第2話~変化~7
カンスは
白い板に書かれた
『赤壁さんのはなし』を
読み始めた
カンス
「なになに?
『江戸時代の中ごろ
加古川宿に
徳蔵と言う
腕のよい
油絞りの職人が
おりましたが
サイコロ博打が
何よりも好きで
そのせいで
貧乏ぐらしを
続けておりましたが
タマと言う猫を飼い
とても可愛がって
おりました
ある日のこと
タマを懐に入れて
博打場にでかけたところ
妙なことに
サイコロの目が
丁ならタマは両目を閉じ
半なら片目を閉じる
ではありませんか
徳蔵はタマの合図で
久々に大勝ちをしました
その帰り道 徳蔵に
有り金すべてを
巻き上げられた
梅吉 松吉兄弟の
待ち伏せに合い
金を奪われ殺されてしまいました
講談の続きは
その後タマが
主人徳蔵の仇討ちを
果たしますが
無念にも返り討ちに
合ったタマの血で
真っ赤に染まった
壁を使って
建立された祠が
赤壁大明神の
起こりです
今も赤壁さんと
親しまれて
勝負に強い忠義な
タマの御霊が
祀られています』
なるほど〜」
リア
「塞翁が馬やね…」
カンス
「ねえさん
馬ちゃいますよ
猫ですよ」
リア
「アホ〜
そのネコに能力が
有ったのが
よかったのか
悪かったのか…
返り討ちにあったのが無念なのか
死んで祀られたのが幸せなのか
本人しか
わからんって事や」
ドーマン
「…ならば
猫に直接
聞いてみるか?」
カンス・リア
「ドーマン様!!」
いつの間にか
ドーマンが立っていた
ふところから
小さなビンを
取り出し
カンスに
ドーマン
「カンス
この液体を祠に
吹きかけてみろ」
カンス
「それは…
ねえさんの時にも
使った液体…
ドーマン様
それはいったい
なんなんですか?」
ドーマン
「これは
私の復活のために
お前が集めた
血の中にあった
人の欲・怒・苦
などを集めたものじゃ
これにより
悪の心が増幅し
変化し
我がシモベとなる
秘薬じゃ」
カンス
「わかりました〜
かけてみます〜」
カンスは液体を
口にふくみ勢い良く
祠に吹きかけた
ドーマンが
九字を切り
呪文を唱えた
すると祠全体が
黒い闇に包まれ
その闇がひとかたまりになり
祠から離れ
ドーマンの前で
妖猫となって
姿をあらわした
顔は猫
体は赤く
プロテクターをつけている
手には
長い鉤爪が
ついている