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1月6日金曜日の春日部駅

作者: 十川潤

 快速電車が春日部駅に停車したときには午後十一時を過ぎていた。

 私は暗い気持ちを抱えていた。スマホを眺める気力もなく夜景を眺めていた。家に帰ればまた仕事が待っている。朝から朝まで働く生活が続いていた。少しでも寝ておこうと目をつぶっても、今日あったいやな出来事を思い出してしまう。私はただ、窓の外を見ていた。

 今日は一月六日金曜日だ。世間は三連休前の花金だ。だが私にはしばらく休日はない。


 春日部駅のホームには小さな立ち食いラーメン屋がある。電車はそのラーメン屋のちょうど真横に停車した。

 私と同じぐらいの歳、おそらく二十代であろう青年が、カウンターに立っていた。私は不思議と目を惹かれた。会社帰りなのだろう、スーツにコートを羽織って、地面に置いたビジネスバッグを両足で挟んでいる。その横顔がひどくつらそうに見えた。うつむいてテーブルを見つめ、ラーメンができるのを待っている。外は冷たい風が吹いている。青年はコートの襟を立てて、ただラーメンを待っている。


 青年の姿を見つめながら、電車よもう少しだけ停車していてくれと願った。なぜかマスクを取った彼の顔を見てみたかったのだ。


 そのとき、店の親父が青年のテーブルにラーメンを置いた。青年はお辞儀をするとマスクを顎の下までずらし、すぐに一口すすった。青年が一瞬、微笑したように見えた。

 そして電車が出発し、車窓は夜の街を映した。私はなにか、先ほどよりも心が軽くなっているのを感じている。ラーメンを食べた青年の顔を見たとき、私の頭に渦巻いていた鬱屈を、束の間、忘れることができたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。 気が滅入るような、日常の繰り返しでも、ちょっとしたことで、気持ちが軽くなることってありますね。 ふとしたことを感じる大切なことだと思います。  ありがとうござ…
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