表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/159

第79話 リンに任せたら失敗する

 驚き過ぎて、叫んでいた。だって、王子様なのよ? なんで深夜の墓所にいるのよ! てっきり墓所の番人だと思ったのに。うろうろ出歩いて、所有する屋敷の屋根に現れた。あそこでおにぎり頬張った子が、王子様だなんて思わないじゃない!!


「リン、あの……黙ってて悪かった。でも言い出せなくて」


 素直に謝られてしまい、アイリーンは深呼吸する。申し訳なさそうなルイの表情に嘘はなくて、墓所を守ってた理由はともかく、何か理由があるんだろうなと感じた。アイリーン自身も、人に言えない失敗でフルール大陸にいたのだし。


 文句を言うのは筋違いかも。冷静になって深呼吸する。アイリーンはぼそぼそと口の中で言い訳じみた謝罪を並べた。


「そりゃ、私だって言わなかったから? お互い様だけれど。驚いちゃったのよ。そんなに怒ってないわ」


 律儀に理由を混ぜるアイリーンの膝で、ココはぺしんと尻尾で畳を叩いた。いろいろ気に入らないが、楽しそうな顔の帝が一番腹立たしい。その尻尾にじゃれるネネが、翻弄されて転がった。腹を見せて転がる子犬に、視線が集まる。


「えっと……」


「以前は神狐のココしか知らなかったわよね。この子は狗神のネネというの」


 私と契約しているのよ。気づけば本題を避けて会話を続ける二人に、軌道修正する父が口を挟んだ。


「リン、話が逸れている。この二人は罪人なんだよ? このままだと強制送還になるが……」


 帝である父が濁した言葉の先は「二度とこの国の土を踏めないからね」が含まれていた。入国禁止措置は、倭国で罪を犯した異国人に適用される。今までは陸続きの国に対して適用した事例しかないが、不名誉なことにフルール大陸初の適用者になりそうだ。


 遠回しに、ここで願いを使わないと二度と会えないと脅された。アイリーンはそう受け取る。他に願いがあるわけじゃないし、使ってもいいかしら。そう思い口を開きかけたところで、ココが伸びあがって前足で唇を押さえた。


『本当に君は欲がないね。素直に願ったら損するだろ』


 文句を言われて目を瞬く。そういうものなの? でも他に何が得られるのか、彼女は皆目見当がつかなかった。黙っていると示した途端、ココは膝から下りて巨大化する。


「う、うわっ!」


「……っ」


 後ろに尻餅をついたルイの隣で、無言で震えるバロー。もしかして罪人だから生贄よろしく食べさせると思った? 堂々と立つ神狐は、にやりと笑う。牙が見えて恐ろしいかも知れないわね。アイリーンはくすくすと笑って、ココの尻尾を撫でた。


『セイラン帝、リンの願いは僕が使う。いいね?』


「畏まりまして」


 人の世界で倭国の頂点に立とうと、神の一柱であるココより下だ。その意味で、主人となる巫女の特別さが際立つ。本来はココやネネの契約主であるアイリーンは、倭国で最も上位者だった。本人がその権限に気づいていないのが、ある意味残念だけれど。


『僕はそこの二人の所有権を主張する』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