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おはようマドモアゼル

 箱の中から出てきた銀髪の少女に、内心俺はビビっていた。


 箱の中で首元まで鎖をぐるぐるに巻かれており、苦しそうな顔をしているところを見ると死んではないはず。とにかく意識はなかった。


 それを見て俺はしばらく立ち尽くす。


 いやいや、何してんだ俺。はやく助けないと。


 ……助ける?そもそもこの娘はなんなんだろう。何かあるからここにいるのはわかってる。そして俺の慢心だけで助けていいのだろうか。もしかしたらこの子は助けて欲しいなんて思ってないかもしれない。


 いや、違う。これはフラグ……ッ! 助ける以外のルート選択が俺にはない!


 結局助けることにした俺は、鎖を外そうとガチャガチャさせるがびくともしなかった。

 無理に外すとこの娘に危害が加わりそうなのでどうしようもない。


 仕方ない。一旦運ぶか。


「よいしょっと」


 俺は箱ごと少女を持ち上げる。ピザでも作る構図になっているが、慎重に扱わないと。


 箱を持ち上げた時に気づいたのだが、箱のあった場所を中心に魔法陣的な物が描かれていた。

 初めて見る魔法陣に少しテンションが上がる、しかしこれもなにかこの娘に関係しているのだろう。


 まあそんなことはわりとどうでもいい。とにかく早くここを出たい。


 しかし、また掘って脱出するにはこの箱は邪魔すぎるし、来た道を戻って正ルートから脱出するのも確実に邪魔が入る。


 さて、どうしたことかね。


 そんな事を思っていた時だった。



「やはりそれが狙いか大罪人」



 うわ、なんか来たぞ……。


 そう思って恐る恐る振り返ってみると、そこにいたのは長身の男。

 鎧を着ており、腰には剣。赤髪赤眼で少しかっこいいと思ってしまった。


「……もしかして、騎士長さん?」


「ご名答、そしてお前はこの場で殺す。それも返してもらうぞ」


 騎士長は腰の剣に手を添える。


「拒否!」


 一閃、それは俺の手を狙った攻撃だった。俺は一瞬箱を宙に浮かせ、それを回避する。


 そして返ってくる二撃目。


 もしかしたら人質的なものになるかなぁなんて思って箱を前に出してみる。


 しかし、剣が止まらない。それを見た俺は慌てて箱を下げて飛び退いた。


「驚いた。なかなかできるじゃないか」


「お前……、今この娘ごと俺を斬ろうとしたな?」


 これ、一回言ってみたかったセリフである。


「お前を殺して宝具を奪うのが優先事項。それはなるべく生かしておきたかったがもはや用済みだ」


 お前からも情報を得たかったがな、そう続けて剣を構える騎士長。

 サッと俺も箱を構える。


 中の少女には申し訳ないが、少し揺れることになるだろう。


 騎士長の斬撃。身体能力が上がっているだけあって俺はその軌道がよく見える。かといって今の俺に反撃する余裕はない。


 俺はその軌道に少女を巻いている鎖に合わせる。


 そして、ギリギリ鎖だけ斬らせた。

 ギィィンという音と共に切断される鎖。その衝撃で箱から出て宙に浮く解き放たれた少女。


 そこで騎士長の攻撃は終わらない。何往復もする斬撃を全てすんでで避けながら、俺は一瞬出来た騎士長の隙を見て、自分でもびっくりのマッハパンチを繰り出す。


 それを騎士長は手で何とか防ごうとするが実はそれはフェイント。


「ボンバヘッ!!」


 左手を地につき、そのまましなる蹴り上げを披露。あごにお見舞いしてやる。


「ぐぅっ……!」


 騎士長は上に吹っ飛ぶ。そこまで終えた俺は落ちてくる少女を優しくキャッチ。自分でも驚くくらいカッコよく完璧にキメてやった。


 騎士長といえば天上に当たるとそのまま落ちてきた。


「騎士長さんルゥラでも使ったんですかー?」


 俺はそう煽ったが、騎士長に今の攻撃はそこまで効いてないらしく、ケロッとした顔で起き上がってきた。


 俺も本気ではなかったとはいえ、これだけしか効かないとなるとこの先が少し心配だ。

 創造で補えたらいいのだが。



「ここまでやるとは。私も少々本気でやるとしよう」


 そう言うやいなや、騎士長はいきなり目を閉じ息をスゥハァしながら唸り声を上げだした。


 うんこでもするのかなーなんて思いながら俺は手に抱えた少女に怪我はないか確認する。


 てかこの娘やわらけぇしなんかいい匂いがする。それによく見ると規格外の可愛さじゃないか。なんてラッキーなんだ!

