から離れた。


「………………分かった」


 なんて物分りの良い娘なんだ……。

 めちゃくちゃ心が痛むけど仕方ない。

 シャーラルルに加えてセラを守りきる自信は俺にはないんだ。


「ごめんな、セラ」




 その日の内に、俺達は里のみんなに挨拶をしてから竜の里を出た。

第七章――終

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― 新着の感想 ―
[一言] セラが魔王に捕まって主人公が助けに行く流れが見える見える(予想が外れてたら恥ずかしいやつ)
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