公園にて思考する
「これからどうしよう。」
途方もない悩み事に土管の上で頭を抱えていると何処から来たのだろう、いつのまにか一匹の黒猫が手元へすり寄ってきた。真っ黒の綺麗な毛並みで、黄色の瞳がきらりと光っている。
首元には赤い首輪に鈴がついていて、誰かの飼い猫を示していた。
人見知りをしない人懐い猫はこちらを見て俺の手をぺろりとする仕草をした。
「お前は俺の事見えてるのか。」
ぶつかることない俺の手にすり寄ってくる猫の仕草がなんとも愛らしい。
動物は霊などに敏感という内容を聞いたことがあるが、それはあながち間違いではないようだ。
誰からも相手にさせることなく一人でいたせいか、猫の気まぐれだとしても自分の姿が見えることに胸が熱くなる。
「お前はどこから来たんだ?」
だなんて日本語分からないよな。と思いながらも話しかけてみると、にゃーと丸い目をこちらに向けて間の抜けた返事を返した。いろいろと話しかけていると、突然猫がクンクンと嗅ぎ出し俺にくるりと背を向けた。
猫は気まぐれだなと思いつつ、猫の様子を見る。
猫は中央にあるバーゴラに覆われたベンチへとコロコロ鈴を鳴らし歩いていく。
はっと、そこで俺は気づいた。
人っ子一人いないと思っていた公園に、何者かの気配がすることに。パーゴラの影から動く何者かの動向に注目していると、その正体が日の光に照らされる。
猫の鈴の音と共に目の前で、色素の薄い栗色の長い髪が風に揺れた。
猫が向かう先に現れたのは、白のワンピースを着た綺麗な少女だった。