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水の気持ち

 私の名前はルル。

 大好きな人の名前はレイヤ。

 なんで好きになっちゃったかは分からない。

 だけど、大好きだった。

 そして同時に私は恋を半分諦めていた。


 その理由は、レイヤがシャーラを好きになってたから。

 レイヤは多分、自覚している。

 最初は私にもチャンスがあると思って頑張った。

 だけど、レイヤはシャーラのことばっかりだった。

 さらにそのシャーラもレイヤのことが好きなんだからどうしようもない。

 両思いだ。


 私は無理だな、って思った。

 どうやっても勝てない。

 苦しい。


 シャーラのことは最初嫌いだったけど、一緒にいるといつのまにか仲良くなってた。

 シャーラと話してるとレイヤの話題が尽きない。

 楽しいけど、寂しかった。

 私はこの二人にとって邪魔な存在なのかもしれない、そう思うと。


 レイヤは私にも気を遣ってくれる。

 多分告白が効いてるんだ。

 でもそれだけ。

 きっと二人は私のことをそんな風に思ってない。だけどそう考えてしまう時があるのだ。

 私、こっそり泣いてます。



 今、辺りは暗い。

 ブリッジゲートは今日はこの島で夜を明かすことに決めた。

 ここは無人島で、魔物も少ししかいない。

 そんな中、私達はブリッジゲートの翼の下という安全な場所で眠る。

 レイヤがベッドを出してくれたし、ブリッジゲートの吐息のお陰で寒くない。


 レイヤはこんな暗いというのにどこかに行ってしまった。

 なぜかセラもそれについていった。

 レイヤのことが嫌いらしいのに、なんでついて行ったのかは分からない。

 でもなんとなく放っておいた方がよさそうだ。


 シャーラは隣にいる。

 一緒のベッドだ。私とシャーラが一緒のベッドで寝ていると、レイヤが潜り込んでくる確率が大幅に上がる。


 それはともかく、ブリッジゲートの吐息のおかげで寒くないとはいえ、シャーラと一緒に寝た方が暖かい。

 だから私が一緒に寝ようと誘ったのだ。

 ベッドは2つ余ってる。


「どこに行ったんでしょうね、セラに変なことしてないといいんですが……」


「あはは、それは心配だね」


 昨日の件もあるし、本当にちょっと心配だった。


 私はシャーラに抱き着く。

 一緒に寝る時はシャーラは抱きまくらだ。

 シャーラと眠ると気持ちいい。

 それにシャーラはすごくいい匂いがするのだ。

 なでなでするのも上手いし。


「ふふ、ルルは仕方ないですね……」


 あ、私子ども扱いされてる。

 でもシャーラが私の頭を撫でて来た。

 ダメだ、気持ちいい。

 ウトウトしてきた。


 トローンとしていると、急に爆発音が聞こえた。

 私はびっくりして飛び起きた。

 ブリッジゲートも伏せていた身を起こして爆発音のした方を見る。


 すると【ギャハハ!!】とティルフィングの笑い声が遠くから聞こえた。

 私はまた体を倒した。

 多分レイヤが何かしたんだ。よくあること。


「はぁ、何してるんでしょうね」


「遊んでるんだと思う」


 せっかく気持ちよく寝られそうだったのに、目が覚めてしまった。

 しかしシャーラのなでなでが再開されると、私はすぐに眠りに落ちてしまった。



ーーー



 寝苦しさを感じて目を覚ました。

 辺りはまだ暗い。

 レイヤが私とシャーラの間で寝ていた。セラもいた。

 ベッドがすごく狭い。だけどそれは今の私にとってあんまり問題ではなかった。


 そう、問題なのは寝ているレイヤが私を抱きしめていたことだった。


「〜〜っ!」


 それに気づいた私は悶絶した。

 頭がすぐにクリアになる。


 恋を半分諦めてから、私はレイヤへのアタックを可能な限り自重することにしていた。

 たまにするアピールはダメ元で、控えめ。

 本当にスキンシップのような感じのモノ。

 もちろん適当にあしらわれる。

 レイヤにはたまにエッチなことをされるけど、それはなんというか……少し違っていた。



 それなのにレイヤはたまにこういうこともしてくる。

 ベッドに潜り込んで来たのは下心で、寝相のままに私を抱きしめた、そうなのだろう。

 寝相に悪気も何もない。

 だけど本当にこういうことはやめて欲しい。クラクラ来る。

 もっと大好きになってしまう。


 前だってそうだった。

 勇者とレイヤが戦った時。

 ダメだ。思い出しただけでもう……。


 私は顔がどんどん熱くなっていくのを感じた。

 私は誘惑に負けてレイヤの胸に顔を押し付ける。

 レイヤの匂いは結構好きだ。というかかなり好きだ。

 私はレイヤの背に手を回して少しだけ抱きしめてみた。すると寝相だろう、レイヤの私を抱きしめる力が少しだけ強くなった。


 私はまたも悶絶する。

 めまいがしたくらいだ。全身が熱かった。幸せすぎて、理性が飛びそうだった。

 私の背は少し汗ばんでる。心臓が鳴り止まなかった。


 レイヤの顔が近い。

 キスくらいしてもバレないだろうか。

 いやいやダメだ。

 そんなのダメ。

 寝よう、寝よう。


 その後、レイヤは私を開放してくれたけど私はしばらく眠れなかった。



ーーー



「ルル、シャーラ、起きろ」


 その一言で私の朝は始まった。

 目を覚ますとそこにはレイヤがいた。


「起きたかルル」


「んん、おはよう……」


 眠い。レイヤのせいだ。


 上にブリッジゲートの翼の屋根はなく、太陽の日差しが眩しかった。

 しばらく呆然としてたけど、私は体を起こす。

 シャーラはまだ寝てる。

 セラはすでに起きていて、ブリッジゲートの頭に乗っていた。

 そうだ、世界一周するんだった。


 私はそこで完全に目覚めた。


「もう出発するの?」


「ああ、このペースだと3日で世界一周はキツいっぽい」


【旅行中に修行が始まっちまうなァ!】


「すでに修行みたいなもんだろ」


 レイヤとティルフィングの声で、シャーラがうめき声をあげた。

 顔を覗き込むと、シャーラは少しだけ目を開けていた。

 しかしその瞼はまたゆっくりと落ちていく。


【起きろォッッ!!】


「ふぃっ!」


 ティルフィングが急に声を上げたので、変な声が出てしまった。

 ティルフィングの声は苦手だ。


 しかしシャーラは起きない。


「なんで今ので起きないんだよ……。こいつめ……!」


 レイヤは呆れながら布団をひっペがした。

 どうせそれでも起きないだろう。

 仕方無い、私がシャーラを起こしてあげよう。


「私にまかせて」


 私はそう言ってシャーラにまたがる。

 そして、脇を思いっきりくすぐった。


「ふっ!? ふふ、あははは! くふっ! ルル……!?」


「起きる?」


 しばらくくすぐったあと、私は一度手を止めて一言そう聞いた。

 シャーラはくすぐればすぐに起きるのだ。


「はぁ……、はぁ……、お、起きます……、起きますから」


 息も絶え絶えのシャーラ。

 振り向くと、レイヤはちょっといやらしい目で私達のことを見ていた。

 レイヤと目があったけど、私は逸らした。

 昨日のことがあって、目が合わせられない。


「どうしたよ?」


「な、なんでもない……!」


 最近、レイヤへの大好きを抑えられないルルでした。



 その後シャーラと軽く髪を整え合って、私達は再びブリッジゲートの背に乗った。

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[良い点] ルル視点ありがたいです!
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