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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第六章 『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』
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本当の意味での読ませるテクニックとは?

 今年もこの時期がやってきたかと億劫になる。


 教授はレポートをながめながらどつもカレーの作り方にため息。

 すると、一枚だけ不思議なレポートがあった。


 そのレポートはビンゴのように等間隔に記載されている。

 方レとょい持ーこうまっのろじかて作にゅらくり力のき


 このレポートは何なんだ? 物凄い生徒がいるのかもしれない。生徒の名前はアヌと書かれている。

 教授は物凄い論文の暗号かもしれないと空腹を感じながら真剣にレポートを眺めた。

  研究棟に誰かがやってきた。


 ※暗号が解けた人はメッセージにでも答えを書いてください

「へぇ、フランチェコルタのミレッジマートっすね。小洒落たのトトさんの店置いてるんすね?」


 夜のブックカフェ『ふしぎのくに』にやってきた二人はご存知、ふしぎのくにの一員であるヘカさんと、居候の国際指名手配犯、欄。シャンパンよりも遥かに安価なスパークリングワインの中でも割と万人受けしやすいその銘柄を前にしてそう言った。


「今日のおすすめはこれかや! ヘカちゃんは、コーラでありんすな? 欄さんは、このフランチェコルタでいいかや?」


 マフデトさんは、大人の世界を見ているようだった。

 コーラフロートを食べているヘカさんはマフデトさんの視界の中にはない。


「ブランデーあるっす?」

「あるかや、ただそんなに良い物はないでありんすよ?」

「なんでもいいっすよ! そのブランデーとそのフランチェコルタ、あと100%のフルーツジュースとカクテルしてくださいっす」

「フレンチでありんすな? 少々お待ちくださいかや! お嬢様」


 欄はピースサインを汐緒に見せると視線をマフデトさんに向ける。グラスを拭きながら大きな飴玉をしゃぶっているマフデトさん。


「で? この美少年カフェの新人さんっすか?」

「欄ちゃん! こっちはヘカの弟分のマフデトさんなんな! セシャトさんと同じ、古書店『ふしぎのくに』の店主なん」


 ヘカに紹介されて、マフデトさんは頬を染めてゴスロリ、おかっぱ、目元の隈がすごいヘカにお辞儀する。


「ヘカ姉様、いらっしゃいませなのです! ……そして、そっちが欄なのですね? ヘカ姉様のマンションに寄生しているクソ女!」


 欄を睨みつけるマフデトさんに汐緒が間に入った。


「マフデトさん、こらこらでありんす! お客様、お嬢様でありんす! お仕事中は私情を持ち込むのは接客業としてど素人かや!」

「……ぐっ」


 完全に言葉のブーメランを取られマフデトさんは黙るので、汐緒はトンと乱のために作ったシャンパンカクテル、フレンチを差し出す。


「マフデトさん、お嬢様方に『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』のお話をしてあげてほしいかや!」


 殺人的な接客よりも十八番であるWeb小説紹介である。それならばまともに紹介、そしてマフデトの機嫌も戻ると思われたが、相手は同じくWeb小説を読んできたら、なんなら書いているヘカ。そしてその居候で色んな作品に関わってきた欄である。

 先陣を切ってきたのは欄。


「このフランチェスカさん、案外先生とか、この際保育園の先生が合ってるかもしれないっすね。少しやんちゃな可愛い娘っすけど、すでにその基本は出来上がってるっすからね!」


 うんうんと頷くヘカは欄の言っている事を一ミリも実は理解していない。が、マフデトさんはそんな事を知らないので、下唇を噛む。欄の次の言葉をまった。


「欄ちゃん、ヘカにはわかってるんけど、続きを話すん!」

「ヘカ先生、本当にわかってるんすかぁ〜? まぁいいっすけど。よく教会と孤児院とか、託児所が一緒だったりする情景ってあるっすよね? アニメとか、映画とかっすね!」


 そう、あれは日本でも寺子屋という形で行われている。簡単に説明すると、法律が定まっていない時代のルールや道徳、すなわち福祉は教会や寺院が担っていた。さらに砕いて言えば、宗教が教えている事はなにか?

