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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『創造世界の道化英雄《ジェスター・ヒーロー》著・帯来洞主』
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とある狙撃手と依頼主は暇潰しに暇潰しにWeb小説を読む

 古書店『ふしぎのくに』を監視している人物が二人。

一人は政府より依頼を受けて古書店『ふしぎのくに』とその関係者を調べていた。もう一人はバウンサーとして雇ったアジア系の優男、大きなカバンから狙撃銃を取り出して警戒。

 

「マイロード、普通の本屋に見えますが、私みたいな人間を雇う必要がありますか?」

「雇い主をマイロードと言うのやめてくれないか? 私は眞露じんろで、えっと君は」

「エルデリッジと」

「そうだエルデリッジ君だ。いやね? 古書店『ふしぎのくに』ってやつは忘れた頃にその名前が出てくるんだよ。店舗所有者はあの棚田重工という事になっているが……何か大きな裏があると思う。かつて平成初期にダンタリアンという女が開店したハズだが、二十年近く店を閉めていたのに2018年に突然リニューアルし今に至る」

「ほぉ、でも盗聴してても何かの物語のお話してるだけのようですが? あぁ、これかな?『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』、読んでいるのは“英雄達の集結“ってところですね」

「エルドリッチ君。もしかすると何かの隠語かも知れない、しっかりと裏どりをしていこう!」

「自分の業務外ですけどね、まぁいいか」

 

 W.Eのエージェント紹介、とんでもない力を持ったヒバチの再登場と、創造世界の貨幣について触れられているのだが……

 

「一円は一ワルド……エルデリッジくん、これはポンジ・スキームの匂いがするね。古書店『ふしぎのくに』はなんらかの詐欺を行おうとしているのではないかと思うのだがどうだい?」

「マイロード、失礼。眞露様、自分にはそのあたりの事は分かりませんが、この物語においては創造世界の住人は自分達普通の人間とは比べ物にならない性質を持っていて、このヒバチって人は名前の通り炎を使う人物でその特性を使って大道芸のような事をしておひねり集めている豪快なシーンを楽しんでいるだけにしか思えませんが」

 

 エルデリッジ君の言っている事が正しい。補足すれば、どこか憎めないガキ大将、兄貴キャラであるということを強調されている。

 そして真城創伍と同じく、読者も割と軽い組織なんだなと思えたに違いない。

 

「百歩譲って、そのままの意味だったとしても私はこの、“どでかい爆弾を抱えてこの世界にやってきた“このフレーズに関しては無視する事はできないね。なんらかの予告か、指示かも知れないだろう? 美人の嬢ちゃんという言葉にも引っかかるところがある」

「古書店『ふしぎのくに』と関わりのある世界的な指名手配犯、爆弾魔の一文字いろはの事を言っているという事ですか?」

 

 エルデリッジくんは古書店『ふしぎのくに』丸秘ファイルを見ながら果たしてそうだろうかと考える。

 ワイルドジョーカーとして知られているシロに対しても寛容で細かい事は気にしなさそうに歌舞伎の大見えを切って自己紹介してくれるヒバチというキャラクター性に関して、よくいる暑苦しく。

 漢字の漢と書いてオトコ。

 そんな彼であるが……

 

「え、エルデリッジくん、ヒバチという男死んでしまったよ!」

「そうですね。死んでしまいましたね。驚きました」

 

 以前、一話をかけてどんな人物であるのかという事を費やしたヒバチを再登場ラストで死亡させた。こちらも演出としてしっかり起承転結、物語の構成に倣いつつ読者の関心を誘う。

 実のところこのラストは物語の分岐を非常にさせやすい。W.Eという強靭な構成員と強固な組織をこの次の流れで魅せる事もできるし、当然ヒバチはもちろんその他のメンツも一切合切既に殺害され、その強靭かつ強固な組織の柱のような人物の突然の退場、最初から組織が殆ど機能しなくなる展開。2,000年代中期によく使われた絶望的幕開け方面にも動かせる。

 当然。

 

「エルデリッジくん、続きが気になって仕方がないよ」

「『ふしぎのくに』の人たちも読むみたいなので自分達も続いてみましょう。というか重いので狙撃銃下ろしていいですか?」

「うん。第一種戦闘配備から、第四種戦闘配備で警戒したまえ」

「……その作戦知りませんけどね。まぁとりあえず今は読書に集中しましょう」

 

 そして物語は、いかにW.Eという組織が規格外で強靭な人物と強固な組織であるかという前者の展開の演出であった。

 

「エルデリッジくん、ヒバチが生きていた事には正直ほっとしたが、果たして不死身という存在が敵に回った際君のような職業の人間はどうするのかね? 同じく不死身なんだろう?」

「一応、自分も仕事柄オールド・リッチーなんて大層な名前を名乗ってますが、自分の場合は代わりがいるという意味で、古くから既に死んでいる者。今はエルデリッジですよ。眉間に弾丸なんて通されたら死にますよ。でも、このヒバチとつららって女性が葛飾北斎によって生み出されたというのは少し興が湧きますね」

 

 話は脱線するが、葛飾北斎は芸に生きた狂人であった。弟子も数多くいたが、貧乏絵師である。そんな彼は異常なまでに不滅を求めた事は有名だろう。不老不死を求め、比叡山延暦の奥義について調べたり、トリカブトの気つけを使ったり、挙句の果てには富士三十六景から見てとれる富士見(不死身)信仰。富士山を不死山とかつては言っていたことからも由来する。

