episode15 真っ向勝負
難産なので初投稿です
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ヴィルフルムは毛を逆立たせながら髭をゆらし、ゆっくりとこちらに近づいて来ている。
視線は俺から離れる事はなく、完全に狙われている。
バッカスが無事なのを確認したいがそれどころでは無さそうだな…やるしかない。
やるべきは護衛、ならここで下す判断は…
「ハルセイ、馬車の護衛は任せた。」
「俺がここで引き付けておくから先行って。」
「…わかった…幸運を。」
そう言うとハルセイは馬車に戻り、指示を出しすぐに走らせて行った。
ヴィルフルムは馬車に興味が無いらしく、ずっとこちらを睨みつけている。
あの時と同じ静寂、だがそれを破るのは俺だ。
駆け出す先手はもう打たれてるんだ、パイルを決める事を考えろ。
ヴィルフルムが反応し地面を抉りながら風を飛ばしてくる。
ギリギリで躱す、体が切れ血が流れ出てる感覚がするが関係ない、パイルを構え叩き付けようとする。
…がその瞬間ヴィルフルムは急に体に風を纏い突進してきた。
「チッ…」
すんでのところで盾で受けたが勢いを流しきれず容易に吹っ飛ばされる、体のあちこちをぶつけながらも減速するが…痛い…距離もまた離された。
左腕が痛む…折れたか…?
息を吐き出す、痛みは関係ない…追い討ちが来るからとにかく集中しろ…!
前を向くとすぐに飛びかかって来ているのが見えた、好都合だ…カウンターで決める…!
噛み付きを左腕で受ける、目の前で腕が噛み砕かれて自分の血を浴びる、言語化出来ない程の痛みが全身を貫く…だが無防備だ…チャンスを逃すな!
腹部にパイルを突き立て引き金を引く
…が貫いた感覚がしない。
俺の体を踏み台にしながら風を使い空中に逃げられていた、勝利を確信したように牙を向けられる。
―――死んだか。
そう思った瞬間ヴィルフルムが地面に叩きつけられる、いつの間にかバッカスが戻ってきており、背後を取っていたようだ。
ヴィルフルムもかなりの高さを跳躍していたがバッカスがそれ以上の身体能力だったようだ。
そんな事を思う暇はない、即座に胸部にパイルを叩きつけ引き金を引く。
火薬と共に突き出される赤熱した杭が毛皮を貫き心臓を貫く、飛び散る血も断末魔の様な咆哮も全て浴びながら全力で殴り飛ばす。
パイルを振り抜き、役目を果たした杭が地面へカラカラと転がり消えていく。
目の前の狼は立ち上がろうとするも四肢に力が入らず直ぐに倒れていった。
…勝ったか…全身が痛い、もう意識も保てなさそうだ…
バッカスもボロボロだったがこちらに近づき手当を始める。
「治療は間に合う、少し眠っておくといい…よく生き残った、ナツヤ」
返事をしたいが息が少し漏れ出るだけだった。
世界がぐるりと回転するような感覚と共に意識は落ちていった。
次回:護衛完了




