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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第八章 『machine head 著・伊勢周』
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物語の男子は大体伊達男

 海外のホテルはフルーツサービスという物があり、ベットメイクの後などにその日のフルーツを置いてくれる。

 二年目にふしぎの一行でサイパンに行った時のシーンであり、正直使い勝手もなかったのでアーカイブに沈んでいた実にどうでもいい文章。

 

「テーブルのいちご、引き出しにはなんかチョコレート入ってるけど、これ食べてええやつなんか?」


 唯一初海外のアヌさんはキョロキョロしているとセシャトさん、ヘカさん、トトさんといちごを食べているので同じく食べる。


翌日


「今日はイチヂクやな! ワシ、イチヂク大好きやねーん!」


さらに翌日


「おぉ! 今日はメロンかいな! ワシ、メロン大好きやねーん!」


さらにさらに翌日


「なんやこれ、ドラゴンフルーツ。なんや美味いの!」


そして最終日


「今日のくだもん、なんやろなー! なんやろ……は? バナナ? なんでや! なんでやねん! オイコラァ!」


 そのバナナをセシャトさんは一口食べて「むむっ! 普通のバナナですねぇ! 実に美味しいです」


 アヌさん、バナナアレルギー故。指を咥えて皆が楽しんでいる姿を最後に帰国の飛行機……

 昔で言うところの外国のモデルみたいなスッチーが水と一緒にくれたもの。


「コレ、サービスデス!」


 アヌさんに渡されたのは……バナナでした。

 クオンは鼻歌を歌う。


 “星が降るあのコール、グリセードヘ〜“


 かつて人型機械端末を作ったメイカーと呼ばれた人物が口ずさんでいたという岳人の詩。

 クオン達人型機械端末にとってそれは国家のように特別に記憶されていた。


「さて……白昼夢らしき先ほどの情景と寸分狂いのないトウキョウシティのジンボチョウです……」


 同じくパン屋さんで塩バターバケットを購入すると、先程は珍しいなというだけでスルーした自動販売機で“怪物の力“とこの国ではない言語で書かれた不思議な飲料を購入し、少し深呼吸をする振りをして古書店『ふしぎのくに』のドアを開いた。


「ごめんください!」

「客なん? 男なん? 女なん?」


 そこにはポテトチップスを食べながらファッション雑誌を開いているおかっぱ、黒一色の服装。

 目には酷い隈の女の子が出迎えた。


「僕は旅人のクオンです。その性別は人型機械端末なのでありません」

「何言ってるん? もしかして頭か厨二の病気なん?」


 クオンは、百聞は一見にしかずを体現した。全身のメンテナンスを行い、蒸気を上げて、自分の機械部分を見せる。それに虚な瞳をした少女は少しばかり驚き……そして一言。


「あのイケメン社長の製品の一つなん? 何しに来たん? 何か作品読みたいん?」


 そう、少女が質問をした時、バン! 

 と扉が開かれる。


「こんにちは! ヘカさんいるかしら!」


 特徴的なウサギのリュックを背負った少女が元気よく入ってくる。それに黒髪の少女は虚な瞳を大きく開ける。


「いろはちゃんなんな!」

「ヘカさん! モンエナ部として早速到着したのよ! お話って何かしら?」


 黒髪の少女はヘカ、タブレットを取り出すと一つの作品を表示した。

 いろはと呼ばれた少女がその作品を読む前にクオンは声にした。


「あっ!『machine head 著・伊勢周』」


 ヘカといろはは顔を見合わせて、そしてヘカが口を開いた。


「これ知ってるん? クオン。とりあえず母屋に入るん!」


 ふしぎの国で出迎えた人物が別人だがここまでは同じだった。

 クオンは虚な瞳をしたヘカに塩バターバケットと自動販売機で購入した飲み物を渡す。


「モンエナなん! クオン、さてはモンエナ部に入りたいんな? それはかなり難しいんよ! 今日の感想次第なんな!」


 そう言ってヘカはモンスターエナジーをクピっと飲みながら作品の話を始めた。

 そして不意にヘカはクオンに尋ねた。


「クオン! 千咲たんと岬たんとヘカ、どれが一番可愛いん?」


 作品内の質問のオマージュかと考えて、クオンは微笑んで答えた。


「皆さんそれぞれ華がありますから、選べませんね」


 ウブな男の子とは真逆のいなし方にヘカと常連、一文字いろはは顔を見合わせる。そんな二人にクオンは微笑んで冷蔵庫の中を使っていい了承を得ると、購入した塩バターバケットにガーリックペーストを薄く塗り、マジックソルトで少し味を調整。

