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グングちゃんと俺の心臓

 さて、世界中を旅するとか意気込んだのはいいが、とりあえずこの状況を打破しないと話にならない。

 いや、その気になれば簡単に逃げ出すことはできるはずだ。


 だけど俺はしばらくここに留まってみたかったりする。騎士長の危険を考慮してもだ。


 理由? そんなの勇者の召喚をみてみたいからに決まってるじゃん。


 それに発言こそ元気いっぱいだがシャーラは弱っている。しばらく休ませてやりたいのも本音だ。

 なんだかんだ言いつつもシャーラの身を案じる俺カッコいい……!


 だけど金もないしどうしたことか。せめて知り合いとか居たらいいんだが、生憎ここは異世界。そんなものはいません。


「レイヤってモテなさそうな顔してますね。普通すぎるっていうか、これならブサイクのほうがまだマシ、って感じです」


「ちょ、なんで急にそんなこと言うの?」


 本当に唐突である。いきなり心をエグッてきやがった。お前のために色々考えてたっていうのに。


「そういえばレイヤが何者かってのは教えてくれないんですか?」


 俺の顔が引きつっているのを見てシャーラは話題を変えた。


「そんな大したもんじゃねーよ。聞いてて面白い話でもねぇ……」


 そう言って俺は遠い目をする。


 そして「俺過去に色々ありました、あんまり触れて欲しくないけど聞かれたら教えてあげるよ臭」を漂わせる。葉巻があれば最高だったのだが。


「あ、じゃあいいです」


 聞けや。


「……」


 一連の仕草が全て無駄になった俺は、異世界の夜の街を眺めた。


 光がそこら中あちらこちらを移動している。多分俺を探している連中の灯りだろう。

 街の街灯は元の世界に比べて断然弱いので結構暗い。視力が上がっているので難はないが。


「つかお前はここに知りあいとかいないの?」


「いませんよ、勝手に連れてこられたんですから」


 そうなのか、なんか申し訳ないことを聞いてしまったな。だけど困ったな。どうしよう。


 本当に打開策が何も思いつかないので、困り果てていたその時。


「いたぞォ!! あそこだァァァァ!!」


 やっべ、見つかった。


 俺はすぐに立ち上がり、シャーラを担ぐ。


「な、なにするんですか! 下ろしてください!」


「逃げるんだよ我慢しろ」


 それでもジタバタするシャーラ。このお姫様には状況判断というものができないのだろうか。

 暴れるシャーラを無理やり抑えて俺は民家の屋根から屋根を飛び移る。


「へ、変なところ触らないでくださいね」


「分かった分かった」


 屋根から足を踏み外さないように気をつける。結構なスピードで逃げているのでシャーラは怖がってキャーキャーうるさかった。


 しばらく逃げて、そろそろ撒いたか? そう思った時だった。


 前方がキラリと光った。なにごとかと思って目を凝らしてみると、なにか槍のような物が豪速で飛んで来ているではないか。


 びっくりして俺は横に飛び退く。するとその槍は俺のすぐ横をバチバチと音を立てて通り過ぎていき、そしてどこかに衝突したのか、後ろでものすごい音が聞こえた。


「今の何ですか!? 何が起きたんです!?」


 シャーラが騒ぐ。だけど俺はまっすぐ目の前の敵を見据えた。


 そう、騎士長(怒)が現れたのだ。


 騎士長は未だにオーラを纏っていて、ほんのり周囲が明るい。


「先程はコケにしてくれたな」


「おこじゃん」


 騎士長の顔が歪むのがここからでも分かった。それだけおこだ。てか伝わったのかよ。


 俺がニヤニヤしながら騎士長を見ていると、俺の肩に担がれたシャーラがボソリと呟いた。


「あの人、私をあの箱に閉じ込めた人です……」


 騎士長と対峙してからシャーラが黙り込んだと思ったらそういうことか、怯えている。


 そして何気に騎士長を倒さないといけないフラグをぶっ立てたシャーラに脱帽だ。


 それはともかくこの騎士長どうしよう。とりあえず挑発でもしとくか。


 人差し指でクイクイと「こいよ」ジェスチャー。


 すると、ダンッ、と騎士長は地っていうか屋根を蹴って迫ってきた。

 しかし、俺は屋根から飛び降りて地上に着地。

 三十六計逃げるに如かず、俺は敵に背を向けた。


 勿論騎士長に逃がすつもりなどないだろう。騎士長も地上に降りる。


 が、俺は奴の丁度着地地点に落とし穴を創造した。深さは3メートル程だ。


 無論、そのまま落とし穴に落ちる騎士長。その瞬間の表情は真顔だった。


「ぶっ!」


