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第65話 学生たるもの学問重視

 学校は想像したより忙しかった。必要と思われる講義を選び、授業に参加する。重要な課外授業以外、基本的に出席を取らない方式だった。理由を尋ねたら、ここは学ぶ意思を持つ者が集まる場だからと返される。勉強するもしないも、本人の選択に委ねたのだろう。


 考え方の基礎が違っていた。フルール大陸では、貴族学院への就学は義務だ。学ばなければならないし、学ばせない親は罰則がある。知らない、は通用しなかった。


 この国では誰もが積極的に学び、必要ないと判断した授業は切り捨てる。自らが進む道に必要な知識を学び、誰もが簡単そうに文字を書いて計算した。フルール大陸の平民で、同じように計算や文字の読み書きを行う者がどのくらいいるか。


 国力の差、という言葉がルイの脳裏に浮かんだ。様々な魔道具や魔法で便利な生活をするフルール大陸だが、民の知識や学力は全面的に劣る。素朴な暮らしを選んだこの東開大陸の方が、人として豊かな生活を営んでいるのではないか。


 学校の廊下の壁に寄り掛かり、時間割の紙を手にあれこれと取捨選択を強いられていた。ドナルドは武術中心に選んだため、あっさり終わる。だが知識を蓄えたいニコラと、学びたい項目が多過ぎるルイは頭を抱えていた。


「ルイ様、こちらはどうしますか?」


 ニコラは選択すると決めたらしい。倭国の様々な風習を学ぶ授業だ。個人的には受けたいが、巫女や神官などの儀式を教えてもらえる宗教学と被る。うぬぅと時間割を握り締めて唸った。


「そんなもん、それぞれに受けて教えあったらいいじゃねえか」


 ドナルドの呟きに、二人は一斉に振り返った。まさか、脳筋がこんな解決策を出してくるとは。確かにそれぞれがきちんと学んで教え合えば、予習復習にもなるし理解が進む。その上、両方の授業を知識として得ることが可能だった。


 ドナルドは廊下の壁に向かって拳を繰り出す。自分の発言が引き起こした余波に気づいていなかった。壁に直接拳を当てると叱られる、程度の知恵はあるらしい。シュッシュと拳を繰り出しては、当てる直前で力を緩めた。


「助かった、ドナルド」


「意外でした。助言に感謝します」


 なぜ褒められたのか分からないが、ドナルドは胸を張った。礼を言われるのは気分がいい。


 二人はドナルドの助言通り二手に分かれ、気になる授業を網羅する作戦に出た。その量は本人達の想像をはるかに超える負担となるのだが、現時点で知る由もない。大量の丸印が付いた時間割表を覗き、ドナルドは「うわぁ」と嫌そうな声を上げた。


 勉強嫌いのドナルドと、勤勉過ぎる二人。両極端な三人の学校生活は、ようやくスタート地点に立ったばかり。文化の違いを考慮せず、何とかなると踏んだ二人が後悔するのも……間もなくだった。

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