 オーブンに入れて数分焼く。クオンはリュックからマイヤーズと書かれたラム酒を取り出し、シナモン、砂糖、そして冷蔵庫のバターを入れてゆっくりと湯煎し溶かす。

 誰が選んでいるのか、実に質のいい紅茶が並んでいるので喧嘩をしないアッサムを選んで紅茶のホットバタードラムを作って二人の手元にバケット共々置いた。


「このアーセナルというのは少しアレな言い方ですね。まるで僕たちのようだ」


 クオンはかつては製造国の備品であった。

 そんな彼らを収容する場所であればアーセナルかもしれないが、人間の基地にとは皮肉だなと語った後に……


「でも、懐かしいですね。戦場以外では読書をしたり、音楽を聴いたり、案外事務作業をしたりと地味なんですよ軍人は、それ故に催し事は喜ばしいですよね」


 見た目こそ十代かそこらなのに、ホットバタードラムを啜るその姿には貫禄すら感じた。

 そんなクオンに主導権を握られまいとヘカはクイッとそれを飲み話し始めた。


「この第三章は宗助に主人公補正を与える回と言っても過言ではないん! これは能力とかそういう意味じゃないんよ! クオンにいろはちゃんは分かるん?」


 さてと……とクオンは横目でいろはを見る。

 ガーリックトーストにかぶりつき、幸せそうにマグカップの中身を楽しんでいる。

 答えるのは自分かとクオンはある考えが浮かんだが、あえてこういった。


「どうでしょう。わかりませんね」


 するとヘカの表情が虚な瞳の中、口元がパカっと笑った。わかりやすく喜んでいる。


「クオンも、いろはちゃんもまだまだなんな! アーセナルに所属した事で、宗助の動かし方の幅が大きく広がるんな! 共闘、横槍、誘拐、敗北、死亡、絶望、希望。物理事象から特殊事象まで、一人では限界があった展開に関して、ベタな物からご都合主義、伏線に至るまでなんな! これを別名、風呂敷を広げるともいうん。もちろん諸刃の部分もあるんよ!」


 食べ終えて口元を拭いたいろはが代わりに答えた。


「広げすぎて、回収が難しくなるってことよね?」

「さすがいろはちゃんなんな! クオンはまだまだん!」


 クオンは成程という顔をして、機械の瞳をパチクリさせて見せた。

 二人の自尊心を潤わせる事には成功したらしく安堵しているといろはが面白い話をした。


「不破の物語、大きく脚色しているけどゲラー・チャイルドよね? 昭和かそこらに流行ったとかいう」


 当方は超能力の有無に関しては理解は浅い。

 ただし、マシンヘッドでも語られるように3つの力を上手く使う能力に関しては誰もが知っている。力点支点作用点を用いたスプーン曲げ、ユリゲラーの来日を持って子供達が次々にスプーンを曲げるという事件が日本で実際に起きた。

 しかし、ある日突然それらができなくなり、テレビ番組で曲がったスプーンを持ち込みイカサマ疑惑が上がりそのブームが終わったとかいうくだらない事件である。

 これは、その三点の原理を知らずになんとなく出来てしまったが故に突然できなくなったわけであり、超能力をカメラに撮したいテレビ局側による脅迫にも近い煽りで起きた事件だろうと予測される。

 嘘は現実を混ぜるとリアルに感じるという。そして物語もまた実在に近づけるあるいは模倣した作品は記憶に残りやすい。本作がゲラー・チャイルドかどうかは不明だが、少なくとも当方の数人は同じ情景をデジャブした。


「二人とも、空想科学に耽るの別にいいん! でもヘカの言った通り、アーセナルに所属した宗助の訓練中にイベント発生なんな! こういう汎用性がキャラが増えたりどこかに所属すると使いやすんよ!」