 それを見てしまった俺はそのシュールさに思わず吹き出してしまう。


 ダメだ、笑いが止まらない。


 そのせいで走っていた俺は足がもつれて勢い良く転んでしまった。必然的にシャーラも投げ出される。


「痛い! なにしてるんですか!」


「ちょ、ごめ、笑いすぎて腹痛い」


 ヒューヒューなりながらもなんとか立ち上がって再びシャーラを担ぐ。


 丁度その時、騎士長(激おこ)も落とし穴から抜け出していた。


 リアル怒髪天を突く状態だ。


「今のは宝具の力か?」


 本人は冷静を装っているのだろうけど、声が少し震えて怒りを隠しきれていない。


「やだなぁ、子供の作った落とし穴に引っかかっただけじゃないですかー。それを宝具のせいにするなんて……プッ」


 騎士長は鬼の形相でダッシュ。俺も全力で逃げる。


 そして俺を追いかける騎士長の進行方向に再び落とし穴を創造した。


 ズドンという音を立ててそれに落ちる騎士長。

 追撃で俺は落とし穴の中に突きこんにゃくを大量創造してやった。


 突きこんにゃくは、マイナーだけどところてんみたいなやつだ。


 それはともかく俺はどこに逃げたらいいんだろう。騎士長とこんなじゃれ合いをいつまでも続けていたら、そのうち体力が無くなってやられてしまうだろう。



 すると、そんな俺に救いの手が差し出された。


「こっちだ!」


 路地の方から俺を呼ぶ男の声。何かと思ってそっちを見てみると、なんだか少し見たことある顔が俺を手招きして呼んでいた。はて、誰だったか。


 しばらく唸った後思い出す、あれは先程助けたお向かいの囚人さんだ。

 そもそも俺がまともにコンタクトをとったのは囚人達しかいない事実。よく考えると他に誰がいるというのか。


 今ここにいるって事は、脱獄することができたようだ。俺が騎士長を引き受けたおかげだろう。


 まあなんにせよ助かったぜ。


 そしてシャーラを担いだ俺は、騎士長が上がってこない内に暗がりの路地へと姿をくらませた。



ーーー



 さて、お向かいさんに助けられた俺は、街の地下にある酒場に来ていた。


 ここなら騎士長も知らない場所だし、隠れるにはうってつけらしい。


 ここには今、先程脱獄に成功した囚人達が集まっていて、中々カオスなことになっている。

 囚人と言っても俺が逃した奴のほとんどは実質犯罪を犯していないのに捕まった哀れな人達だ。

 まあ中にはガチな犯罪者も少なからずともいるとは思うが、この状況で面倒なことは起こさないだろう。


 そして、脱獄できたことが嬉しすぎて囚人達の騒ぎっぷりは半端ではなかった。ギャーギャーとあちらこちらで盛り上がっている。


 そんな中、俺は……





「そこで俺は騎士長の奴にこう言ってやったのさ。

ガキは早く帰って糞して寝てろ、ってね」



 その盛り上がりの中心にいた。



「おお!」「いよっ、男レイヤ!!」「ヒュー」「憧れるぜ!」


 俺の語りでドッと酒場が沸く。作り話とは言え、とても気分が良い。



 それに外ではまだ騎士長が俺を血眼になって探していることを考えると胸がキュンキュンする。


 少し高揚した気分で俺は飲めない酒を無理して煽った。

 酒なんて初めてだってのにブランデーなんて飲まされている。しかもストレートだ。


 俺はほとんど飲んでいないから酔っていないが、周りの奴らはもう完全に酔っていた。

 楽しそうで大変よろしいのだが、そんなに浮かれてていいのかとも思う。



 シャーラと言えば、酒場の別室でぐっすり寝ている。

 やはり疲れていたのかベッドに寝かせるとすぐに眠った。シャーラがどれくらいの間あの箱の中に閉じ込められていたのかは知らないが、さぞ苦しかっただろう。

 気が狂ってしまってもおかしくなかったはずだ。


 そう考えると、眠っているシャーラのおっぱいをまた揉んでやろうかとか考えていた気持ちも薄れた。



 そんな訳で、シャーラはしばらくここで休憩させておくことにしたのだ。

 精神的にも身体的にも何日か休養が必要なはずだ。ちゃんとした女の人もここにはいるのでシャーラの身に関しても多分安心できるだろう。



 その間に俺は勇者の召喚でも見に行こうかなーなんて考えている。


 だけど、いつどこで勇者の召喚が行われるのか分からない。俺の勘では少なくとも数日以内には行われるはずだ。



 俺の勘は絶対に当たるとして後は場所。さてどうしたことか。



 そこで忘れてもらっては困ります俺の創造能力。なかなか使い勝手がわかってきたこの能力だ。使わない手はない。



「おい、こいつ全然飲んでねーぞ!」

 


