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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『創造世界の道化英雄《ジェスター・ヒーロー》著・帯来洞主』
99/126

作者は経験した事しか書けないという意味、主人公の立ち入りから作者を追う。

「ちょっとー! エルデリッジくん、殺されちゃってダサダサなんだけど!」

 

 狭間の空間で暖かいお茶をだす桃色髪の女性。

 知る人ぞ知る、初代古書店『ふしぎのくに』店主ダンタリアン。

 

「いやぁ、店長。何者ですかあの人間。反応した瞬間自分、死にましたよ?」

「あぁ、クリス坊やのところのねぇ……異品とやり合えそうなチート共よ。ところでセシャトさんのところにエルドリッチくんの事を覚えている人からのDMがあったらしいよ。アタシ超、驚いたんだけどー!」

 

 補足としてエルデリッジくんは何回か前に登場した新キャラなのだが、正確にはかつて存在したHP古書店『ふしぎのくに』において初代店主ダンタリアンに相槌を打つしもべというか従業員として存在していた。

 

 まさに二十年ぶりくらいの共演となる。

 

「でも死んだかいあったでしょ? 面白い物語を知れたじゃないか! あとちなみにアタシもう店長じゃないから! 無職! ウケるー!」

「まぁ、自分も店長の従業員じゃなくて不死身をいいことに守り屋してますしね。にしても舘上さん。刑事なのに情けなくないですか?」

「まぁ、どちらかと言えば真坂部デカくんの方が、本来であればおかしなわけで、舘上くんの方が人間らしいとも思えるけどね。実に道化英雄の戦い方は面白いね。アタシ達側に思えるよねー?」

 

 鴉の刃物をマジックの道具に変えて事なきを得る。物語展開におけるチートの応用であるのだが、主役になれないキャラクターが主役になるという制約がある以上道化英雄の行動はまどろっこしい物になるのだろう。

 

「店長、串刺しマジックって剣じゃなくて箱の方に細工があるんじゃなかったでした……?」

「そうだねエルデリッジくん、アタシは賢い子は好きだけど、さかしい子は嫌いだよ。うん、まぁ今は視覚トリックの方が多かったけど、かつて遠くから見てすぐに道具もしまってしまう見世物小屋みたいな時代は剣側に細工があった物も存在したよ。ただこれは怪我をしやすいから段々なくなったんだけどね」

 

 串刺しトリックで食べていっている人もいるだろうから、詳しくは書かないが簡単に要約すると、視覚効果を使って普通に考えたら絶対に回避不可能と思われる箱の中に入り、実は見た目以上にスペースがあり緻密に計算された角度で剣が刺さるので箱の中の人は十分余裕でしたという感じである。

 本作道化英雄でのトリックも実際存在はするが、案外曲がる剣、曲がらずに刺さる時があるのだ。死にはしないが怪我をするのでこの手の仕掛けは黎明期時代、作品のキャラクター時の認識とも思えばあながち変でもないの顔しれない。

 シロという存在が何者なのかと深読みしてしまう程度に……

 

「アーツという連中は自分の推定スペックを知っているわけじゃないですか? これって矛盾の矛盾の矛盾ですよね。作品内の作品における設定上システムに対して本作の世界観システムの」

「エルドリッチくんはややこしい読み方をするね。所謂あれなんだよ。無限はない。事は全て有限でできているという物かな? ヒバチやつららなんかは要するに本作でもあるように作品時期的には、自分の限界なんてない! 的なお熱い設定を持っているのかもしれない。だけど実のところそうじゃない。この話をしてしまうと一週間じゃ足りない。シンギュラリティの話までしないと行けなくなるからね。要するに、キャラクターは作者を超えられないからさ。現時点では存在自体は不明だけど、真城創伍は創作者側、本来脇役にもなれない大いなる黒子なわけだよ」

 

 作品の世界は無制限だろう。なんなら無限という概念が存在すると言ってもいい。しかし、その世界は作者が扱える物なのか? と考えると一概には言えない。所謂、作者は経験した事しか想像できないという物に近い。たまにこの議論をすると異世界に行った事がないのに異世界の作品を書いているという日本教育を本当に受けたのだろうか? という回答をする連中がいるが、逆に問いたい。

 知らない地に行ったことがないのか? あるいは、異世界物の作品を読んだ事や閲覧した事がないのか? 文字が……読めないのか?

 異世界物の原点を説明すると、遠く離れた地に来た人が、大袈裟に故郷の人々にそれを誇大して語ったり物語にした事が起源である。

 そう、確かに最初の一人はきっと異世界に行ったのだろう。金閣寺よりも小さい金色堂一つ見ただけで、黄金の国ジパングとか言ってしまう人もいるくらいなのだから、最初の衝撃は相当な物であったと思う。

 が、この黄金の国ジパングですら経験している。あるいは聞きづてに書いた物であり、経験した事以外はやはり創作できない。

 

 作者という連中はクリエイティブな反面インプットがなければ無能であると言っておこう。そしてなんでも否定する異世界に行った事がないが異世界物を書いているとか言ってしまう連中は残念ながら創作をするという才能がないと、師匠ちゃんという方が仰っていた。

 

 というと完全否定してしまうので、なんでもできてしまう主人公と作者は自分を重ねているのでしょう。自分は無から作品を生み出せたんですが、何かやっちゃいましたか? 的な感じだろうか?

