『煌々芸術祭』
『煌々芸術祭』
㈠
天井から椅子が降ってきて、町中は大混乱になった。まさにその、カオスの時、煌々芸術祭が始まった、と言われている。異次元の次元で、自由を不自由と勘違いした我々は、芸術の何たるかを知らずに、その椅子と言う椅子を、捨て去った。
㈡
ところが、この椅子こそが、芸術であったのであって、人を、或る場所に留めておく、と言う芸術であって、町中は木々ばかりの荒野となり、椅子は燃やされた。その火の中には、小説や詩や評論や哲学の本、また、音楽を奏でる楽器まで、投げ込まれたという。
㈢
この、芸術の破壊を、我々は、人々と一緒に、実は悲しんでいたのだった。すると、燃えさかる火の、頂点が、煌めいたと思うと、その瞬間、芸術の神が現れて、地上に雷を落としたとされる。困惑した人々は、一斉に、火を消すために、水を掛けて、神の怒りを沈めた。すると、燃やした筈の、全てが、元通りになって、其処に残存していた。これが、煌々芸術祭の、一端である。