第12章
フォアマンがボクシングをやめ、
『信仰の道』に入ったのは・・・
それからほどなくしてだった。
【以下は、ユースセンターでのフォアマンの様子】
フォアマン:「(自分の前をとおっていく彼の妻の手の甲にキスして)これは、私の妻。」
(彼の妻、メアリーは、カメラマンがいるせいか、照れくさそうにする)
(フォアマン、礼拝の参列者に抱かれた、幼い坊やにスキンヘッドを差し出す。すると坊やは、指でフォアマンの頭をつつく。)
フォアマン:「ははは・・・見たかい。指で私の頭を突っついたよ(笑)。」
インタビュアー:「(礼拝での)話は、いつ思いつくんですか・・・?」
フォアマン:「教会で椅子に座ったときだよ。」
インタビュアー:「好きな話は・・・?」
フォアマン:「『ダビデとゴリアテ』の物語。
ダビデに倒されるゴリアテは、巨漢だったが自信過剰だった。
・・・ははは、失礼するよ。
来た人に声をかけてくるんでね。」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・フォアマンは、
『礼拝中だけは、(教会の中に)カメラを入れないでくれ』と言っていた。
礼拝中のフォアマンは、
聖書を片手に参会者の前に立つと、その一節を朗読し・・・
『やさしく噛みくだいた話』をしていく。
フォアマン:「愛は寛容で慈悲に富む。
愛はねたまず、誇らず、高ぶらぬ!」
フォアマン:「・・・誰かにひどい目にあわされても、けっして憎んではいけないよ。」
・・・すべては、『神に出会うため』だった。
そう思うことでフォアマンは、
キンシャサで粉々(こなごな)になった『自我』を、
拾い集めることができるようになったのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(フォアマンの自宅にて。彼の娘の一人・・・ナタリーが、なにげなくピアノの鍵盤を指で叩いている)
フォアマン:「(ナタリーに向かって)何か短い曲を練習してたろう。」
ナタリー:「どの曲のこと?」
フォアマン:「ハ長調で弾けるかい?」
ナタリー:「うん。」
(フォアマン、ナタリーをどけて、指で演奏してみる)
フォアマンが教会に去り、
フレージャーが消え・・・
最後まで残ったアリが、リングを去った。
・・・それが、
ヘビー級の『黄金の70年代』の終わりだった。




