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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『創造世界の道化英雄《ジェスター・ヒーロー》著・帯来洞主』
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脇役の魅力は作者の想定を越え、まさに一人歩きと言える話。

「あそこにベンツがあるだろう?」

「あれは俺の父ちゃんのベンツだ」

「そうか、その向こう側にコルベットがあるだろう?」

「あれは俺のカーチャンのコルベットだ」

「そうか、お前はタバコを吸うだろう?」

「タバコじゃない、リトルシガーだ」

「そうか、ところであそこにベンツがあるだろう?」

「あれは俺のベンツだ……あっ……」

「そうか、そうか、つまり君はそう言うやつだったんだな?」


 嘘をつき続けるだけの人生だった。そんな事をふと思った五月病。

 日は長くなった。喫茶さぼうるを出ると、近くのコンビニで買い物をして三人で古書店『ふしぎのくに』へと向かう。

 行儀が少し悪いが神様とハチドリはモナカアイスを齧りながら機嫌良さそうにしている。

 

「して、二人ともこのキ○肉バスターやキ○肉ドライバーとやらは何故隠語のようになされているのだ? というかなんだこれは?」

 

 古書店『ふしぎのくに』で公開する際は基本的にそのままの名称で表記するが、なろうや他サイトの著作権ルールは異様に厳しい。ただ、本作においては少し遊びの部分もあるのだろう。

 

「昔な悪魔超人という奴にアシュラマンという奴がおってな! おっと、ゆでたまごの話はまた今度にして、プロレス女子というのは古き良き萌えでの、最近は見られなくなったが、可愛らしい織芽が猛々しいプロレス技を使うという、ギャップ萌えだの、空手技じゃないのがこやつの良心か」

 

 チョコモナカジャンボを神様が食べ終わると、神様といえば、のパピコを取り出し、ぽきりと割ってその一本をハチドリに向ける。

 

「ほれ! パピコはシェアして食うのが美味いからの!」

「おぉ! これは実に素晴らしい嗜好品だ! 神様殿。創造世界という物、宇宙の拡大に等しい物だな。何かしらの設定ができあがればその世界で産声を上げるのだろう?」

 

 日本という国は特殊な国で、特に平成時代はアニメーションが発達しすぎた為、多くの子供は自分が世界の主人公であると本気で思っていた子供たちが非常に多い。なんなら、本作のように今、自分の人生そのものが何者によって生み出された世界なのではないかと考えた事がある元子供達も結構いたのだ。

 

「なるほどですねぇ! という事は本作は多くの平成時代当時の子供達が考えていた事の具現化……という事はシナジーですねぇ!」

「子供の頃の落書きを実現していくのが大人だからの。何か一つ、自分のしたい事が実現できれば大人になったなぁと思って良いわけだ。セシャトもハチドリも何か一つ夢を実現させると良い!」

 

 金髪のちんちくりんな神様はそう偉そうに言うわけだが、毎日セシャトに1000円の小遣いをせびり、特に何かをするわけではない。


「なぁ、セシャト殿に神様殿。真城の奴は、創造世界の住人と自分が似ていると考えておるよな? 要するに設定が近いという事は、真城の奴は創造世界の住人なのではないのか? 自分への認識も曖昧だしな」

 

 馬鹿正直に物語を読み込むハチドリは、世界の真理にでも気付いたかのようにやや恐ろしい物でもみたような顔でそう語る。

 実際、そうなのか、あるいはそう見せようと表現している部分である。神様とセシャトは微笑ましくそんなハチドリを見つめ、神様が面白い事を語る。

 

「本作のアーツという考え方、これはまさに日本古来の神道仏門の考えにも通じるよの? この国は世界一と言っても良いほど科学技術が発達しているが、オカルトという現象への信仰も世界一のレベルで信じている連中がおろう? 古来から病気が蔓延すれば百鬼夜行、台風地震火山噴火等は神々の怒りとな」

「ほ、殆どダーツではないか! 神様殿。まさか……本当に?」

 

