古都、お菓子の里。そして知恵の実をいただく二人
皆さん今月の作品はガトーさんの林檎転生とプラネットアースを紹介させていただきます。マイナーなラノベに“ウは宇宙ヤバイのウ“という作品があるのですが、読んでいて楽に楽しいと言う物も作品の指標の一つであり、ガトーさんの作品は小噺の要素が多くプラネットアースは紹介候補として常に上がっておりました。
面白い事に当方でも年齢層が低い人は林檎転生、中間層はプラネットアース、そして割とシニアな人も林檎転生が好きと言う事でニチームで紹介を進めていきたいと思います!
金沢、古き古都の町、そんなお茶屋さんでお団子を三十本程食している銀髪。
褐色の女の子がいた。最初こそ、可愛いなとか、お団子美味しいのかなとか従業員は思っていたが、徐々にフードファイターか?
ようやくお会計かと手をあげる少女の元へ授業員はこう言われた。
「すみません! 金沢のおすすめのお菓子とかってありませんか?」
そう、彼女は我らがセシャトさん。
半年ぶりの登場である。そんなセシャトさんに話しかける少年のようで、少女のようで、金髪の褐色。
「セシャト、貴様ぁ! 金沢といえば! リンゴではないか! アップルパイに上生菓子! パイにチョコレート」
セシャトは40本目のみたらし団子を食べ終えると、お茶をずずっと啜るとセシャトは目を細めてから微笑む。
「あら、神様。奇遇ですねぇ。リンゴのお菓子……むむっ! それは予想だにしていませんでした」
「リンゴ、といえば?」
セシャトは目を瞑り、そしてカッ! と開眼する。
「コンポートですね! 最高の食べ方だと私は思いますよぅ!」
「うむ、そのまま食べてよし! パンケーキにかけてよし……じゃないわ! 貴様、休暇を満喫しすぎて何か忘れておらんか?」
神様がそう言う中、セシャトはスマホでリンゴの上生を出すお店を探しながら神様に言った。
「リンゴは食べる物、という常識を逸脱した物語。ガトーさんの『林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~ 著・ガトー』についてお話されたいんですよね?」
「わかっておるのなら良い。ではリンゴ狩でもしながらの?」
神様がそう言うので、水筒にカルピスを入れて、麦わら帽子を被り、二人はリンゴ狩りの受付をして、いざリンゴ園へ!
「転生物、人外になるというあれらパターンで、本作は面白いアプローチを始めるよの? 二段オチだの! それがこれだ!」
神様はオイルで磨いたかのような艶々のリンゴに八重歯を入れてガシュッと食べる。リンゴ転生は、最初の第一話にて落胆からの期待をもたせてくれる。そもそもタイトルでネタバレしているので、リンゴに転生するんだろうな。と思うわけである。
古津大輔なる主人公、やや土山御大の作品に出てきそうな、フルーツ大好きな感じの名前の彼は色々チートを賜るわけだが、その中の一つが自身を死に至らしめた物に転生する。
トラックに轢かれて死んだわけだから、トラックかと思えば……
「まさかの圧死だ。まぁ、私もリンゴに囲まれての死というのも悪くないかの!」
とそう言って胸に大量に抱えているリンゴをガシュガシュ食べる神様。大きさに対して神様は物凄い食べる。
※
「神様、この人型以外の転生における、準備期間とでもいうのでしょうか? これらは実に作家さんの趣味趣向が出ていて面白いと思いませんか?」
神様は静かに樹になっている青いリンゴをもぎると頷いた。
「昔から、人以外に成るという物はあったのだの。話せば長くなるが、超昔の作家も書いていた。ただ、それらの背景が語られるようになった事は昨今の日本のラノベからだろうの。そういう意味では文学に貢献していると私は思うぞ」
大抵が呪いやら罰やらで人間以外の何かにされてしまう人物というキャラクターは古来からよく使われてきた。
が、実際そこに主眼を置き、それらを深く掘り下げられた事はあまりなかった。
「それを受容、及び需要にしてしまった……という事ですよねぇ」
「そうだの。人外転生系とでもいうのか? 人間である以上、知恵がある。いや、生存戦略ができるのだ。故に、準備するわけだな。スライムだって蜘蛛だって、そしてリンゴでもの! ちなみに私はジンベイザを依代にしておるだけで、転生しておるわけではないからの!」
そういって美味しそうに二十個めのリンゴに八重歯を神様は入れた。
セシャトは果物ナイフでリンゴをうさぎに切り分けるとそれを神様に差し出す。
