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第一話 家族会議

ある日曜日の午後、夏の訪れを感じさせる日差しが窓から差し込み、リビングには家族全員が集まっていた。リビングの中央にある大きなテーブルを囲むように座った五人が向き合う光景は、どこか微笑ましくもあり、これから何かが始まるような予感を漂わせていた。


「さて、今年もそろそろおばあちゃんのところに行く時期だな」と健一がゆっくりと話し始めた。彼の言葉には、いつものように揺るがぬ確かさがあった。


「今年も行くんだよね、お父さん?」と、長男の颯斗が目を輝かせながら尋ねる。彼にとって、この年に一度の山奥への旅は、都会の喧騒から離れ、父とサバイバルのような冒険を楽しむ貴重な時間だった。


「もちろんだ」と、健一はうなずきながら答えた。「真莉まり、今年も行く準備、頼むな」


「はいはい、みんなの荷物ちゃんとまとめるから、安心してね」と、真莉はにっこりと微笑んで、テーブルの上のカレンダーをちらりと見た。「今年もまた山奥で涼しい夏を過ごせそうね。あの静けさと緑がいっぱいの景色、想像するだけで気持ちが落ち着くわ」


健一の両親が住むその家は、都会からは数時間離れた山奥にある古民家だった。人里離れた場所にあり、周囲には緑豊かな木々と清らかな小川が流れ、時が止まったような静けさが広がっている。子どもたちにとっては、山道を車で抜けていくドライブもまた、毎年の楽しみの一つだ。


次男の蒼一が冷静にスケジュールを見ながら、「お父さん、行く日にちの確認しておいた方がいいんじゃない?」と提案する。「それと、持ち物リストも作成しておくね。僕、必要な道具を忘れないようにチェックリスト作っておくから」


健一はそんな次男の頼もしさに感心しつつ、「さすがだな、蒼一。だが、あんまり計画ばかりに囚われず、自然を楽しむのも大事だぞ」と、肩の力を抜かせるように軽く笑いかけた。


そんな中、末っ子の玲奈が、抱きしめた白いぬいぐるみのタマをぎゅっと握りしめながら、小さな声で言った。「…おじいちゃんとおばあちゃん、元気かな…」


玲奈の言葉に家族全員が微笑んだ。玲奈は普段は寡黙だが、こういった家族旅行の話題になると、さりげなく大切なことを口にしてくれる。彼女の純粋な心が、家族みんなの温かい気持ちを引き出すようだった。


「おじいちゃんもおばあちゃんも、元気にしてるよ。今年も喜んで待っててくれてるさ」と健一が優しく答え、玲奈はほっとしたようにうなずいた。


すると真莉が、「でも、玲奈ちゃん、タマも一緒に連れて行こうね。きっとおじいちゃんとおばあちゃんも、タマに会えるのを楽しみにしてるわよ」と言って、玲奈の不安を和らげるように微笑んだ。


タマとは玲奈が大切そうに持っている白いぬいぐるみのことだ。このぬいぐるみは玲奈が誕生日の際に長男の颯斗にもらったものだ。


颯斗が嬉しそうに声をあげた。「やったー!それなら、今年も俺が川で魚を捕まえたり、焚き火で料理したりするの手伝うよ、お父さん!」


健一も頼もしそうにうなずき、「よし、頼りにしてるぞ。父さんも、またみんなと自然の中で過ごせるのを楽しみにしてる」と答えた。


真莉が家族の和やかな会話を聞きながら、ふとお茶を用意しに立ち上がる。「みんな、今年もいっぱい思い出を作りましょうね。車の準備もばっちりにしておくから、楽しみにしてて」


家族全員がこの年に一度の旅に心を踊らせている。リビングには期待が満ち、夏の冒険への第一歩が静かに、けれど確かに始まろうとしていた。



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