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妖怪「調味料ふりかけババァ」に転生した話

作者: 夢園 梨楽

やることないから書いた

転生・・・分かる。日本では流行りだからな。

妖怪に転生・・・まあまだ分かる。

妖怪「調味料ふりかけババァ」に転生・・・全く分からん!



普通転生ってさぁ、何が目的なのかの説明のチュートリアルがあるか、

赤ん坊として生まれる所からスタートするのが相場だよね。

何の説明も無しに和服の中年のオバサンでスタートとか聞いたことねーわ。

事前知識なしで放り出されて何をすればいいのかさっぱりだ。

今分かっていることはただひとつ。

自分が妖怪「調味料ふりかけババァ」であるということだけだ。

手持ちの道具は、自分の意思で出し入れ自由な調味料の瓶2つのほかに

転生直後に、自分が何者が自覚する前に見知らぬおじさんから渡された、この新人研修のご案内と書かれた紙だけだ。

もしかしてこの研修がチュートリアルの代わりってことか?


新人研修の紙に記載された場所は、公民館的な施設だった。

案内されたパイプ椅子の席に座ると隣のじいさんが話しかけてきた。

「あんた、新人の妖怪ですかい?」

「え、ええ。まあ。」

「吾輩もです。」

吾輩なんて単語使う奴、ネコとデー〇ン小暮閣下以外で初めて会ったわ。

「申し遅れました。

 吾輩、妖怪『公園で転んだから脚についた泥を落とそうと公園の蛇口をひねったら水の勢いが思いのほか弱かったジジイ』

 と申します。そちらは?」

なんだその特殊すぎる状況限定の妖怪。

「えっと、私は妖怪『調味料ふりかけババァ』と申します。よろしくお願いします。」

「なるほど、調味料ですか。変わった妖怪ですなぁ。」

お前ほどじゃねーわ。


しばらくすると、部屋の前方のテーブルの所におじさんが入ってきた。新人研修の紙をくれた妖怪だ。

「おはよう、新人諸君。

 我は『床にこぼした食べ物が何故か行方不明になるおじさん』だ。」

あの稀に起こる謎の現象はお前の仕業かよ。

「さて、君たちが一番知りたいことはおそらく、何をすればよいか、ということであろう。

 簡単に言ってしまえば、自身の名前の通りの行動をすればよい。ただそれだけだ。

 地道に仕事を続けることでスカウトの目に留まりやすくなり、

 プロから指名を受けたり、あるいはメジャーにスカウトされたりもする。」

妖怪のプロとかメジャーって何だよ。

「条件が難しくて活躍できるか不安な者も少なくないだろう。

 だが、心配することは無い。

 あの『放置自転車にゴミが集まる爺』も『マフラーをすると首がかゆくなる姉さん』も

 『カカトがカサカサでストッキングが伝線しやすい兄さん』だって

 厳しい条件を乗り越えてメジャー契約を勝ち取ったんだ。苦しい時はそれを思い出せ。」

誰だよそいつら。それと、そいつらの条件って楽な部類だろ。隣の蛇口の水ジジイに謝れ。


「最後に、諸君らに渡す物がある。『座布団運びから昇進できない』くん!皆さんに例の物を!」

着物を着た爺さんが奥の方から、かしこまりました、と言いながら登場し、

各自にファミレスの店員を呼ぶボタンみたいなボタンとA4サイズのタブレット端末を配り始めた。

「そのボタンは切羽詰まった時に本部に応援を要請するためのボタンだ。

 本当に厳しい状態になったら迷わず押してほしい。

 だが、ひとつ注意して欲しいことがある。

 普段我ら妖怪は人間の眼には見えないが、このボタンを押すと見えるようになってしまうという点だ。

 押すときは姿を見られることを覚悟するように。」

目撃情報がある妖怪はみんな、何らかの事情で切羽詰まってたってことか。

妖怪が切羽詰まるってどういう状態?実際にどんなケースでボタンが押されるんだ?

「ちなみに、我が知る限り100%、ボタンが押されるのは不注意によるウッカリ事故だ。

 くれぐれもカッパさんのようにウッカリを多発して有名妖怪にならないように気をつけろよ。」

謎は全て解けた。

「その端末は、本部の端末にアクセスして自分の獲得ポイントと妖怪ランキングを知らせるアプリがインストールされている。

 大体3秒くらいで反映してくれる優れものだ。あとは現場で確かめて欲しい。

 以上で我からの研修は終わりだ。諸君らの健闘を祈る。」

今更だが、なんで一人称が"我"なんだ?お前は封印されし古代の精霊か。


というわけで今、私は買い物から帰ったばかりの40歳ぐらいの独身男性の家に潜入している。

こういう時に相手を女性にすると、ポリコレとかいう思想テロ集団が発狂するからな。


現在私の手元にある道具を確認する。

手持ちの調味料は"花椒"と"チャイブ"の2つだ。

どっちも馴染みが無い上に1つ目の奴にいたっては読み方さえ分からん。

出来上がった料理が東洋風か西洋風かによってどちらを使うか決めることとしよう。


男は買い物袋から様々な食材を取り出していく。

エシャロット、アスパラ、ニンジン、シイタケ・・・。意外と種類が多い。

男は野菜を順番に丁寧に洗ってカットしていく。

シイタケは洗わない所を見ると、料理には慣れているのだろう。

油をひいたフライパンにカットした野菜を火が通りにくそうな方から順番に投入していく。

シイタケが忘れ去られているかのように隅に放置されているのは触れないでおこう。

野菜を箸で混ぜながら中火で炒めていき、

野菜におおよそ火が通ってくると塩コショウを振り、男は小さな声でつぶやく。

「完成!」

えっ、これで完成?どう見てもまだ序盤なんだが。


さて、ここからが仕事の時間だ。

男がリビングで赤ワインの準備をしている隙に

フランパンの前に立つ。

あんまり調味料を入れすぎて味を変えすぎてしまうのはさすがに気が引けるので、

2つの調味料を1回ずつだけ振りかけることにした。

小瓶をさかさにすると、漢字の方の調味料の瓶の底に文字が書いてあることに気が付いた。

『フォアジャオ』

調味料の読み方だろうか。なんでフリガナだけ底なんだ。


仕事は終わったので、配布されたタブレットを確認してみる。

妖怪って日本にどのぐらいいるのだろう。

神様が八百万の神っていうぐらいなのだから

妖怪はそれよりも多い1,000万ぐらいいるのだろうか、などと考えながらタブレットを確認する。

『今月の獲得累計ポイント:2P   現在の順位:2億8,231万721位』

妖怪多すぎるだろ。スマホより普及してるじゃねーか!


ふと仕事のターゲットにした男を見ると、いつの間にか完食していた。

調味料を入れすぎて味が損なわれていないか気がかりだったが、

この様子なら大丈夫だったようだ。

男はワインの収納庫に赤ワインのボトルをしまうと、再び台所に立ち、シイタケを手に取った。

「さて、デザートでも作るか。」

それデザートだったんかい。


終わり

株式市場って正月に閉じる必要なくね?

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