 俺がいつの間にか思考タイムに没入していると、それに気付いた誰かがそんないらぬことを口走った。


 そのせいで酔ったおっさんが群がってきた。


「あぁん? 口に合わねぇのかよ英雄!」「おぉい! 酒樽持ってこーい!」


 酔ったおっさんのテンションは単数でも面倒だというのにこの人数かよ……。


 とにかくやばいと思った俺は席を立とうとする。

 するといきなりドンッと俺の目の前に小さな酒樽が置かれた。

 いったいなんのつもりやねん、そう思って俺は酒樽を置いた奴を睨んだ。


 そしたらそいつはあろうことか「イッキ! イッキ!」とコールを始めだしたではないか。


 これには俺も驚く。同時に絶望した。



「おい、ちょ、よせ……」



 もちろん、イッキコールはそいつのせいで波紋のように広がっていき、またたくまに酒場全体を包む大合唱となった。



「「「イッキ! イッキ! イッキ!」」」



「ちょ、え? え? マジで?」


 明らかにイッキできる量じゃないし、なんだよこの大学生みたいなノリ。異世界にもイッキコールあるのかよ。

 こんなの絶対おかしいよ。


 だが、ここまで注目されてやらないなんて事は男として出来るわけがない。ええやりますとも。


「チッ、仕方ないなぁ」


 そう言いつつ俺は軽く体を伸ばして準備運動。

 そして小さいとは言えイッキできる量じゃない酒樽を持ち上げた。親切にもふたは開いている。



 そして俺は酒樽に口をつけてグッと傾けた。



 しかし二口目くらいですぐに気づく。


 あ、これアカンやつや。



 そこで俺の意識は途絶えた。



ーーー



 目覚めると、とてつもなく気分が悪かった。一気飲みして倒れて、そのまま今まで眠っていたようだ。


 立ち上がって伸びをすると、物凄い光景を目にした。全員が全員、酔いつぶれて寝ているのだ。


 全員酔いつぶれているということは、俺は結構寝てしまっていたのだろうか。


 とりあえずのどが渇いたので水が飲みたい。とりに行くのも面倒なので、俺は創造で作ろうとした。


 はい、こんにゃく。



「ファックッ!!」


 俺はそれをベチンと床へ叩きつける。



 寝起きで頭が回っていないからだろうか、とにかく創造が出来ないことにイライラした。


 だけど仕方ないからこんにゃくでも食うことにする。

 こんにゃくの大部分は水分で占めてるので、食べたらのども潤うだろうという考えだ。


 そう思ってむしゃむしゃやってると、後ろから声をかけられた。



「レイヤ、起きてたんですね」


「シャーラか、もう調子は大丈夫なのか?」


「良好ですね」


「それは良かった。でももう少し体休めとけよ」 


「いえ、もう大丈夫です」


 ふーん、と言って俺は食事もとい水分補給に戻る。


 シャーラは大丈夫とか言ってるけどありゃ嘘だな。早くこの街から出たいからそう言ってるんだろう。



 そんなことを考えていると、後ろからいきなり頭を叩かれた。軽くだったので別に痛くはなかったが、何のつもりだろう。


「なんだよ?」


 振り向く。

 するとシャーラはしばらく黙り込んだ後、聞いてきた。


