公園にて時を待つ
「おかしい。」
土管の上に座りながら周平は現状に対する感想をつぶやいた。
緑が生い茂った昼の公園。
六階階建ての団地に囲まれた、建物同士の隙間を埋めるように作られた小さな空間。公園を囲むように植えられた木々と建物の隙間から覗く小さな太陽の光が、ぼんやりと周囲を照らしている。
正面奥には土管が三つピラミッドのように並べられていて、端には唯一の遊具であるブランコが一つ置いている。中央にはツタが生い茂った鉄製のバーゴラが、老朽化したベンチの日差し除けとしてさらなる影を落としている。
その薄暗さもあってか、天気の良い昼間の公園だというのにも関わらず、子連れどころか一切の人影はない。
しかし、人目に見えない彼はその公園の土管にずっと腰かけていた。正確に言えば腰かけていた、というのは正しくない。物体に接触できない幽体の彼は、座っているように見せかけた体制で空中浮遊していた。
周平が死んでから一か月。
何事も起こることなく家の近所をさまよっているううちに、霊体の動かし方にもすっかり慣れてしまっていた。最初は飛ぶという感覚になれなかった周平だが、試行錯誤の結果、今や幽体を自由自在に操ることができるようになっていた。それほどまでに、時間は既に経過していた。
これからの事を考えれば考えるほど気分が憂鬱になっていく。
幸い、生きている時とは違って衣食住に困るということはないし、受験勉強をしないといけないとか、何の義務もない。この状況はある意味ラッキーなのかもしれないが、周平には一つだけ痛みを味わうことがあった。
それは両親が涙を流している姿を見ることだった。
周平の家族は円満で、父は周平が間違ったことをしていれば叱ったが優しく接してくれたし、母はすこし心配性だったがそれは周平を思っての事だと分かっていた。
俺の遺影を見ながら悲しみに暮れる両親に「悲しまないで。」と一生懸命話しかけたところで、何一つ伝わるとがない。
そう、一生伝わることはないんだ。
俺はそうして辛いことを忘れようと家から離れ、自身が成仏するのをこの人気のない公園で待っていた。