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第111話 本人以外からの告白

 このところ、白いフクロウを見かけるのだけれど。窓に肘をついて、外を眺めた。夜になると現れる。今夜も現れるだろうか、いずれの祠の神様だろう。


 アイリーンもすべての祠を管理し、記憶しているわけではない。知らない神様、今まで縁のない神様もいた。その中のどなたかだと思うけれど。外から見える窓枠にお菓子を用意し、アイリーンは目を輝かせた。


 仲良くなれるといいな。そんな純粋な気持ちで、月光降り注ぐ庭を眺める。綺麗に手入れされた庭の木々が、風に葉を揺らす。ふと、風が静まった。


「あっ」


 声が漏れる。慌てて口を手で押さえた。白いフクロウがいる。じっとこちらを眺め、こてんと首を横に向けた。フクロウは驚くほど首がよく動く。まるで別の生き物のように、後ろを向いたり横に傾いたりした。フクロウの目がきらりと光る。


『それは、妾への供え物かぇ?』


 不思議な甲高い声は、女性のようなイメージを与えた。アイリーンはドキドキしながら、お菓子の器を差し出す。


「ええ、気に入ってもらえると嬉しいわ」


 足元に座る狗神があふっと大きな欠伸をした。部屋の奥では、神狐が座布団に寝転んでいる。その様子を確認し、開かれた窓まで近づいてきた。手を伸ばしても届かない距離まで下がったアイリーンは、畳に座って様子を見守る。


 フクロウ姿の神様は、ツンツンとお菓子を味見し、満足そうに喉を鳴らした。と思いきや、大きく口を開いてお菓子を平らげていく。気に入ってくれたらしい。胡桃がふんだんに使われた練り菓子なのだが、食感も風味も好きなお菓子だ。


 ぺろりと平らげて、フクロウは部屋の中を眺めた。ひょいっと入ってきて、畳の上を跳ねるように移動する。神狐ココは尻尾を引き寄せ、警戒した。その手前でくるりと向きを変え、フクロウは狗神ネネに近づく。ネネは興味津々で顔を近づけた。


『久しぶり?』


『ほぅ、覚えておったか。瘴気に呑まれ、記憶も消え失せたかと思うたが』


 ネネは顔見知りのようだ。雑談を始めた。その様子を笑顔で見守るアイリーンは、おおよその見当をつけた。縁結びの神様だわ。紫陽花の祠に昔住んでいて、引っ越した女神様がいる。その方かもしれない。


 祠を譲られたのが、白蛇神のミミだった。そういえば、ミミはどこへ行ったのかしら。きょろきょろと室内を見回すと、後ろに敷かれた布団で休んでいた。さっきまでいなかったわよね?


 アイリーンの疑問を逸らすように、白フクロウの女神は話しかけた。


『契約はせぬが、力を貸そう。なにしろ、そなたはアレらのお気に入りゆえ』


 アレらと曖昧にぼかした方々が、神様なのは間違いない。何か頼まれたような言い方ね。小首を傾げるアイリーンへ、フクロウは淡々と話を続けた。


『胸に秘めたる恋心を成就させるのが妾の役割、維持するのはそなたらの努力じゃ』


 ルイに恋している自覚が出たばかりのアイリーンは、心当たりに頬を染める。赤くなった顔を隠すように、両手で覆った。


「っ、叶うんですか?」


『両思いゆえ、繋ぐのは難しくあるまい』


 りょうおもい? つまり、ルイも私を好き。真っ赤になったアイリーンは、高鳴る鼓動で話の続きが聞こえなくなった。

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