「……レイヤはなんで私を助けたんですか?」


 なんだそんなつまらないことか、そう思って俺は食事に戻る。


 そして食べながら顔も向けずに答えた。



「ルートが俺に助けろと囁いていたからさ」


「意味がわかりません」



 だよね、意味わかんないよね。



「真面目に答えてください、蹴りますよ」


 蹴ってくれるのは結構だが、こいつのことだから金的とか迷わず狙ってくるのだろう。

 さすがにそれはマズイので真面目に答えることにした。



「そこにフラグが立ってたからかな」


 これは正真正銘真面目な回答である。しかし、またも意味がわからなかったのだろう、シャーラは眉を寄せた。


 だけど俺が真面目に答えていることを察したのか、呆れたような表情で質問を変えた。



「……じゃあなんで私を旅に誘ってくれたんですか?」


「顔が好みだから」


 即答してやったぜ。性格はあんまりタイプじゃないけど、こいつ顔は凄い可愛いし、一人旅だと多分寂しいしな。


 それにこいつが行くあてないのは分かってたし。


「びっくりするくらい最低の理由ですね。もう少しマシなこと言うと思ってました」


「男なんてそんなもんだ」



 そこで話は途切れて沈黙がやってくる。脱獄囚達のうるさいイビキは聞こえてくるが。



 俺はこんにゃくを食べ終えて、なんかボーッとしていた。


 ちなみに全然のどは潤わなかった。

 シャーラもいつのまにか俺の後ろにあるイスに座ってボーッとしている。


 なんとも暇である。圧倒的にすることがない。このままでは暇死してしまうのではないか。かと言って、外に出てうろうろするわけにも行かないし……。


 そもそもここにとどまっている理由が勇者みたいからだしなぁ。


 でもこの街を一刻も早く出たいだろうシャーラに勇者の召喚を見たいとか言う訳にもいかない。

 もういいか。



「はぁ、しゃーねぇ、もうこの町出ちまうかぁ」


 その言葉を聞いたシャーラは待ってましたとばかりに勢い良く立ち上がった。しかしそれが無意識の行動だったのか、こほんと咳払いしてすぐにイスに座った。


 どうやらなんのプライドかは知らないが、自分からここを出たいと頼むのは嫌なようだ。


 そんな姿を見ると、残念だが勇者の召喚は諦めるしかない。


 さて、そうと決まればさっそく俺とシャーラは地下の酒場を出た。持ち物が何もないので準備とかは不要だ。


 外に出るとき、かなり兵士や騎士長を警戒したが、気配はなかった。でも、騎士長は未だに俺を探しているだろう。俺はそう確信している。


 俺の推測では、この町が結構広い上に情報が行き届かないスラム街の範囲が大きいので捜索が間に合ってないってところだ。


 だからといって警戒は怠ってはいけないだろう。


 外はもう朝になっていて、丁度朝日が外壁からひょこっと顔を出したくらいだった。


 だけど異世界の町はまだ寝静まっていて、とても静かだ。聞いたこともない鳥の鳴き声だけが響いている。


 そんな中、俺とシャーラは早くもスラム街の端まで来ていた。


 残すところ外壁を超えるだけだ。


「じゃ、いくぞ」


 そう言って俺はシャーラを担ぎ上げる。

 