 まさにハチドリが現実と物語がごっちゃになる子供なのだが、毎回これに付き合っている神様でもない。

 

「本作のヒロイン像は実に懐かしいの、プロレス技女子だったり、独特なイラストを描くヒロインだったりの。昨今はあまり見なくなったが、これもまた萌の定番だったの。しかしアイナの説明、詰め込んであるのぉ」

 

 そう、風呂敷をだいぶん広げてあるのである。当方でもこれ回収しきれる物語なんだろうかと何度かミーティングに話が出たものである。

 

「神様殿。吾輩も捜査官をしていると色々な情報がどんどん出てくるが、そんな物気にした事などない! その必要な時に読み直せば良いじゃないか!」

 

 しばらく読みながら、セシャトがそろそろ二人に、言わねばならないかと思った時、丁度赤信号で止まったわけで深呼吸。

 

「お二人とも、お気づきでしょうか? 制服を着たアイナさんとシロさん、両手に花です!」

「ほぅ」

「セシャト殿? いかがした?」

 

 主役になれなかった真城創伍が、気がつけばどうだろう? もう完全にラノベの主人公じゃないかという事にセシャトは語る。

 しかしである。

 そんなことよりここで気になるのは、システム部も予想していた通り、デカ。

 真坂部氏について……

 

 神様曰く。

 

「リアリストではなく、まごうことなきサイコパスだの」

「吾輩も銀河系の捜査官である。法治システムが崩壊したとしても、法の番人は最後まで本来は法に囚われるべきなのだが、恐ろしい男だな」

 

 真城創伍がサイコパスデカの銃に異能力で細工を仕掛けてことなきを得る。

 カートゥーンのようなオチで弾丸は玩具の銃にという事だが……

 

「このデカ、マジで弾きよったな……高校生相手に……引くのぉ」

「それも未成年の真城にとは。スペースギャングかもしれないな!」

 

 真坂部氏の真相に迫ろうとする姿勢には敬服の念に堪えないが、いくらなんでも目的の為に手段選ばなさすぎだろうと彼の人気は当方、古書店『ふしぎのくに』では鰻登りである。

 この現象であるが、アニメや漫画その他実写映画などの媒体でも時折起きる現象で作り手側は至って真面目に創作した結果、予期せぬ反応と反響を持って人気が出る現象、当方ではこれをジャンプする等と仮称している。

 わかりやすい例を挙げると名探偵コナンに出てくる登場人物、コナン君の知り合いがあまりにも物理戦闘強すぎて、巨悪の組織が霞んで見えるアレみたいな物である。あれも作者の青山剛昌が元々ファンタジー畑の人間の為、かっこいいと思って描いた結果、ねーよ! という肯定受け入れがなされ作者が味をしめてより大袈裟に描かれていくの顛末である。

 

「と言うと、真坂部さんのこの感じはどんどん悪化していくと、神様は仰りたいんですか? しかし、真城創伍さんに完全に翻弄されているじゃないですか? あくまで主人公は創伍さんですよ!」

「確かにそうだと吾輩も思うぞ! シロやアイナ、創造世界の人間の力の前には普通の世界の住人では一歩どころか百歩は足りないだろう。ふふっ、吾輩の推理完璧だ!」

 

 自画自賛しているハチドリと、セシャトの意見は同じ、この作品における主人公はどこまで行っても真城創伍とシロ。そして、大量虐殺の事件一つとっても現実世界はあまりにも創造世界からの影響に弱すぎる。軍事力ですら役に立たないのだから……と。

 

「貴様らは馬鹿だのぉ!」

「神様、私もハチドリさんもヘカさんじゃないですよぅ!」

 

 セシャトのその言葉を聞いて神様はポケットからうまい棒を取り出すとそれをもしゃりとかじる。

 

「セシャト、貴様。何気にヘカの奴をディスっているのか? 世の中の馬鹿という表記はあ奴の為にあるわけではない……あの馬鹿の事はどうでもいい。この作品が物語であるという事を貴様らは忘れておらんか? 同じ“真“を名に持つのも悪く無かろう?」

 

 今回は脇役の魅力について取り上げていく為、めざとく、深読みを通り越してそれはいくらなんでもと言うくらいあらゆる部分に手を伸ばして述べていこうと思う。

 

 真坂部デカは本作のミーティングで何度となく人気キャラクターとして当方で取り上げられた訳だが、人気が出たキャラクターはどうなるのか?