 

「厨二設定はウケなかったというか、当時は仏教の考え方が一強だったので不死程不幸な事はないという事で、敬遠されていたんでしょうけどね。ただし、葛飾北斎は歴史的に三番目くらいの厨二病を世に残した偉人でもあります」

「なるほど、ヒバチとつららは今の子にはウケが良さそうだけどね。仏教的にはアレな感じか、しかし厨二病というのは?」

「葛飾北斎、ペンネームが最後の方、画老狂人卍だったんですよ。頭おかしいでしょ?」

「うわ、マジかよ。北斎やべーやつだね? で、北斎が三番目なら一番目と二番目は?」

「世界一古い、ラノベ作家と言ってもいい織田信長の家来、太田牛一ですね『信長公記』とか信長様TUEEEEラノベです。第六天魔王とか普通の精神の人には書けません。二番目は徳川家康の家来全員ですね。徳川四天王とか、徳川十六神将とか人様の前には出せない病気の人じゃないと口に出しては言えませんね」

 

 要するに創造世界の住人はこういう熱いソウルを持った人たちの力により生まれるんじゃないかとエルドリッチくんが説明するので雇い主は頷く。

 

「本作は設定という物に紐付いて不老不死と言えど、その約定が破綻する場合もあると書かれているので、今の作者も、当時の作者もそうですが不滅はないと心の内ではわかっているのかもしれませんね」

「エルドリッチくん、なんかいい事言うね?」

「思いの外、この作品に惹かれるところがありますので、類似作品って多いじゃないですか? そういう作品の登場人物たちはチームを組んで仕事をするって子共の頃の両雄共闘ってやつですからね」

 

 しばし古書店『ふしぎのくに』の連中は、この対面の時間に対して、真城創伍が自分が自分でいられる場所について心地よく感じている事について、アンチテーゼであると語っていた。作品の中の組織という物は大概魅力的である。創伍がもしかすると創造世界出生かもしれない以前に、それだけ現実世界という物はストレスと隣り合わせであると少年か少女のような声で偉そうに語る人物。

 

「物語って大抵、一難あってまた一難、韻を踏むかのように物事が進むじゃないですか? これって実は仕事があり続けるリアルを知っているから生まれるって知ってましたか?」

「それはどういう事だい?」

「何もこの緊急事態は緊急事態というだけで、この時に都合よく普段起きない事が突然起きたわけじゃないんですよ。一日に何度も起きる緊急事態の一つです。仕事だってクソ忙しい時と、閑古鳥が鳴く時とあるじゃないですか? 閑古鳥が鳴いている時に、物語では大抵、温泉に行ったり海行ったりしてるんですよ。休みの頻度でいえば、物語の住人の方が働き詰めだったりするでしょ?」

「……なんというかとても悲観した考えだね」

「そうとでも考えないと、現実世界クソすぎて死にたくなりません?」

 

 完全に古書店『ふしぎのくに』について調べる事より本作を読み、世間話と考察を開始していることに依頼主はこう判断した。

 

「本日の調査はこれで終了にしよう。支払いは振り込んでおくので、また依頼するよ。楽しかったよエルデリッジくん」

「えぇ、自分もです、マイロード……ではなく眞露様」

 

 握手をして別れる二人、エルデリッジくんは依頼主がいなくなると、狙撃銃を構えた。

 遠くに見えるのは……

 

「フォーティーンエス! ……」

 

 女性狙撃手と人間のような見た目の何か……スコープを捉えた時にはエルデリッジ君の右目はフルサイズ弾に貫かれていた。

 

 エルデリッジくんを射殺した人物、重工棚田の秘書兼、教育係。沢城、そして観測役としてついてきていたノベラロイドのメジェド。

 

「沢城女史、死体が見当たりません。ヘッドショット後のハートショットも確実に命中。生存確率は極めて低く、生存していても助かりません……」

「う〜ん、メジェドさん。これはあれですね。ノーライフキングです。死なずの傭兵がいるとは噂で聞きましたが、社長のマブダチがいる古書店『ふしぎのくに』を狙う連中は撃滅せよ! との命令です。面倒ですので一文字いろはと、欄にも依頼をしておきましょう。社長の予測としては恐らくですが『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』を“ふしぎのくに“の人々が読むという事はそこから何か良くない物が出てきてもおかしくはないとの……」

 

 メジェドは量子コンピューターで今までの経験値から導き出された観測結果を解答する。

 

「そのオカルトの可能性は……極めて高いと報告します」

さて、本日はWeb小説を普段読まない方が読んだ時のお話ですねぇ! こちらは当方のお知り合いのお知り合いに読んでいただいた感想やらを纏めた物で、割と普通に読まれ、話は脱線されながらも我々とは違うフレッシュな方面から作品を楽しまれていました。サンプル数は相当少ないのですが、本作は一般ウケもしやすいので入りやすいですね! まだ五月は半分ありますので、皆さん『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』楽しんでくださいね! 今回も当然紹介小説のストーリーラインはありますよぅ! 新キャラ、エルドリッチさんは何者なんでしょうね!

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