「ほれ、ここ読んでみよ! 人間だった頃、脊髄動物としての反応を忘れろときたぞっ! 人間である事を捨てるとは中々出来もんだろうな……大輔の奴は普通に受け入れておるが」
セシャトはトントントンとリンゴの芯をくり抜くとそれをアルミホイルに入れて小さなシングルバーナーで炙る。そう、リンゴスイーツの王道、そうブラートアップルである。
神保町にある古書店『ふしぎのくに』行きつけのカレー屋さんで毎度注文するそのスイーツ。
「ゴブリンさん登場ですねぇ! こちらはスライムと並ぶ雑魚キャラの王道と思いますが、実際は妖精とか精霊的な類なんですよね?」
日本では何故か分からないが、緑色の餓鬼みたいなモンスターとして登場し、人々や農作物、家畜などに被害を与えワラワラと増える害虫的なイメージが強いかもしれない。
ゴブリンとは妖精の事なのだ。イタズラもするが、人々の役にも立ってくれるブラウニーとかも広い意味ではゴブリンであり、日本で言うところの妖怪みたいな意味だったりする。
「あれだの。屋敷に住み着く、妖精。日本では寡黙な美少女で、メイド服的な物を着てその家の家事をしてくれるブラウニー。あれもゴブリンだからの、蝶々の羽をはやして、美しい少女のように描かれるプーシュケもゴブリンだからの……まぁ悪戯好きの妖精が派生し、歪曲して妖怪文化の根強い日本産ゴブリンが産まれたのだろうな」
「まさにゴブリンの意識改革をしたくなりますねぇ……ですが、その後者のゴブリンにいたいけな女の子がピンチです! でも大輔さんは正義感溢れますねぇ! 最近だと我関せず主人公も多いですから」
これはあれだろう。
某スライムもそうだが、古津大輔も人間時代は割といい大人なのだ。案外大人って奴はできるのだ。
仕事ができる人は出来ないって嘆くより、今持っている武器でできる事をする。
そう、例えば、転がるとか!
「私たちが栄養として、嗜好品として食べているリンゴが転がって襲ってきたらたまらんのセシャト……まぁ、貴様の言う準備期間ってのはこのあたりまでだの。次は異世界物として当然のルート。作品の目標設定が必要なのだ。そこからどういうイベントを張っていくのかの」
神様は一つの樹を丸裸にしてしまいそうなので、場所を変えて別の場所からリンゴをもぎって食べる。
「時に神様。神様は居眠りもするし、よそ見もする。ちゃんと見ていない事もあると言うのはなんだか微笑ましいですね」
セシャトの目は笑っていない。神様をガン見しているのだ。神様はセシャトを見つめ返して……
「セシャト……何が言いたい? 私は確かに書に関して以外は何もできない神だが、全書全読の神様だぞっ! そんな目で私が作った子供に見られるのはちょっと心外だがの……」
「いえ、神様は普段お昼寝をしているか、老人会に顔を出しているか、火の車である古書店『ふしぎのくに』の売り上げから毎日1000円をおやつ代に消費されている神様だなぁとふと思いまして、異世界転生物の神様はちゃんとお仕事されているなぁと」
セシャトの冷たい表情に神様はとりあえず頭の上に赤々となっているリンゴをもぎって無言で差し出した。それを見てセシャトはクスクスと笑うとそれを受け取り、磨いてかじった。
「ふぅ、実に美味しいですね林檎。一つ、クエスト。目標が生まれましたね。グリダさんに姿を与えたいという実に期待したくなる展開です」
「ふむ、そして助けた女の子は勘違い系ヒロインだの。リンゴは食い物だが、そのリンゴを食べないでいられるのにこの勘違い系ヒロインをぶっ込んだという事が、作品としての差別化を図っているの。現時点では大輔がリンゴのまま物語を信仰できるフラグが立ったとも言えるからの」
神様は推定三桁目に突入するリンゴをもぎろうとしてセシャトに止められた。
それに文句を言おうとしたが、
「神様、それ以上はカビゴンさんでも食べませんよ! りんご狩りのリンゴはみんな物です。どうでしょう? そろそろ近くのカフェでリンゴを使ったスイーツでも食べにいくのは?」
「ごりんのりんご飴か? それならば、すぐにいくぞセシャト! とんでもなく並ばねばならんようになるからの!」
知る人ぞ知る金沢リンゴスイーツ。
興味がある方は一度お試しいただきたい。りんご飴を超えたりんご飴である。
「まぁあれだの。嫉妬深い一途な女キャラと言うのは男の作者特有の行動原理であると知っているか?」
「と、言いますと?」
「性欲の概念が男と女では違うのだ。ラブコメしかり、異世界物しかし、男性作者の造形する一途な女キャラは女性目線で見ると総じてビッチなわけだ。これは種の保存やら……博士号を持っているダンタリアンあたりの方が説明がうまいのだがの」
