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第112話 当事者以外に広く浅く

 白いフクロウはお菓子を食べ終わると、また来ると言い残して去った。去り際にちらりと視線を向けた先で、アイリーンはまだぼぉっとしている。


 染まった頬の赤い色は、恋愛成就の願掛けと同じ。微笑ましいと思いながら、縁結びの神は空へ舞い上がった。久しぶりに純粋な恋愛感情を摂取し、ご機嫌で飛ぶ。そんな彼女を呼び止めた鹿神のツノに降り立った。


『うまくいきそう?』


『問題はないが、周囲がちぃとばかし面倒臭そうじゃな』


 毛繕いをしながら答える女神に、鹿神の足元で兎姿の女神が唸る。


『いっそ、神託を下ろしちゃったらどう?』


『それだ!!』


 鹿神は大喜びし、さっそく帝や神主達の枕元に立つため、準備を始めた。ついでに巫女達にもお告げを下ろしてしまおうと、兎女神も悪ノリする。やれやれと首を横に振ったフクロウも、多少乱暴な方法を思いついていた。


 ルイはドラゴンの魔力を持っている。つまり隣大陸に縁が繋がっていた。切ってしまったら? こちらに住むしかなくなる。恋愛成就に夢中になるあまり、一線を越えそうな神々だった。それを叱るべき人物がいない今、暴走した神の振る舞いは祟りと変わらない。


 自覚のない女神や男神は、浮かれながら神託を作り始めた。どんな文面がいいか、内容はどこまで明かすか。解釈に相違がないよう、いっそ神々しさを捨ててはどうか。とんでもない案が飛び交い、最終的にそれなりに重々しく振る舞うことに決まった。


 軽んじられたら、本気で祟りたくなる神が混じっていたため……神託は過去にない規模の対象者に下され、飛び起きた皆が「畏まりまして」とひれ伏した。








「ねえ、すごく大勢に神託が降りたらしいんだけど、私だけ誰も来てくれなかったわ」


 しょんぼりしながら、アイリーンは膝のココに話しかける。ちらっと視線を合わせ、また目を閉じた神狐は、内心でぼやいた。あれは君への好意なんだけど、逆効果になってる気がするよ。


『当事者には神託が降りな……むぐぅ』


 うっかりバラしかけたネネが、蛇神ミミに締め上げられる。子犬が蛇に襲われているように見えるが、神々の戯れなので放置が正解だ。アイリーンはきょとんとした顔で首を傾げた。


「当事者?」


 私に関する神託? だったら皆も教えてくれたらいいのに。巫女はもちろん、神職はほとんどが神託を受けた。父や兄まで夢に見たというのに、私だけ除け者だわ。むっとするが、過去に言霊で失敗しているアイリーンは、吐き出したい文句をぐっと我慢した。


 幼い頃、物の判別がつかず人を傷つけた。あの言霊事件と、その後の家族を巻き込んだ暴走が、私の大きな罪。絶対に同じ失敗を繰り返せない。もう誰も傷つけたくなかったし、家族が嘆く姿も見たくないから。


「……いろいろ不満だけど我慢するわ。だから、話せる時に教えてね」


 いつまでもネネに絡みつくミミを引き剥がし、ココと一緒に膝に乗せた。慌てて駆けてきたネネが、足に擦り寄り寝転がる。ごろんと腹を見せる子犬を撫でながら、アイリーンは譲歩を口にした。

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