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開かなくなった扉

作者: #
掲載日:2012/08/08

マジョリーナの話を聞いたマジョリーナの父は、街の霊媒師を呼び、部屋からそののっぺらぼうの女を追い出すように依頼した。

マジョリーナの父は、その女がマジョリーナのふりをした悪霊だと思っていた。



霊媒師は高野神社の年齢200歳の巫女であるが、外見は60歳くらいのおばあちゃんである。彼女は多くの悪霊を悪霊界の封じ込め、その確かな能力のことが街じゅうの人々に知れ渡っていた。




霊媒師はマジョリーナの父親と一緒に家にあがり、2階から玄関を見つめていたマジョリーナの姿を見た瞬間に彼女にかけられた呪いに気が付いた。



「あなたにはとてつもない呪いがかけられています。この屋敷に住まう悪霊の呪い・・・」


マジョリーナは父親に言われて霊媒師が案内された座敷に入って、霊媒師の前に座った。


「悪霊というのは女ですか?・・・それとも男ですか?」


父親が尋ねると、霊媒師は切れ長の目を細めて正座をして俯いているマジョリーナを見つめた。



「・・・・男・・・ですね?」


マジョリーナは納得がいかないとでもいうように戸惑った顔をしてから、霊媒師を睨みつけた。


「・・・・男の霊です。女の霊の気配はありません」



「私が見たのは私と同じ姿をした霊です!」


「あなたに憑りついているのは間違いなく男の霊であり、その霊から発せられる呪いのオーラがあなたから放たれています」


「じゃあ私が見たのは、変装していたってことですか?」


「“開かずの間”を見せてもらえませんか?」



その霊媒師の一言で、マジョリーナと父親は霊媒師をその開かずの間に案内することとなった。


その部屋の扉は、マジョリーナが自分と同じ姿をした霊を見たその日からドアノブを捻って押すだけで開くようになっていた。



中は相変わらず、ただの暗い物置きだった。



「ここには、あなたの霊がいます。といっても、あなたが小さいころに分離してここにいて、勝手に成長してしまったようです。こういう霊は分身霊といって、時々存在してしまうことがあるんです。それは別に問題なのですが、この部屋にはあなたに憑いている男の霊の呪いが充満しています、その男の霊のせいで、あなたの分身霊が狂わされてしまいました。あなたの精神はこの分身霊の影響を受けて苦しめられています」



マジョリーナは、あの日見たような気がしたもう一人の自分の涙の訳が分かった気がした。



「・・・・一体、私はどうすればいいんでしょう・・・?」



「この部屋にもう一度お札を貼り、毎日毎日朝夕に3分のお経を唱えるのです。足は崩していても構いませんから。そうすれば男の霊は消えます」



「でも、それで分身霊は元通りになるの?」


「・・・それは、私には分かりません。でも、まず男の霊を払って悪霊界に送り返さなくては、あなたの精神はさらに苦しめられることになります」



その日から、マジョリーナの辛い朝と夕の勤行が始まることとなった。



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それから約半年が経ち、霊媒師は、マジョリーナの屋敷を訪ねた。



もし、全く一度もさぼらずに朝と夕に毎日お経を唱えたのなら、そろそろ、男の霊が悪霊界に封じ込められたころであった。霊媒師は多忙だったため、一人一人のことを細かく気にしている暇はなかった。




屋敷の近くのなんの変哲のない深い森を歩いている時に、霊媒師は悪い霊の気配を感じとっていた。もうその時に、勤行がだいぶ前にとっくに行われていなくなっているということが霊媒師には簡単に察しがついた。



少し早足で森を抜けて屋敷に付くと、霊媒師には屋敷の開かずの間だった部屋から紫黒色の強いオーラが発せられていることが分かった。


ピンポーン


「はい、どなたですか」


「私は前にこの屋敷の除霊を依頼された霊媒師です」


カチャッと音を立てて扉が開くと、扉の隙間から執事と思われる白髪で丸メガネをかけた小柄なおじいさんが霊媒師を上目遣いで見つめていた。

巫女の恰好をした霊媒師の姿を見たそのおじいさんは扉を開け放ち、霊媒師を屋敷内に招き入れた。



「私はこのお屋敷の執事です。マジョリーナ様は2階の例の部屋にいますが、ここのところは食事とお風呂とトイレ以外、全く出て来る気配がありません。旦那さまはお仕事で奥様と共に海外に行かれています」



「あがってもよろしいでしょうか?その部屋が、前に拝見させていただいた時よりも霊界と強くつながっています。このままだと娘さんが死んでしまうかもしれません」



「分かりました、早く2階のその部屋へ」



霊媒師は階段を駆け上がり、執事に案内されるよりも早く開かずの間だった部屋の扉の前に辿り着いた。

部屋の扉に貼り付けたはずのお札は、荒々しく剥がされていた。



霊媒師がタイムリミットシェルターのお札を貼り付け、ドアノブを捻って押すと、前に屋敷に訪れた時と同様押せば簡単に扉が開いた。タイムリミットシェルターのお札とは、扉に張り付けるだけで、その個室の中に霊を閉じ込めておけるお札である。

これをしなければならないほど、部屋の中の霊力は強まっており、その霊が他の部屋をも浸食しようとしていたのだ。




霊媒師が部屋の中に入ると、ずたずたに引き裂かれたお経の書かれた巻物とばらばらになった数珠玉が床に転がっていた。



霊媒師が気配に気がついて部屋の中のクローゼットを開けると、マジョリーナの死体がクローゼットから霊媒師に向かって倒れ込んできた。霊媒師が咄嗟によけたため、死体のマジョリーナはそのまま床へ倒れ込んだ。


「絶対に部屋の中には入らないでください!」



霊媒師は部屋の前で驚愕するあまり振るえている執事に気がついた。

執事は表情を強ばらせ、マジョリーナの死体を見つめていた。


死体からはすべての血が抜かれており、その体は本来の大きさの1/3くらいの大きさになっていて、顔も手も足もしわくちゃだったが、服や髪型、髪の色、目の色からそれがマジョリーナであることは簡単に察せられた。




マジョリーナの分身霊は、すでに失われたマジョリーナ自身の魂とともにあの世へと消え去っていた。



「分身霊がいる限り、私が悪霊に手出しをすることはできなかったのですが、マジョリーナさんが分身霊とともにあの世に行ってしまったからには、もう私が悪霊を悪霊界に送ってしまいましょう、扉を閉めてください」



執事は霊媒師に言われた通り、部屋の扉を閉めた。

霊媒師は何時間もかけて御払いをし、マジョリーナを呪っていた男の霊を悪霊界に封じ込めた。



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