逆も然り、女性作者の描く男キャラは、男性からすればどこの異次元からやってきた神様なのかという精神構造や行動理念を持っている。
LGBTを否定するわけではないが、男性と女性はそもそも遺伝子レベルで生についてあるいは性についての反応に違いがあるというわけだ。
これが一部、日本のラノベを嫌悪する女性と少女漫画に呆れや笑いを感じる男性の温度感の正体である。
一概にはいえないがこの負の感情は人間という生物がいかに優れ、文化的で博識に進化したかを物がっているとも言える。
「しかし、これ勘違い系の作品でもあるのだな。一時期東方Project系の二次創作で流行って、作品派生としてオバロとかがその系譜を持ってる物な」
正確にはオーバーロードはチート系の作品なのだが、小学校卒業しか知能のない主人公(アニメや製品では高卒)が周囲の腹心達にいいように解釈されるあれである。
「勘違い系というより、フレッサさんの都合の良い解釈ですねぇ……そこが可愛らしくもあるんですが、不思議な力や道具が溢れている異世界ならでは、そういう解釈をしてしまうんでしょうか?」
実際、物語だからと言ってしまえばそれで終わりだが、よくよく考えて欲しい。大輔は我々、地球の物理体系に存在している人間であり、フレッサは我々の知らない未知の理論と世界形質を持った常識の中に生きているのだ。故に彼女のご都合的な考えも取りようによってはそういう物なのかもしれない……と、ワンダーランド・ギャップとシステムの部の面倒くさい人たちが語っていた。
「そろそろ暗くなってきましたねぇ! 神様、続きは旅館でお話しましょうか?」
「うむ、それなのだがのセシャトよ」
ゴニョゴニョゴニョとセシャトに耳打ちする神様。
宿代がないと、神様をセシャトは笑顔で微笑んで見つめる。そして何も言わない。
「のぉ、その目、やめてくれんか?」
※より、文章を引き継いでいる為、別ライターとなります。文章表現がやや変わっている事をお許しください。異世界転生や俺TUEEEE系が大好きな古書店『ふしぎのくに』の関係者がいました。2021年5月19日。深夜二時頃、安らかに眠りにつきました。本作の事も大変愛しており、きっと御伽の国から今月の紹介を楽しんでくれていると信じています。
皆さんお久しぶりです! 今回はガトーさんの作品をようやくご紹介ですねぇ! 推薦やDMはたくさんいただいておりました。毎月一作品という縛りがあり、当方は紹介としては最大年間12作前後になってしまいますが、レビューや感想ではなく紹介作品として読者さんや作者さんにプレゼントしていければ嬉しいなと思います。
今回選びました二作品は似て非ざる側面を持っています。転生とやり直し、知っている世界(常識)と知らない世界(常識)。同じチートでもマニュアルありきと手探り、そしてどっちの方が面白いと感じる層が綺麗に分かれるという事。
いずれにしても物語の運びはガトーさん節で語られ読んでいて安心感も感じ、また作品全体が優しいですね。昨今の疲れた人、そして疲れた当方や皆様のサプリにいかがでしょうか?
『林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~』『プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜』 皆さんお久しぶりです! 今回はガトーさんの作品をようやくご紹介ですねぇ! 推薦やDMはたくさんいただいておりました。毎月一作品という縛りがあり、当方は紹介としては最大年間12作前後になってしまいますが、レビューや感想ではなく紹介作品として読者さんや作者さんにプレゼントしていければ嬉しいなと思います。
今回選びました二作品は似て非ざる側面を持っています。転生とやり直し、知っている世界(常識)と知らない世界(常識)。同じチートでもマニュアルありきと手探り、そしてどっちの方が面白いと感じる層が綺麗に分かれるという事。
いずれにしても物語の運びはガトーさん節で語られ読んでいて安心感も感じ、また作品全体が優しいですね。昨今の疲れた人、そして疲れた当方や皆様のサプリにいかがでしょうか?
『林檎転生 ~禁断の果実は今日もコロコロと無双する~』『プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜』




