乳母車
午後の公園。
いつも見かける女。
ベンチに座り、乳母車の赤ちゃんをあやしている。
日除けに隠れて、赤ちゃんの顔は見えないが、女はもみじのような手を握ったり、ほっぺたをツンツンして笑っている。
女は決して若くはない。
だから、乳母車の赤ちゃんは孫かもしれない。
女は、乳母車から赤ちゃんを出した。
「よしよし」
女は、赤ちゃんを抱っこした。
ピンクの服を着ているから、女の子だろう。
私は文庫本に栞を挟むと、腰を上げた。
帰り際、抱っこされた赤ちゃんの顔を覗いてみた。
それは、笑っているリボーンドールだった。