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大地とのつながり

「ケイト、これまだある?

すごくおいしい。

ちょっとだけテーブルに出したままにしててもいい?」


小さな紫色のフルーツを入れて焼いたお菓子を、マゥは殊の外気に入ったらしい。

めったにお菓子など作らないケイトが、雨で外に出られない日に作った焼き菓子。


「いいよ。

だけどなんでもほどほどにしないと。

お菓子でお腹をいっぱいにするのも…ね」


ケイトは一応そう言うと、テーブルの上の菓子皿に焼き菓子を足した。

残っていたのをすべて出したので、保存袋は空になった。


それからはヘルゥが遊びに来てお昼ご飯を一緒にいただき、午後には村の男性も加わり甘味料にするフルーツを取りに行く。

女性たちがそろそろなくなるから補充してほしいと、何度か言っているのを聞いたことがある。

マゥは甘味料になるフルーツがどんなものなのか見たことがなかったので、今回ヘルゥと一緒に同行することになった。


甘味料にするフルーツはニコと言い、化粧水に少し足すとほどよくとろみがついて保湿も補えるのだ。

マゥは日本にいる時自分で化粧水などを作った経験があり、その知識は村の女性に重宝されていた。



パウの実は必要な分だけ籠に入れて運ばれた。

ヘルゥは歩き疲れたので、荷台の中でパウの籠と一緒に座っていた。

村に到着し各家庭で必要な分のパウを分けてから解散する。

ケイトの家では2つ、確保した。


2つの内一つは甘味料にするために台所に吊るされた。

一週間ほど吊るして、ほどよく水気を飛ばす。

もう一つは半分を保湿用にカットしてざるに乗せた。

下にボウルをおいておけば、うまい具合に保湿液をとることができる。

余れば液体甘味料になる。

残った半分はヘルゥとケイト、マゥのおやつとなった。


まず薄く切ったスライスは浅いざるの上に並べられ、また別のものに加工される。

残った果肉をまるでメロンのようにかぶりついて食べた。


「フルーツがあるとほっとする」


マゥがヘルゥの方を見ながら言った。


「どうして?」


「甘いものを食べたくなっちゃうんだけど、お菓子よりもフルーツの方が罪悪感が少ないでしょ?

最近無性に甘いものが欲しくなっちゃって…食べ過ぎなのよ」


マゥは笑いながら返事をして、ケイトを見た。


「ケイトが作ってくれるお菓子がおいしいの」


そういうとヘルゥに菓子皿にあった焼き菓子を勧めた。

ダーフィへのお土産にしたいほどおいしいと喜ばれ、持ち帰り用に少し包もうと思ったところで皿に乗ったお菓子がもう最後だということに気が付く。


「私、そんなに食べてたんだ。

ちょっとびっくり…太っちゃうかも」


マゥは両方の手でほっぺを包む。


「大丈夫だよ、マゥ。

マゥがここに来た時となんにも変わってないよ。

大地がマゥと仲良くなりたがってるんだよ。

そういう時はいっぱい食べるといいってじいじが言ってた」


ヘルゥが笑顔で言った。


「マゥ…マゥはまだここに来て数か月しか経っていないよね。

マゥは気づいてないだろうけど、マゥの身体は食べるものでこことマゥをつなごうと一生懸命なんだ。

意識がそう気づいていなくても、身体は一生懸命この土地とつながりを作ろうとしている。

そしてこの星を味わいたい、楽しみたい、馴染みたいって思ってがんばっているところなんだ。

身体が欲しいというものを身体に入れてあげたらいい。

そのうち身体の方が満足して”もういいよ”って言ってくると思うよ

ヘルゥの言ってるダーフィの言ってたことっていうのも、そういう事だと思うよ」


「そういうもん?」


「「うん、そういうもん」」


2人同時に返事をされ、思わず3人で笑う。


「僕も昔ダーフィに教わったんだ。

食べ物にあるエネルギーはかみ砕いて光りに戻し、身体に取り入れるんだって。

光りを取り入れて太るなんてこと、あり得ないよ」


ケイトはいつもと変わらぬ穏やかな笑顔で言った。

マゥは話しを聞いた後なんとなく安心して、残った焼き菓子をすべて薄い布で包んでヘルゥに渡した。

なんだか身体が「もういいよ、十分だよ」って言ってるのが聴こえた気がした。


私も何かを食べる時、身体に入りエネルギーが光りに変換されるところを想像します。

なぜかマゥとは違い、エネルギーがカロリーになってしまうのが悩みです。

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