揶揄い
この高校は県内一の進学校。しかし進学校とは言っても選抜クラスと進学クラスと2つのクラスに分かれている。選抜クラスは本館に、そして進学クラスは北館に教室がある。つまり、本館と北館は渡り廊下で繋がってはいるが、他の館に行く理由がないので選抜クラスと進学クラスはほとんど関わりがない。俺たち進学クラスはただ窓から眺めるか、部活を通してでしか選抜クラスと関わる方法がないため、今年は部活に入る人が例年より増えたらしい。なぜって?理由は簡単、かの噂の○○○○が選抜クラスだからである。そんな○○○○が数日前、本館から中庭の上空を通り、北館にある俺の教室に紙飛行機を飛ばしてきた。理由は分からない。が、それから紙飛行機が飛んでくることはない。そんなこと考えて、ふと本館の方を眺めると窓のサッシに見慣れたものが刺さっていた。紙飛行機である。少し驚きながら窓の外を見ると、あの女と目が合った。おそらく○○○○だろう。その後○○○○はなぜか少し慌てたあと、またあのジェスチャーをした。この紙飛行機を開けってことか。渋々その紙飛行機を取り、開くとなんとも腹立たしいことが書いてあった。
「△△△△君はいつも授業を聞いてないみたいだけど大丈夫?今度、私が勉強教えてあげよっか?」
いや余計なお世話だわ!というかこの紙飛行機を飛ばしているお前はちゃんと聞いているのか、と書いて送り返してやろうかと思ったが、さすがに堪えた。なんたって赤の他人にそんな怒ってもどうしようもないし。少し落ち着きを取り戻し、そんな挑発には乗らないと言わんばかりのすました顔で○○○○を見ると、なぜか大爆笑している。あ、やられた。そもそも紙飛行機を開く前から見られているとしたら、紙飛行機の内容を見て怒っている人が強がってすました顔をしているように見えているだろう。俺は恥ずかしくて机に顔を伏せた。しばらく伏せたままにしていると、頭に何かが刺さったような痛みがした。顔を上げると机の上に二通目の紙飛行機があった。今度は○○○○の方向を見ずに紙飛行機を開くと、
「ちょっとからかいすぎたね、ごめん!
またあとで直接謝らせて!」
と書いてあった。これを読み終わるのと同時に授業の終わりのチャイムが鳴った。慌てて窓の外を見たが、もう○○○○らしき姿はなかった。この授業は今日最後の授業だから直接謝らせてとはどういうことだろうか。今日、俺は部活の選抜試合があるから教室で待っている時間が無いのだか...。少し申し訳ない気持ちになりながら、帰りのSTが終わったと同時に教室を出た。