 長い銀の髪はダラリと垂れていて、なぜかそれにエロスを感じる。とにかく俺は久しぶりに三次元の女の子にトキメキを感じていた。


 いや、そんな事を考えている場合じゃない。騎士長を見ると何かオーラ的な物が周りに集まっていてバチバチと音を立てている。


 赤髪も逆立っており、もうそれなんてサ○ヤ人?って感じだ。


 さっきと比べて存在感が桁違いだ。

 明らかに本気出したっぽいじゃん。



「さて、再開しようか」



 オーラを纏いながら騎士長は俺にそう言った。手に持つ剣までが光っていて、あれに斬られた時のダメージは簡単に予想できてしまう。



 俺は少女を抱えながら体制を低くして構えた。




 ――そして俺は創造する





「リミレト!」



 例の効果音を残して、俺はあの場から脱出した。





ーーー




 先程は、リミレトとかもしかしたら創造で使えるかもしれない。そう思ってやってみると案外できた。

 創造と言っても物質限定ではないようだ。

 その代わり結構体力の消費が大きかった。この体力が消える感じがなかなか気持ち悪い。神様は能力に制限を付けたとか言っていたが、これがそうなのだろうか。




 それにしても、騎士長は今どんな顔をしているのだろうか。

 せっかく本気を出したっぽかったのにいきなり一人になっていったいどんな気持ちなのか知りたい。


 そう考えると俺は笑いを堪えることなんてできなかった。一人でニヤニヤしている。



 さて俺は現在、民家の屋根の上に未だ目を覚まさない少女をお姫様抱っこしながら立っていた。


「探せぇぇ! なんとしてでも探し出せぇ!!」


 下からは俺を探し回っているのか、さっきからそんな声が聞こえている。


 うーん、どうしたことか。とりあえずこの娘起こすか。




 いや、待てよ?

 あちゃー、俺はなんて健全な発想をしてしまったんだ。こんな可愛い娘が目を覚まさないのにイタズラもせずに起こすなんてとんでもない。これは俺が夢にまで見たシチュエーションじゃないか。


 そうと決まればどんなことをしてやろう。


 今俺は自分でもわかるくらい気持ち悪い笑みを浮かべているだろう。

 俺はとりあえず少女を寝かせるために布団を創造する。

 が、こんにゃくがでた。



 ダメだ! 全然集中できてねぇ!


 この娘には申し訳ないが、興奮して創造ができないので布団はなしで我慢してもらおう。


 屋根の上にゆっくりと少女を寝かすと、俺は手をワキワキさせる。


「デュフ、デュフフフフ」


 さて、まずはおっぱい揉んどくか。



 そう思って手を伸ばした瞬間少女の目が開いた。


 ヤバい、早く揉まないと!


 そう思った俺は伸ばしかけた手を少女の胸にまで瞬時に持っていき数回揉みしだいた。


 柔らかい、程々のサイズだな。


「なにするんですか!」


 もちろんの如く俺は平手を覚悟。女の子の平手は一度経験しておきたかったから丁度いい。

 起きてくれたし平手をもらえるしおっぱい揉めたしまるで一石三鳥じゃないか。


 しかし、平手を期待していた俺は思いもよらぬところに攻撃を受けることになる。


「ふべ!」


 え、えぇぇ? まだグーパンチとかなら分かるけど、目突きぃ?


 ヤバいよこの娘……。





 さて、しばらく目突きのダメージに苦しんだ後、持ち直した俺は少女に色々事の経緯を話した。

 しかし、当の少女は俺を無視しているので聞いているのかどうか分からない。



「とりあえず名前教えてくれないか」


「……」


 ずっとこんな感じだ。しかし俺はめげずにずっと少女に話しかけている。



「なあ、もうそろそろ教えてくんね?」


「話しかけないでください、気持ち悪い」

 

 やっと口を開いたと思えばこれである。


 まあでも、確かにいきなり胸揉んでくるような奴は気持ち悪いだろう。

 だけど俺は折れない。


「俺はレイヤって言うんだ。お前の名前は?」


「分かりました、言いますけどもうちょっと離れてくれませんか?」


 離れてくれませんか? 少女はそう言うが俺と少女の距離は3メートルはある。ついでに心の距離も相当離れてるだろう。俺が悪いんだけどこの娘の性格はあんまり好みじゃないな。顔は好みなのに。


 とにかくこれ以上離れたら大きめの声で話さなければならない。そうなると下の奴らに気づかれる可能性も出てくるはずだ。


 その旨を少女に伝えると、嫌々ながらも3メートルで許してくれた。



「私はシャーラって言います」


「じゃあシャーラ、なんであんなところにいたんだ?」


「呼び捨てですか……」


「呼び捨てですかってお前いくつだよ?」


「16です」


「俺より下じゃねぇか!」


 おっと、思わず大きな声を出してしまった。気を付けないと。



 話を逸らされたが、問題はシャーラが何者なのかってことだ。



「もう一度聞くけどお前なんであんなところにいたの?」


「それは……」



 俺の質問にシャーラは口ごもる。どうやら話したくないようだ。


「話したくないならいいけどさ」


 そこは男レイヤ、無理に聞くことはしない。


「……レイヤこそ何者なんです? 私を助けたのは利用するためですか?」



「やっぱりお前って利用できるくらいすごいのか」


 俺がそう言うとシャーラは「しまった」って顔をして、口をつぐむ。


「いや、利用するつもりはねぇよ」 


 シャーラはその言葉にも不安げな顔をした。


 俺の推測では、大方シャーラは生まれつきすごい魔力を持っていて、その魔力を吸収する為にあそこに閉じ込められていたとかそんなのだ。そういう設定のアニメを見たことがあるし、丁度勇者召喚で魔力が必要なことを考えるとつじつまが合う。


 そういや思い出してみると騎士長はシャーラを用済みだと言った。ということは魔力はもう十分なのだろうか。


 色々考えているが、結局は全部推測の域を出ない。


 それでもしばらく唸っているとシャーラが話しかけてきた。



「レイヤ、これからどうするんですか?」


「俺はテキトーに世界中旅するけど、お前はどうする? くるか?」


「アテもありませんし、不本意ですが着いていくしかないですね」


「もうちょっと可愛く頼めないのかよ」


※リミレトはレイヤの大好きなゲーム、ドラポンクエストの呪文です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 万が一アニメ化された暁を想像した。 ただの痴漢野郎じゃねーか。クソだな。
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