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転生

以前執筆していた作品の改訂版です。

大筋の内容は変わりませんが補足情報など追加して書いています。

「メイまた徹ゲーか?」

 

 野田良一は今年で16歳。念願かなって日本で一番の進学校に合格し、医者を目指して日々勉学に励んでいる。

 一方妹のメイは可愛いけれど乙女ゲームが大好きで、勉強嫌い。両親はメイの将来を案じて頭を抱えている。


「お兄ちゃんも見る?新しく買った『バラの花咲く園』ってゲームすごく良くて。登場しているイルナっていう悪役令嬢がかな〜りえげつないからドキドキするんだよ!」


 目をキラキラさせてゲームを説明してくれる妹。良一はいわゆるシスコンなので話かけてくれたことを嬉しく思って延々語られるゲーム内容を聞いていた。


「はー喋ったらスッキリした!私今日は眠いし学校休むよ。おやすみ〜」


 そう言ってさっさと2階の自分の部屋に戻ってしまった。


「メイはしょうがないな。さてと、時間がないし俺も出かけるか」


 カバンを持って家を出る。うちの両親は仕事の虫なので早朝から深夜まで働き詰めだ。なので鍵を閉めてから家を出る。


それなりに充実した毎日。むしろ順風満帆すぎて怖いくらいだった。

 

良一は通学路をいつものように歩いていたが、横断歩道が青になった瞬間に一歩前に踏み出すと、誰かが叫んだ


「危ない!!」


「へ?」


 随分間の抜けた声が出たが、事態を把握した時には全て遅かった。良一の眼前には巨大なトラックが迫っていたから。


 痛みは感じなかった。おそらく即死だったからだろう。気がつけば俺は真っ白い空間を漂っていた。すごく暖かくて安心できる。でも手足は動かせないし、目も見えない。ただ。ここはすごくいいところだってことだけはわかる。誰かに守られているような…そんな感覚だった。


(これが天国か…俺はまあ、仕方ないと思うけど、父さんと母さん、メイは俺がミンチになって悲しんでいるだろうな)


そう思うと胸が少し痛んだ。

それからどれくらい時がたっただろうか…。

 ある日、突然白い世界が暗転して、俺は気を失った。


あれからどれくらい経ったのだろうか、しばらくして目を覚ますと俺は体が動かせなくなっていた。目もぼんやりしか見えないので今どう言う状況に置かれているのかがわからず怖くなった。


思わず鳴き声を上げる。すると俺の喉からはオギャアオギャアと赤ん坊のような声が出て自分でびっくりしたが、一度泣き出すと止めることができない。意思に反して体が動かないのだ。


「あらあらディオス。どうしたのかしら」


 優しい声が聞こえてきて俺の体が持ち上がる。顔が至近距離まで近づくとそこには金髪碧眼の美しい女の人がいた。


(これが死後に出会う女神様なのだろうか)

 あまりの美しさに目が離せなくなってしまう。


その時だ。扉の開く音がして、誰かがこちらに近づく気配を感じた。


「陛下。ちょうど良かったです。今ディオスが目覚めたところなのですよ」


(ディオス?ディオスって誰だ?)


 不思議に思っていると、陛下と呼ばれた男が俺に手を伸ばして言った。


「私にも抱かせてくれ。この後は執務でディオスに会えるのは今しかないんだ」


「あらあら、困ったお方ですね。ディオス」


陛下と呼ばれた男はそうっと壊れものを扱うように優しく抱きしめてくる。


(うっ…筋肉が痛い)


 今の俺はちょっとした痛みに弱くなっているらしい。抱き心地が悪かったが、この男にはなぜか媚を売っておいた方がいい予感がしてそっと微笑んだ。


「おお!今ディオスが笑ったぞ!」


「ふふ。まだ生まれて数日ですよ?きっと反射でそう見えただけですわ」


「そうか…だが私は満足した。これで一日頑張れそうだ。行ってくるよシルビア、ディオス」


そう言って陛下と呼ばれて男は部屋から出て行った。


 嵐のさった後のように部屋には静寂が戻る。俺は疲れたのかうとうとしていつの間にか眠ってしまった。


 そんなことが繰り返される毎日で、なんとなくわかったことがあった。

 どうも俺はもう野田良一ではなくディオスという赤ん坊、しかもガレオン王国という場所の第一王子になってしまったこと。野田良一の身体はトラックに轢かれて死亡し、この世界に転生してしまったことを理解した。


ガレオン王国は大陸の中で最も広大な敷地を有する国で、それに隣接するように、リオン公国、イーザー王国、ゼクス王国があるようだ。


(父さんと母さん、メイのことは気掛かりだけど、こうなってしまったからには第二の人生を一生懸命生きないと)


 俺はそう決意して赤ん坊として日々できるだけの努力(首すわり、寝返り、ハイハイ、掴まり立ち、立ち歩き)をした。


 すると全てが通常の子供より数ヶ月も早くできるようになり、周囲の大人達を驚かせていた。言語も早くに喋りはじめ、その内容が大人顔負けだったので、ディオスは神童と呼ばれた。


 父王はディオスのそんな能力を見て、もっと相応しい教育を受けさせようと、各方面から優秀な教師を招き入れ、ディオスに英才教育を受けさせた。


 ディオスは元々が優秀だし、努力が好きだったので、やりがいのある勉強に精を出した。座学は帝王学と大陸共通語の習得に少し苦戦したが、剣術、弓術、乗馬にはすぐに順応できた。


(ああ!毎日がたのしい!死んだ後にこんなに充実した時間が過ごせるなんて!)


ディオスは金髪碧眼の絵に描いたような美少年だったため、生前平凡顔だった良一はその点でも転生したことを喜んでいた。


(まさかこんなイケメンで神童と呼ばれるようになるなんて。なんてラッキーなんだ、元々の生活も楽しかったけど、今の方がもっとやりがいがあるな。だって将来国王になるんだから。もっと勉強と訓練をしていい王様にならないと)


 ディオスとなった良一は元々の生真面目て優しい性格のおかげで、国民や周囲の大人たちに愛されて育っていった。


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