一章は駆け抜けて読む・読書は想像が6割
正月明けで人類のみなさんはどうお過ごしなのですか? 私は超忙しいのですよ。ツイッター、各種連中との連携、この前ヘカ姉様とデートをしたのですよ。ヘカ姉様のジャージファッションきゃわわなのでした。
私に、クオンがつけてるような可愛いリボンを買ってくれましたよ。概ね、いい2021年の走り出しなのです。
秋文は実のところ気が気でなかった。外で何やら大声でシーサーさんとやらの声で「にたさーん! にーたーさん! 秋文君にたさーん!」と叫び声が聞こえるのである。
「なんかすごい僕の名前呼ばれてるけど……」
「ほっておいていいのですよ。シサさんは嫉妬深い雌豚なんです。いえ、シーサーでしたか、秋文君の後ろをつけて泥団子くらいはぶつけられるかもしれませんが、害はありません」
「えっ? すごくいやだけど」
「そんなことより、続きを読むのですよ! 第一章は駆け抜けで読む。これWeb小説の常識なのですよ?」
そうのなの? と秋文が聞くよりも前にマフデトが秋文を期待の目で見つめる。なまらセシャトに顔が似ているので秋文は少し照れくさい。
「一章の中に閑話があるんだね。いや、幕間か」
「これは幕間というと、章外にあるべきなんですけど、閑話としての受け入れるのですよ」
「そうだよね。そういうのは野暮だよね。おべりすくのお兄さん達によく言われました」
「アヌ兄様や、バスト兄様?」
「はい! やっぱり知っているんだよね。かっこいいよね」
そう言った秋文にマフデトは見るからに機嫌が悪そうな顔をした。それは大事な玩具を取られた子供、というよりは単純な嫉妬である。
「そういえば兄様達も、秋文君、秋文君。うるさいのですよ! 男にまで色目を使うとんでもないチューボーなのですよ」
「色目って……あはは、それにしても魔女が薬を作るのは当然って、マフデト君が言っていた通りだね! でもすごい体頑丈じゃない?」
「超越者。森の人、言い方を変えればエルフ。なども魔女と言われてるのですよ。広い意味だとアマゾネスとかもなのです。魔女が不死というわけじゃないですけど、頑丈な由来は、自然治癒が高い事と、適切な治療を知っていたとか、そういうのから取られているのかもしれないですね」
秋文はこの読み方はセシャト、というよりは別の人のような気がした。そう、最近見なくなった。金髪の小さな子供。セシャトさん達を顎で使い、とにかく大きな声で大喰らい。だけど、Web小説を読むときのあの子供の考察と説明、そして朗読は心地よかった。
「マフデト君って神様みたいだね」
あからさまに嫌そうな顔をマフデトはした。神様とは金髪、褐色でいつもお菓子をもぐもぐと食べているあの神様。
「秋文君、あの神様と私、どっちが可愛いのです?」
どちらが可愛いのかと、マフデトは聞いてくる。そして顔がくっつきそうなくらい近づいてるので秋文はさっと離れた。
「そうだね。神様はとってもお菓子を美味しそうに食べて、元気ですごく可愛いと思う」
見るからにマフデトは元気がなくなる。しゅんと言ったところだろう。そんなマフデトを見ていると秋文はやむなしこう言った。
「でも、マフデト君の方が可愛いかな」
そう、マフデトは八重歯を見せて、ものすごく嬉しそうに喜ぶ。豪華な椅子の上でぴょんぴょんと跳ねるような仕草に秋文は心から、あざといなぁと思った。
「魔女という方々にはコロニーでもあるのかな? よく魔女って孤独で、各々のクラフトを持っているみたいなの多くない? 弟子をとるにしてもどの魔女の弟子になろうか? みたいな」
マフデトは自分のワイングラスに牛乳を注ぎ足すと、それを一口。口の周りの牛乳を舐めてから語る。
「秋文君さぁ〜、本当にセシャト姉様と語り合っていた人なんです? あまりにも無知で驚きなのですよ。所詮は無知な人類なのですよ。日本の陰陽術師も宿曜術っていう科学の学問なのですよ。それと同じで魔術や錬金術なども今の言葉を使えば化学や物理学なのですよ。どの薬を調合すればどんな作用になるか、などですね。結果として流派が生まれ、各自の秘伝や奥義という物ができるのですよ。今風に言えばどの教授に学ぼうかという事なのです。そう言えば様々魔女がいて、確実でクラフトを持っているのはわかりやすいでしょ? 要するに研究棟なのです」
本作はファンタジー作品ではあるので、研鑽し、高め学ぶものはとどのつまり魔法という事になろう。とある作品では魔法という物を理論的に解明し、魔法理論を持って魔法という物の作用を使い、覚える者が魔法使いであるという体を持った物がある。かつてアニメ化もし、当方もその筆者と何度か語った事のあるかの有名な作品ではあるが、とどのつまり……
「Web小説における魔女という連中は何をしているのか正直さっぱりその本質が浅い場合が多いのですよ。本作に限らずですけどね。魔法が使える、なんらかの過去や、背景の設定は存在する。魔女の生計や生活についても言及はされている。ただし、魔女という者が本質的にどういう位置付けの人なのか? という事が語られることはあまりないのですよ」