 マシンヘッド・カレイドスコープ攻略戦に物語は繋がるのだが、ここでクオンは感嘆した。


「これは凄い。稲葉さん、僕を含める恐らく作品世界や現実世界に存在するほぼ全ての兵器に対して最強なのに、対人では最弱なんですね! 面白い設定です」


 何処にも書かれてはいないが、稲葉氏の能力であるエネルギーの無効化。

 これは恐らく自然現象も含めてほぼ全てにおいて作中最強クラスの能力である。なんなら他の仲間達の能力も全てにおいて体に触れる事で脳のエネルギー、要するに思考能力を奪えば無効化可能である。

 されど、たったそれだけなのだ。対人戦において、単独ではいくらでも攻略のしようがあり、例えば現実的には毒、例えば特殊能力的には宗助の空気を操る能力で体内水分量を変更、即死である。

 無敵性の中に最弱性が同時に存在するキャラクターは珍しい。大体なんでも打ち消す力のキャラクターはその対象を選ばないのだが、エネルギーだけに絞った点は非常に感慨深い。仲間のサポートを持って完全無欠になる彼は非常に使い所が難しい。

 なんせほぼ無敵である。

 クオンの話にヘカは口をまさにへの字にする。


「クオンは頭でっかちなんな! この話は、謎の怪物であるマシンヘッドカレイドスコープをいかにして攻略するかだけを楽しめばいいん!」

「いやしかし、人類の夢であるケイ素生命なんじゃ! とか思ってしまうのは頭でっかちですか? ちなみに僕は一般的な人間よりも小顔に作られているハズなんですが……」


 いつもなら雑学王よろしくなんでも知っている国際指名手配の相棒がこの手の読者の相手をしてくれるのだが、今隣にいる方の国際指名手配犯は爆弾知識しかないいわゆるアホの子。

 ヘカは静かにこういった。


「そういう読み方もあるん! クオンを作った奴はあれなんな! ナルシストなん! きっと自分が一番可愛いと勘違いしている奴なんな! それにしてもアーセナルの給料はいいんな! それに比べてこの古書店『ふしぎのくに』は最悪なん。客がこないん」

「メイカー……じゃなくてヘカさんヘカさん、聞いて宜しいですか?」

「なんでもヘカに聞くん! ヘカに答えられない事はないん!」


 ない胸を張ってそう嬉しそうに言うヘカにクオンは質問した。


「女性の魅力決定の甲乙に関して判断が乏しいハズの宗助さんですが、見ず知らずの女性にクレープをご馳走すると言うのは中々の伊達男っぷりじゃないですか? この国。ニホンダンシの特徴なんでしょうか?」


 出たー! また、クオンの空気を読まない質問出たー! といろは慌てるがヘカは指を振る。


「全く馬鹿なんなクオン! 物語に出てくるイケメン男子は大体、どんな女の子にでも優しいん。これは現実世界の日本男子とは違う生物だからなんよ!」

「なるほど! そうでしたか!」


 そうなの? と言ういろはを置いてきぼりに、ヘカの話を食い入るよに聞くクオン。


「宗助さんに女性がたくさん集まってくるのも……隠れ能力、及びお約束なるふしぎな力だったのですね……謎は深まります……にしても宗助さん、伊達男ですね。他国の女の子とデート中に……おっとお時間です。と言う奴ですね!」

 

 主人公は巻き込まれ型と首を突っ込み型といるが、この第五章より主人公は首を突っ込み型より、事件に巻き込まれる。


 クオンは気がつくと眠っていた。

 まさか……またバスの中ではと顔を上げると……

 

「クオン起きたん? ありがたく思うん! 晩御飯はいろはちゃんがピザを注文してくれたんよ! 顔を洗ってくるん!」

 

 クオンは寝ぼけながらも頷いた。


「はい! メイカー!」

「メイカー! じゃないん! ヘカなん!」

『machine head 著・伊勢周』

皆さん、こんにちわなんな! 今回はヘカも本作を手伝ってるん! 

この作品の面白さと言うのは、アレなんな。物語の展開や進んでいく先は普通さん、その普通が少しずつ変わっていくんな。気がつけばその道筋は随分遠くにくるんよ!

今回はストロングスタイルという紹介方式を取らしてもらっているん! まぁ! ヘカが手伝ってるんから、安泰なんな! 珍しくチーム『ふしぎのくに』で行っていくんよ!

セシャトさんは出るん? マフデトさんは? 物語をどうみんなが読み込むんか楽しみにするんよ!

今月、みんなはもう全部『machine head 著・伊勢周』読んだん?

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