第5章
・・・それから21年。
歳月はフォアマンの立場を、
『チャンピオン』から『挑戦者』に変えていた。
だが、その年月は・・・
同時にフォアマンをして、
『冷酷な印象の若者』から、
深みを湛えた・・・
『魅力的な顔つきの男』に変貌させてもいた。
もしかしたらそれは・・・
ただ「けた外れの肉体」によって世界をねじ伏せ、君臨していた男が、
『肉体を超えるものの存在』に気づいた結果だったかもしれない。
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【ユースセンターでの、フォアマンへのインタビュー】
通訳を介した、沢木耕太郎氏から、フォアマンへの質問です。
沢木氏:「あなたにとって、人生における『最大の勝利と敗北』とは、どのようなものだったか・・・?」
フォアマン:「1974年、アフリカのザイール(= 現・コンゴ民主共和国)でモハメッド・アリに負けて、私は身も心もズタズタにされた。
ボクサーとしてよりも、『人間』として、彼に負けた気がしたんだ。
・・・私の人生の中で、おそらくあの敗北が『どん底』だったんだろう。
私が感じた『人生の最高の瞬間』とは、専任の、責任ある『伝道師』になれたときだったろうね。
私が経験してきたような『悲しみ』や『苦しみ』を、今度は、私以外の人のために使えるようになったからだ。」
・・・フォアマンのジムには、
なぜか最も目立つところに、
モハメッド・アリの肖像画がかかげられていた。