 主人公にまで昇格した例は今まで特殊なケースを除いて当方では確認が取れないが、モブがまさかのヒロイン昇格した作品は昨今でも存在する。

 そしてこの真坂部デカ、かなり古い異能力バトル作品にただのデカとして登場し、壮絶な死を遂げる某キャラクターとダブって仕方がないのだ。

 その人物は頭に弾丸を受けて絶命するのだが、あまりの人気っぷりに、スピンオフで普通に生存して登場する。

 死んだのでは? と言う質問に対して神様が代弁する。

 

「細かいことはまぁ良いのだが、物語は作り手によって生み出された世界だからの! 創造世界が現実世界を非情に襲い破壊するように、創造主もまた、人気の為なら指先一つ、鉛筆一つでその世界の因果すら書き換えよるぞ! 思いもよらず、自分の性癖No.1ではないが、自分の生み出した作品のキャラクターが人気が出ると言うのは不本意な部分もあるかもしれんが生みの親としては嬉しくないわけがないからの」

 

 その為、真坂部デカもこのままぶっ飛んだ行動を繰り返して当方だけではなくどんどん多方面の人気を集めてくれればまぁ、そういう未来もあるかもしれない。

 

「これだけ魅力的なキャラクターが大勢いるのに、未知に対しては殆ど無知で無力である真坂部刑事さんに興味が尽きないのは何故なんでしょうね?」

 

 一概には言えない、興味を持たない読者やただの一モブと思う方もいるだろう。しかし、この物語は走りの時点で超常的な力と無力な人間の構図が生まれている。故に、特殊な力を持ったキャラクターよりも、なんの変哲もないされど何かしてくれそうで死亡フラグが立ちまくりな真坂部デカはいい意味で悪目立ちする。

 そんなキャラクターは大体好かれるか嫌われるか、いずれにしても存在感と爪痕を残していく。

 

「こやつ、ひねれば死ぬようなただの人間だからドロップアウトさせなくても良いという強みもあるからの!」

 

 神様の言葉にいまいち理解できないハチドリ。

 

「強い方がドロップアウトしにくくはないか?」

「現実世界ではな? 創作物では主人公やその他を差し置いて悪目立ちして強すぎるキャラクターは都合上ドロップアウトされる別種の死亡フラグを立てる。かたや真坂部は現時点で創造世界に手も足も出ないただの人間であろう? 人類の目として動かす事を考えると、扱い方は無限に出てくるからの。ふぅ、ようやく店についたか」

 

 セシャトは鍵を開けて、古書店『ふしぎのくに』に入ると先ほど買い物した物を冷蔵庫に入れて母屋でチーズ蒸しパンを齧っている神様とハチドリにこういった。

 

「お夕飯はカレーですからあんまりおやつを食べると食べれなくなりますよー!」

 

 カレー、古書店『ふしぎのくに』でカレーを出すという事。要するに夕食時も物語の読み込みをしようということだ。

 神様はチーズ蒸しパンをペロリと食べ終わるとつぶあんのあんぱんを開けてこういった。

 

「こんな物はオードブルだ!」

「明日の神様のお小遣いから引いておきますからねぇ!」

「ぬォオオオオオオオ! 何故だぁアアアア!」

 

 頭を抱える神様、神様の残金三十五円。明日のお小遣いは、チーズ蒸しパンとアンパン分が引かれる。

『創造世界の道化英雄ジェスター・ヒーロー 著・帯来洞主』梅雨時のお部屋タイムのお供にいかがでしょうか? 実のところ当時水準でかなり斬新な設定は今でも十分ま新しく出てくる登場人物も魅力的です! 皆さんは誰がお好みのキャラクターですか? まだまだ五月の紹介は続きますよぅ!

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