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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第三章 『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』
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夜食のチョイスとアクションを描く頭

最近、夜行性になりつつある私です。東京出張に来たアヌ兄様が作ってくれたコンビニのおでん大根を揚げた物を食ったのですが、激うまで驚いたのですよ。作中でも紹介しているこの食物。ぜひお試しくださいなのですよ!

 夜のコンビニという物は不思議と気分が上がる物である。スナック菓子にジャンクフード、ホットスナック……


「ポテチにコーラーに……カップ麺なのです!」


 マフデトが当然のチョイスをしたところで、アヌが大いにダメ出しをする。


「マフデトさん、あかん。あかんでぇ! そんないつものコンビニフード買うてたら! ここは、割引価格のサラダ巻き、アホみたいにダシが染み込んで廃棄寸前のおでん。そして……コンビニ専用の炭酸飲料や」

「な……何故こんなジャンクフードを通り越した食物を?」

「夜中に起きてるだけでアウトや! 日本人は夜更かししすぎや。セやったら、せめて廃棄食品を減らす貢献や! そして、案外こういう方が美味いねんて! これからカイルとフィオラの激突を考察するんや! ワシの言うた通り、カイルは索敵と狙撃をする為に身を隠すスモークグレネードや! 考えたな!」


 アヌはそう言いながらコンビニの前でスマホを閉じて、マフデトと並んで歩く。風呂に入ってあとは寝るだけ、というか夜更かしをして作品を語り合うのだ。


「フィオラはプレイヤーとしては優秀なのですが、戦士としては三流。カイルの言ったとおりなのですよ。戦いってのはルールさえ守ればどんな手をつかっても勝った方が正義なのです」

「そや。狙撃手同士の戦いはあれやで、陣取りゲームや索敵、エイム、狙撃。この狙撃をする時はハートショットを決める時や。よく映画とかでヘッドショットから決めるやろ? あれは間違っとる。頭より胴体の方が大きいからハートショット決めてから続けて二発目のヘッドショットでトドメをさすんやけど、外したら相手に場所バレるやろ? 突撃銃やったらそれでもええけど、狙撃銃同士はきついで」


 突撃銃はあえて居場所をばらすように適当にバラ弾を巻く事がある。いわゆる弾幕というやつだ。そこで頭をだした奴に狙撃手がカウンタースナイプというパターン、あるいはセットと呼ばれるアクションを決める。


「カイルは戦争というものをよく知ってるのですよ……でも、軍人としてはも一流ではねーのですね」

「そやな。逆におもろいんちゃうか? 強化兵のに、心の部分。前に言った帝国兵との違いやな? イラクで戦った自衛隊にアメリカのスペシャルフォースは、ただ構え、狙い引き金を引いとった。それが爆弾抱えた年はもいかんガキでもな」


 これに関しては驚きとしか言えないのだが、知り合いに予備自衛官になった者がいるのだが、彼はイラクの地雷排除任務に関して、戦闘行為は普通にあった、普通に引き金を民兵に向けへ放ったと言った。当時はオチのない冗談だと思っていたが、稲田防衛大臣の時代に自衛隊が戦闘行為があったという事を公表した時、筆者はその知り合いの言葉を思い出した。


“ワンショットでワンキルできるかで、ポイントを競い合った。ガキならガキだけポイントが高かったんですよ“


 リアルの軍人は、創作物のキャラクターよりもぶっ飛んでいる。故に我らは思うのだ。カイルのような情に傾く存在を良しとし、実際に機械的に戦争行為を行う者に対して……“お前達は人間じゃない“と悪にする。


「おぉ、フィオラに犬をつけるちゅーのもようわかっとるな! キツネ狩りや! 良いハンターは良い猟犬を持つてな。ええやん、デジタルな未来の作品やのに、決めるんわ、訓練された自分の技術と信頼における相棒。アナログで泥臭い戦いや! えぇ表現や。おっ、ついたの!」


 ガチャリと古書店『ふしぎのくに』のドアを開ける。誰もいない店だがマフデトは「ただいまなのですよ!」と。

 店内を抜けて母屋のテーブル、ではなく仮眠室へと向かう。そこに食べ物と飲み物を広げてスマホを取り出す。


「じゃあ、読み明かそか!」

「ミラは予想以上に器用なのですよ」

「軍人はなんでもせなあかんからな、実際のアメリカの軍人は雑やけどな。しかし、この作品出てくるキャラクターが、ちょい役のモブでもなんというかええな!」

「痒いところに手が届く台詞回しなのです。メインのキャラクターはより深くかっこよく描かれているのです。本作はあるしゅキャラクター物と言っても過言ではねーのですよ」


 割引されているサラダ巻きに、追いがけでマヨネーズをたっぷりとかけるとそれをマフデトは一口で食べる。


「この時間に喰うサラダ巻き超うめぇのですよ!」

「おっ! マフデトさん。アレンジか! ……じゃあコンビニの浸かりすぎたおでん大根最高の食い方教えたるわ!」


 ドンとアヌが置いた物はおでん大根を衣で揚げた代物。マフデトは目が点になる。


「な……なんですかこれ? これ揚げたらダメなやつなのですよ」


 作り方。おでん大根をおでんの汁をよく吸わせる。よく水を切る。衣をつける。揚げる。辛子マヨネーズをつけて食べる。

 恐る恐るそれを口にしたマフデト……


「う、うめぇのです! 何これ! こんなの食べた事ねーのですよ!」


 コンビニ専用の炭酸飲料。製造元を見てはいけない、メーカー名も書いてあるし、ちゃんとした別名で販売されている物のOEMなのだ。それを飲みながら夜食を楽しむ。

 ふと寝転がりながらマフデトはアヌに尋ねる。


「本作は視点移動を繰り返すのですけど、三人称の単一と一人称の単一を使い分け、たまに二人称をぶっこんでくるのですよ。正直、三人称を用いた文章の方が読みやすいと思うのですけど、Webの小説は一人称が人気なのは何故なのです?」