 それは要するに、人の嫌がる事をしてはいけません。人の喜ぶ事をしましょう。これである。それはキリスト教だろうとイスラム教だろうと仏教だろうと変わらない。さらに結論を述べる。子供は国の宝である。子供を大事にしない国は滅ぶ。宗教は例外こそあるが子供、弱き者を守り、慈しみ、育てる場所である。その為の教えも精神論もすでにフランチェスカは長らく養い培っているということだ。


「そういうことなんな! 同じ歳の子供を集めて強制収容する学校組織にフランチェスカは合ってるん!」

「ヘカ先生、言い方がやばいっすね。あと、幼稚園や保育園は任意っすよ。しかし劇っすか、自分もやらされた事あるっすねぇ……学校関係者はこと合唱コンと劇好きなんすよね。まぁこれも元を正すと宗教に実は行き着くんすけど今はまぁいいっすか」


 簡単に説明すると、教育が定まっていなかった時期、歌や芝居は道徳を兼ねていたとかいないとか。マフデトは自分がいなくても進行していくことに横から話に入った。


「そんな細かいことより、フランチェスカと子供達は絵本でも超有名な“おおきなカブ“を演じるですよ! これ、幼稚園の先生、もとい作者のチョイスがしっかりしてるのですね! 分かりやすいのです」


 絵本もまた然り、教育である。子供達に興味を持たせ、伝えたい事を理解させ、そしてもう一度読みたくなると思わせる。おおきなカブは毛利元就の三本の矢である。要するに一人じゃ無理でも三人集まれば文殊の知恵然り、なんとかなるよと……


「マフデトさん、そうなんな! それと動物を絡めるんわ。子供達に興味を持たせる事なんな! じじいとババアとおっさんだけだと女の子しか色がないん。あと、動物も大事にしなさいという意味もあるんよ」


 大きいなカブ、あらすじ。老若男女、動物力を合わせて仲良くカブを引っこ抜けである。

 実に平和な世界で楽しそうだ。


「でもあれっすよね。強烈な社会主義を強いていたソビエト時代でもその背景を崩さずに作品を出せた理由は昔話だからって事すかね?」


 欄の言葉にマフデトさんはすかさずツッコミを入れた。


「この作者、元々教会関係者の作家だったから作品に絡めたと思うんですよ! そしてテメェの言う通り、子供に分かりやすい作品なのです!」


 勝ち誇ったマフデトに欄はなるほどと頷きながら話を返した。


「そうっすよね。まぁ同じような境遇の作者でスペインの作品にドンキホーテもあるんすけどね。これもわりかし幼稚園で演じられたりするっすよね。今回は少子化故か、臨時故かフランチェスカさんの受け持ったクラスの人数に合わせておおきなカブ。これはセリフも可愛いっすからね! この話を選んだ理由というか流れは上手っすね」


 おおきなカブという物語に関して、本作では何気に踏み込んで、幼児以上の年齢の人々に再確認させようとする展開が待っている。


「ここは面白いんな! 物語として面白いかどうかじゃないん。物語の流れとして実に面白いん。というかこの作品なんなん?」

 

 本作でも保育士の人材不足に警鐘を鳴らしている。実は人はいるが働けないという部分が大半で男性保育士の登用問題やら、認可されていない施設の給与問題など山積みであり、教育は大幅に国営企業として政府が力を入れないとこの国はいずれ詰む。

 子供を大事にしない国は滅ぶである。


「教育指導を受けてきた先生よりもフランチェスカの方が子供達をまとめることができたのは、本人の人に好かれやすい性質以外にマニュアル化されていない独自の行動なのですよ。物語のいろは、起承転結に矛盾がねーのでサクサク読めるんですね」


 iPadを持ちながらマフデトがそう話していると、欄がグラスをマフデトに見せる。おかわりという事なのだろう。そこそこ度数の高いフレンチをキュッと呑み、汐緒が用意した苺タルトにヘカと舌鼓をうつ。


「んまいん!」


 マフデトさんは同じく店で出しているタルトを食べて、自家製ながら口に合うなと思って頷く。


「フランチェスカのゲームが微妙に上手というのもリアルだと思うのでですよ! 普通にゲームオーバーしてるのです。このままいくと読者に忘れられてしまいそうな安藤をしっかり出してるのです!」


