表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

第三話 カールはかわいい

家族が立ち止まる中、玲奈は再びカールと向き合い、彼のバカっぽい口調に思わずクスリと笑ってしまった。そのやりとりを見守りながら、健一は慎重に周囲を見回す。木々は日本の山々のものとは異なり、葉が濃い紫色で、幹は通常の数倍は太い。その根元には、鮮やかな青い花が群生して咲いており、独特な香りが漂っている。


「すごい…なんだか、絵本の中に迷い込んだみたい」と颯斗が興奮気味に言い、周囲の植物や生き物たちに視線を移した。ふと、近くの木陰から丸い大きな目をした小動物が顔を覗かせる。毛がふわふわとしたその生き物は、リスのように木を登っては降りたりしながら、家族を好奇心いっぱいに見つめている。


「マーちゃん、見て! あの生き物、めっちゃかわいい!」玲奈が嬉しそうに指差し、目を輝かせると、真理も頷きながら微笑んだ。


「この世界の生き物、どれも不思議ね。私たちのこと、警戒してるようでもないし…」と真理が柔らかな表情で周囲を観察する。すると、カールが突然小さな声で玲奈に問いかけた。


「ねえ、レーナ。ここに来たってことは、おまえら、食べ物持ってるのか?」


玲奈は首をかしげて、「え?食べ物?」と答えると、カールはしきりに口をパクパクさせながら必死に何かを伝えようとしていた。周りの大人たちはそのやりとりの詳細まではわからないが、玲奈が何か聞き取っていることには気づいていた。


「玲奈、何か言ってるのか?」健一が尋ねると、玲奈は「カールは、私たちが何か食べ物を持ってるか気にしてるみたい」と返答した。


「じゃあ、このパンでどうだ?さっき途中のコンビニで買ったやつだが、こんな状況じゃ役に立つかもな」健一がカールに向けて袋から取り出したパンを差し出すと、カールは「おおお、これか!人間の世界のパンってやつ!」と喜び勇んで飛び跳ねるように近づき、玲奈の手からパンを受け取った。


一口かじったカールは、まるで初めて食べる味に感動したかのように目を丸くし、「うまー!これ、すごいぞ!」と大声で叫んでパンを頬張る。彼のあまりの興奮ぶりに、玲奈や家族全員が思わず微笑んだ。


「この調子だと、他の生き物とも友好的に接することができそうだな」と健一が安堵の表情を浮かべる。


「私も少し安心したわ。ここで出会う生き物たちがみんな優しいといいんだけど…」真理がそう言いながら周囲に視線を巡らせると、遠くの茂みから不思議な鳴き声が聞こえてきた。声は低く、まるで歌うようにリズムを刻んでいる。


「この世界では、自然の音まで違って聞こえるんだね…」蒼一が感慨深げに呟くと、玲奈が微笑みながら「動物たちもここに住んでるのかな。もしかしたら、あのカールみたいに話せる子がいるかもしれない」と、希望に満ちた瞳で周りを見つめた。


颯斗もまた、「うん、ここで出会う生き物や自然をもっと知りたい。サバイバルも楽しみだけど、どんな発見が待ってるのかワクワクするな!」と拳を握りしめて意気込んでいた。


健一は家族を見回し、改めて気を引き締めて言った。「よし、みんな。まずは周囲を少し探索して、この場所でどんな暮らしができるか確かめてみよう。この異世界での第一歩、気を抜かずに進もう!」


全員が頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