 こればかりは好みの違いというべきなのかもしれないが、大多数を一人称として書かれる物が好まれる理由はただ一つ。


「読み手=書き手という状況が起きてるからやで、自分は三人称の書き手や! という人もおるかもしれへんけど、圧倒的に一人称で書いている作者の方が多いねん。結果としてノウハウや、近い作品や作風を好む結果、マーケット的には一人称の方が受けるっちゅー事やな」

「ほぉ、なるほどなのですよ」


 統計的なお話であり、アヌは製本に関わるような場所にいる為、割と正確な回答であると言えるのだが、一人称は心情の伝わり方に強く表現できるし、三人称は情景に関して表現を深める事ができる。どちらに重きを置くかで人称を変えてみるのもいいだろうし、本作のように人称や視点移動は自由に行えばいいと思う。

 結果としてそれが読みやすいのか、読みにくいのか、合うか合わないかは読者に委ねるところなのだ。


「戦闘兵みたいなのが、コンバットナイフだけで向かってくる描写ってよくあるのですが、これって強いのです?」


 ナイフ。当然ゲリラ戦においては殺傷能力はほとんどないだろうが……いわゆるCQC、室内戦においては無類の強さを誇る。

 よく、最強の刃物は何かという問答をすると、必ずサムライブレイド。日本刀という物が名前を連ねるが、侍と特殊な訓練を受けた兵士が激突した場合。どちらが勝つか?

 真剣勝負なら、特殊な訓練を受けた兵士は瞬殺されるだろうが、殺し合いであった場合。免許皆伝してようが、どんな剣豪。宮本武蔵であろうと、瞬きをする間も与えずに特殊な訓練を受けた兵士は殺してのけるだろう。

 コンバットナイフは汎用的であり、単独戦闘の殺傷能力は銃を遥かに上回る。


「まぁ、最強やな。ナイフの傷は治りにくいし、致命傷になりやすい。殺害するよりも戦闘能力を奪うという事に重きをおけるし、銃と違って弾切れもせーへんから、ナイフの方が好きという変態みたいな軍人もおるくらいや」

「しかも恐れを知らぬ兵士なのです。超こえーのですよ。この組み合わせはアヌ兄様的には?」

「二重丸やな。命令に忠実で感情のない戦闘兵士とアーミーナイフ。絶対に戦場で会いたくはないわな。知っとるか? マフデトさん。銃よりもナイフを向けて脅す方が人はびびんねん。なんでかわかるか?」


 マフデトはそれに関しては聞いた事があったので知っていた。それ故に自分の知識をひけらかすようにアヌにこう答えた。


「ナイフの方が潜在的に怖さや痛さを知ってるからなのですよ!」

「おぉ! よう知っとるなマフデトさん! そうや、銃なんて警察とか軍隊とか特殊な仕事してる奴しか実際の怖さなんて知らへん。方やわし等は包丁しかり、ナイフしかり、刃物は鋭くて怪我したら痛い。という事くらい知っとる。それが恐怖感を煽るわけやな」


 これも数字の統計の話である。例えば目の前で銃で誰かを殺された人であれば銃の恐ろしさは語る必要もないが、治安の悪い国でさえ銃の事件に巻き込まれる人は運がない。


「アメリカの某天才博士は絶対に作ったらあかんと言った無人兵器。そして人間兵器な? こういうミリタリー作品っちゅーのはできる事。できない事がはっきりしとる。奇跡を作品に塗り込もうとしたら、偶然であろうとなんであろうと、フラグを用意せなあかん。そう考えると神からチートもらえる奴は楽やな」


 アクションである。ピンチの時に偶然そこにあった武器を拾う。施設の老朽化により瓦礫によって九死に一生を、敵に攻撃によりできた穴より脱出など、アクションによる奇跡、ご都合主義等は先に伏線を用意する必要があり、なんで? という現実に引き戻す要素があってはならない。


「例えば乱戦している状態でその辺に落ちていた武器を拾うとかだとドラマがねーですからね。伏線の中にもドラマを用意しなければならねーとか、結構面倒なのですよ」

「アクション映画の監督と、アクション小説を書く作者は似とるのかもな? 物語の大筋を決めると、どういうギミックでそれらを動かすか、どういう舞台装置を用意するか、そんなクソ面倒な事を楽しんで考えるんやろ。推理小説家はトリックが降ってくるとかいうように、こんなアクションの構想がある。じゃあ使ってみよか! みたいになるんやろな?」


 アヌがそう言ってファイブミニみたいなコンビニ専用のドリンクを飲みながらマフデトを見ると、もうすでにマフデトは寝息を立てていることに掛け布団をかけてこう言った。


「おやすみな? マフデトさん」

サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』本作を読んでいると、毎度こういうギミックが洋画の構成にはあるのですねという部分を同時に感じるのですよ。本作でも語る通り、映画の流れという物から小説作成を学んでみるのもいいかもしれねーのですよ!

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