「きゃ! 急に担がないでくださいよ!」


 シャーラが不注意にも少し大きな声を出したので、内心焦ったがどうやらここらに追っ手はいないようだ。


 とりあえずこの外壁を超えたら脱出成功だ。

 勿論、飛び超える。


 俺は膝を曲げ、思いっきり力を込めてた。そして、地を蹴る。



 ビュンと勢い良く飛び上がった俺は、力加減を間違えたのか、外壁の高さを大幅に超えてしまった。


 だけどそのおかげで素晴らしい景色が目に映っている。


「わぁ……」


 担がれているシャーラも感嘆の声をあげた。


 俺は空中で大きく深呼吸する。そして朝日を一身に受けた。シャーラを担いでなければ両手を広げているだろう。



 最高に気持ちが良い。



 しかし、頂点に達して落下に差し掛かった頃、俺は見てしまった。



 目に映ったのは、遠く離れた外壁の上に立つ何者かの人影。

 朝日を後ろにして顔は見えない。


 だけど、纏うオーラと雰囲気で分かる。



 あれは騎士長だ。



「見つけたぞ、大罪人」



 騎士長の声が響く。いや、俺の聴覚でなんとか聞き取れるくらいの小さな声だったので響いたとは言えないかもしれない。だけど、そう錯覚してしまうくらい騎士長の声には狂喜を感じた。



 そしてそれと同時に俺と騎士長を直線で繋ぐように無数の魔法陣が重なって展開された。


 これはマズイ。


 空中にいるから何をされても回避行動が取れない。


 頼みの創造で盾などを創ろうとしたが、それも成功しなかった。


 おそらく頭の整理が追いついていないのと、実はかなり焦っているのが原因だろう。


 完全にやられた。


 俺の目に騎士長のモーションが刻まれていく。


 そう、それはまるで槍でも投げるような動き……


「シャーラ、悪いな」


「……え?」



 俺はシャーラを外壁の上目掛けて放り投げる。



「きゃあ!」


 シャーラはそのまま外壁の上に落ちた。結構高い場所からだったけど、あの落ち方ならなんとか大丈夫だろう。



 その次の瞬間。


――必滅雷撃神槍(グングニル)


 そんな声と共に一閃。


 騎士長から俺に向けられて放たれたそれは俺の胸目掛けてものすごい速度で飛んできた。


 俺はそれが胸に突きささる前になんとか手で掴んで抑える。しかし、そのまま俺は槍ごと後方へと吹き飛ばされていった。


「……ッグゥ!」


 槍の先が少しずつ胸に食い込んでいく。


 俺はふっ飛ばされつつもなんとか槍から抜け出そうとするが、抜け出せない。


 手に込めた力を少しでも緩めてしまうと俺の心臓は貫かれてしまうだろうし、この状況で集中が必要な創造を使うのも不可能な話だ。


 町なんてすぐに見えなくなった。



 どれくらい吹っ飛んでいただろうか。

 本当に死ぬかもしれない。


 そんなことを考えていた時だった。



「……ッ!」



 ドンと背中が何かに衝突する。

 いや、ドンというやわな効果音では今の音は表せれないだろう。

 岩か何かだろうか、とにかくなにか硬いものにぶつかったのだ。


 その思わぬ衝撃に、俺の手の力は弱まってしまった。隙アリとばかりに槍は俺の手の中をすり抜けていく。


「しまっ……!」


 そして俺の心臓はあっさりと貫かれてしまった。


 


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