 

 さて、では主人公と自分を重ねているという視点から見てみたいと思う。

 

「このあたりは凄い暗黒のお話になるんですが、店長いいんですか?」

「アタシは揉めてなんぼの古いドリームビューワーで作ってた初代『古書店ふしぎのくに』店長。だーん! たーり! あーん! よ。作品を読み込む時はやはり主人公の立ち位置から作者を追うというのは案外大事よ」

 

 主人公から作者を見る際、自分はこうでありたい。あるいはこんな友人がいればいいな等。本心のような物が見えてくる。逆にヒロインや、乙女小説の男性キャラクターは作者の性癖が垣間見れるわけだが、真城創伍から見えてくる物は大きく分けて四つ、負の感情は卑屈や悲観、あるいは諦め。正の感情は成り上がり、叩き上げ。

 これは無能な上司や教師、親などがいる人に感じやすい感情に分類され、現在の創作界隈にも通じるところがある。やはり本作のとある部分に関してのアンチテーゼという色合いは強いのだろう。

 

「なるほど、話は変わりますが、どうして鴉みたいに朧車は逃げなかったんでしょうね? というか、どうしてこのやられ役という連中は自らが滅びる事を厭わずに設定に殉じるんでしょうね」

「それがこの作品世界の設定における力だからじゃないの? 特に妖怪って理や現象の概念じゃない? 朧車ってちなみにどんな妖怪か知ってるかい?」

「いえ……」

「うん、実際どんな妖怪かはあまり知られてないんだよね。インパクトと知名度の割になんなのかは不明なの、ただし牛車なんて金持ち貴族しか持っていないからそれにちなんだ皮肉か何かだと思うけど、要するに朧車は設定が少ないの、さらに本作のオボロ・カーズ君に至ってはもはや意味不明すぎるでしょ? 誰にも噂されないだろうし、はっきり言ってこんな有能なリサイクルマシーンがいれば解体業は雇うんじゃない? 噂になりえない……まぁ要するにオボロ・カーズ君は退場の時という事だよ。子供の頃の創伍君が考えたにしてもヒューマンティス君に比べて、熱量が残念だね。ザコ!」

 

 ひどい言いようである。W.Eの強者達によるタコ殴りにて呆気なく、創伍によるチートにてトドメを刺されるわけだが、これも一つの韻を踏んでいる。

 ヴィランはいつだって英雄を引き立て、盛り上げるのが英雄より上手いのだ。きっと一部の読者に愛されたであろうエセ外人、オボロ・カーズは自らの仕事を終えた。

 

「にしても、店長。いえ、元店長。温泉回的な物ってどうしてもやらないといけないんですかね?」

「どうしてもやらないといけないんじゃない? なんせ、この作品は創造世界という設定の仕組みを根幹とした物語なんだから、温泉回の日とか水着回の日とかいう祝日が創造世界にはあるかもよー! なんせラッキースケベですら韻を踏まされているじゃない」

「そうなんですよね。事実、乱狐などのキャラクターもそれはそういう物だと受け入れている節がありますし、これがこの作品の肯定の強制力という奴ですか、侮れないですね」

 

 一人、アイナは生娘のような反応を見せるわけだが、実際生娘なのかもしれないが……この反応ですらお約束という物で、創造世界はお約束が摂理なんだろう。実に羨ましい限りである。

 

「マシロズ・デブリ、子供の頃の落書きは自分の世界で、自分を守る物……とは言い過ぎかな、まぁアイデンティティの形成だよね。子供ならやらかしそうな、無敵とか最強とかって言う呪いみたいな説明がついたのが後々出てくるとなると厄介そうだよね」

「と言いますと?」

「この作品の創造世界は想いの強さが物をいうんだろう? 幼い頃の真城少年が最強だの無敵だのと記載した存在はまさに真城少年が当時。自分の全身全霊をかけて生み出した創作物と言えるだろう。まさにこいつはマシロズ・デブリどころじゃない。マシロズ・アバターだ。当初はシロがそうなのかとも思ったけれど、それは道化英雄なんかじゃない、真の英雄。まさに主人公だよ。真城創伍という創造神が生み出した究極の英雄だ」

 

 さて、鴉という存在の行動理念から、万が一この子供のとんでも設定、無敵最強キャラに当てはめるとすると……

 

「あぁ、創造主(神殺し)をやってのけるという事ですか」

「そうだね。なんせなんの制約もなしに際限のない熱量を込められたキャラクターだ。物理も呪いも、なんなら道化英雄の因果律を変える力すらも通用しないかもしれない、たった一言“その時、ふしぎなことが起こった“とかそんな設定付きでね」

 

 興味がある方は調べてほしい。かつて、ヴィラン側の首魁が早々に絶対勝てないと言ってしまった特撮作品があったりする。あまりにも力を盛りすぎた結果の産物であり、メディア展開している物でもそんな感じなのだ。

 

「今後の第三章からそんな空気が少しばかりしてくるから楽しみだね。ところでエルドリッチくん、久しぶりに会ったんだからあそこいこーよ! 神田の線路下の飲み屋さん! 昔みたいに赤ホッピーまだやってるんだからー!」

「いいですね! 元店長」

『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』いよいよ次回紹介最終話となります。読めば読む程作者側が静かになっていく本作、読者さんも楽しめる中、作者さんも考えてしまう本作を5月最後まで楽しみましょうね! 

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