そう、魔女という人を想像するのは容易い。が、それらが実際どういう位置付けの人なのか? と聞くとそれを正確に納得させられる答えを持っている人は中々いない。
「マフデト君。それってどういう意味なんですか?」
「まぁ、魔女を想像して欲しいのですよ。とんがり帽子に、箒に乗って、謎の薬を作り、魔法が使える。大体この辺があれば魔女として説明がつくのです。これは魔女なんだなって思うのです。結果として、それ以上の説明を必要としなくてもいいのです。シナジーとか色々言い方はあるのですけど、幽体離脱ににていると私達は言うのです」
「幽体離脱? どういうこと?」
「幽体離脱をした事がある人の多くが語る物は見た事がある物や場所に関してのみなのです。ごく稀に、来た事もない道とかを言い当てる人がいるのですが、あれも科学的根拠があるのです。見た事があるのですよ。テレビなのか、それとも幼少の頃の記憶なのか、とある実験で前世の記憶を解明しようとした時、前世の記憶を語る子供が言う光景、それは赤ちゃんの頃に放送されていた古代文明の番組だったなんてオチもあるくらいなのです。人は知っている物、見た事がある物までしか表現できないのです。だから、秋文君、創作物の魔女とはそもそもなんの為に存在しているのか? と言う事に関しては答えはないと思うのです。それはひとえに、私たちが、魔女とは大体こういう物だろうとと言う前情報を持っているからなのですよね。それを踏まえた上で、第一章におけるパワーワードについて考えてみたいと思うのですよ」
牛乳パックを二つ程空にしてマフデトは秋文に長々と語り出した。要するにマフデトが言いたいことは、実のところ、そこまで設定を煮詰めなくても語れる物があるということを物凄く理論的に語ったにすぎない。この話を聞いて秋文はこの店の店主・セシャトとはだいぶん違うなと驚きを隠せない。
「魔女狩り、これは僕の主観ですけど、魔法を使える魔女を捕まえたり、しないといけないわけでしょ? あるいはハンティングですから、魔法対策の武器とか、マジックアイテム的な物が出てくるような、そんな感じなのかな?」
マフデトは、お酒に酔った者のようにガンとジョッキを打ち付ける。口の周りが牛乳でうすら白い。そしてマフデトは人差し指を秋文に見せてから言った。
「まぁ及第点なのですよ。この作品って異世界ファンタジーの色を持っていはいるのですけれど、未来の地球がベースになっているのです。西暦という言葉あるという事はどこかのタイミングで魔法という物が発見されたのか、発現したのか、魔女という存在が何処からか現れたのか、それらが覇権を握る事もなく、それを狩る、あるいは殺せるという事は同じ力なのか、それを抑制できる力があるという事なのですね」
そして本項でベースが地球であるという事、魔女と魔法使いという似て非ざる関係性の存在。マフデトは背景解明から作品を語る傾向にある。それを逆に秋文は読んでみた。
「カンザキさん、そしてもう一人の魔女の方は、どうも和名に近い名前だよね? となると、この場合の魔女は魔法を行使する女性であってウィッチやソーサラではないんだと思うんだ。魔法使いの方もそうだね」
「秋文君。貴兄は中々、面白いことを言うね。日本だからそれが通じると言いたいのですか? ふむ、確かに悪くないと思います」
ウィッチとは魔法使いのステータスであり、性別を意味する物ではない。自然信仰のウィッチやソーサラーの司祭が女性である事が多く。日本語訳すると魔女。となるだけで、実のところ、男でもウイッチでありソーサラ、そして和訳すると魔女なのだ。事実、現在でも魔女のサバトに男性の魔女もたくさん参加するという、日本語で書くと意味不明な文章になるわけだ。
「マフデト君、この作品は魔女という存在は仮定として女性を指す内容だと考えた方がいいかな? これはさっきの想像の問いかけだよ。魔女と聞いて最初にイメージするのは、とんがり帽子、箒に乗る、謎の薬を作る。魔法が使える。しわくちゃのお婆さん、あるいは可愛い女の子。このあたりの想像になるんじゃないかな?」
Web小説を読むにあたってイメージはとても大事である。そういう物だろうと認識してあえて背景を読まないで進める方法、そしてマフデトのようになんでだろう? なんでだろうと常に考えながら作品を読む方法。
「あまり違和感なく読み進められるのは、イメージがわかりやすいからですね。想像だけで大体の判断ができてしまう。ざっくりと言えば、カンザキさんはリンフを拾い、そして静かに、過ごしていたところ、彼女ら魔女を襲う凶刃がもう少しまで来ていた。そこでカンザキさんは何かの覚悟を決める必要が出てくるなぁとワクワクしませんか?」
マフデトはさすがはセシャトが目をかけるだけはあるなと思う。秋文と次を語ろうかと思ったところ、秋文は門限の時間がやってきたことをマフデトに語り、そしてまた作ると秋文は言って帰っていった。マフデトはPCの電源をシャットダウンして、母屋の仮眠室にダイブした。
『隻眼隻腕の魔女と少年 著・麻酔』は皆さん読んでますか? 地の文も読みやすく、ちょうどこの連休で読み進めていくはどうでしょうか? 最近また連載が始まっているので追いつくなら今なのですよ!