 当方にもゲーマーが一人いる。

 サタさんという男性なのだが、本作紹介前にハウスオブザデッド4というゲーセンのゲームをワンコインクリアさせて、そこにいたメンバーを長時間退屈させた。

 ゲーマーはアイテムの場所やら何やら覚えているので作業、かたやフランチェスカはゲーム好きであり心から楽しんでいる。

 重ねるようだが、フランチェスカは完璧な人間ではない。むしろ、人間のスペックで言えばどこにでもいる。なのに、友達になりたい、彼女にしたい。そう思える彼女の魅力というものは非常に大事である。


「オチの付け方もうまいっすよね?」


 マフデトは猫みたいな瞳になって待ってました! とそれを語ろうとするが、そこにおおきな口を開けてタルトを食べ終わり、コーラで流し込んだヘカがグラスを差し出して話し出した。


「Web作品ってのは個人で書かれているものなんな? だから自由なフォーマットでもいいんけど、この作品の作者は頭の中に描いている世界観をしっかりと文章で表現できてるん。簡単なようで難しいんよ。作者は分かっていても読者には分からない事が割と書かれていない事の方がWeb小説では大多数なんな?簡単にいうと頭の中で完結してしまっているってやつなん」


 今これどういう状態なの? この人誰、いつからいたの? あれ? 画面が変わったなど、例を挙げればキリがないが、それを踏まえてWeb小説とも言える。

 だが、本作の作品完成度はそういう矛盾点の少なさもポイントが高い。

 言いたい事を言われたマフデトさんだが、彼もまた古書店『ふしぎのくに』でセシャトさんの代わりに作品紹介をするテラーなのだ。このまま黙ってはいられない。


「本作は、そこまで凝った事をしてないのです。ストーリー展開だって類似したものもあるのですよ。でも読ませてくるのは徹底的にストレス要素がねーからなのですね。優れた物は元々あった物でも丁寧に作るかどうか、なのですよ」


 マフデトの言葉に初めて欄とヘカが反応した。いうことがこれくらいしかなかったマフデトにとって恐る恐る二人を見た結果、瞳が猫のように戻る。


「本作の後書きについてもストレスを殺しにきてるんですよ!」

「へぇ、それは何でっすか? スペイン語講座してるっすけど」


 マフデトは勝った! と言わん顔で指を欄に向ける。他の女性客の接客をしている汐緒はそれをチラ見し、注意をしようとした時。


「その一話が終わった時に頭を現実に戻さないためなのですよ。これが、評価お願いしますだの。感想もらえたら嬉しいだの書かれていたら冷めるのですよ。私はフランチェスカの豪快な生き方を読みたいだけで、てめーの状況なんざしらねぇのです! って感じなのですよ」


 もちろんテクニックとして後書きに、色々書かれることは自由だが、ただ単に作品を楽しんでいる人の夢を醒させない手段に講じるのも作者という演者のテクニックかもしれない。

 古書店『ブックカフェ』夜の部はまだまだ続きます。マフデトさんが未成年で働いている事に問題は? 人外なので大丈夫です。

 さて、第二回目となりました。『見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る 著・通りすがりの冒険者』のご紹介です。今回はシステム部とおべりすくさんが主体となっており、お酒のネタやら古いネタやら、どうでもいい蘊蓄やらが多いようです。私も全部目を通したわけではないのですが、フランチェスカさんの行動習性の為と現地取材とか言って複数の教会へ礼拝に行ったり、ゲーセンに行ったり、ミーティングという名の酒盛りをされていたり、ふと思いました。

 システム部とおべりすくさんはフランチェスカさんと行動概念が似ています。きっと肩を並べてマリオカートでもしてくれるんじゃないでしょうか?

 今回は大人になれなかった彼ら、彼女らができる限り精神年齢を近づけて紹介をしていきますので是非とも優しく見守って批判してください。

 そして、今回紹介の作品は読んでいて元気になりますし、気持ちよくなれる作品じゃないでしょうか? 今月いっぱい楽しんでください。


 システム部、セキュリティ担当。サタ。

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