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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第三章 『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』
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名称決定の考察と総集編の今と昔とゴーヤチャンプル

私の友人が世の中が消えてもう一週間くらいが経つのです。よく、連絡しなくなる奴じゃなかったとか、普段の生活は普通だったとか証言されるのですけど……私、その人物の事よく考えるとあまり知らねーんですよね。


ちょっとミステリーなのですよ

 炊飯器よりメロディが流れる。ご飯が炊けたのである。シーサーが本場のソーミンチャープルとゴーヤチャンプルを大皿に乗せて持ってきた。


「おぉ!」

「ちょーうまそーなのです! 頭の中、ショタ萌えしかねーキチガイだと思ってたので、少し見直してやるのですよ!」


 マフデトはお客様用のお茶碗にご飯をよそいアヌとシーサーに手渡す。するとシーサーはマフデトに丼を渡す。


「まーふー、くりんかい入ってぃくぃみそーれー(これに入れてくださいな)」

「てめっ! これ、ソーキソバ入れる奴じゃねーのですか? まぁいいのです」


 三合のコメを全部をよそうと、マフデトは念のため無洗米をジャーに入れてさらに五合コメを炊いた。


「追い詰められた人間は幻想を見るっつーのはストレスの事なのです?」

「そうやな、訓練が足らん兵隊もストレスは起こすの」

「英雄にして狂人……ドラゴンもそうさねー。基本的に革命を起こす連中はこう言われるよ。一人殺せば殺人鬼……」


 十人殺せば英雄だ。という物だ。あえては言わない。今の世で一人を殺した者には誰も見向きもしないが、多くの人間を殺した犯人には必ず、少なからず肩を持つ者が現れる。それがシンパとなり、組織化すると言わずもがな。


「世の中には二つの狂人、もとい英雄がいるって知っとるか?」


 アヌの話は面白い。シーサーもマフデトもバーンズという人間を知る為に新しい情報を頭に入れる為に耳を傾ける。


「今を見る連中やな? 要するに政府批判とかをしたり、クーデター起こす奴らや、それと未来を見据えた行動をする連中。某国がいろんな国の港を次々に奪っとるやろ? まぁ、あんな感じや。今を見る影響力は竜巻みたいに局所的には被害が大きい、逆に未来を見据えた影響力は台風や、バーンズはどっちなんやろな?」


 第二章の時点ではどちらとも取れるバーンズ。


「下水道のワニ……そういえば英国で本当に下水道にワニがいたのですよ」


 悲しいかな射殺される運命となり、何故そんなところにワニがいたのかは謎だが、本作でも語られるように米国ではよく話のネタや、子供を怖がらせるネタとして使われる。予想すると、都市伝説に倣い愉快犯が下水に元々飼っていたワニを流したのではないかと思われる。


「昔のバイオハザードにもおったよな。ガス管咥えさせて撃ったら一撃で倒せるやつ」


 アヌがそう言うが、マフデトもシーサーもはてなという顔をするので、アヌは泡盛を一献。

 そしてご飯と一緒にゴーヤチャンプルをいただく。


「知らんかー、まぁええわ。うまっ! お前らも食え食え!」


 炒め物とご飯という組み合わせはまさに悪魔的である。糖と油で三人は脳内のベータエンドルフィンが分泌される。マフデトはお酒を飲めないので、ご飯をパクパクと食べ、麦茶を、アヌはオリオンビールを、シーサーは北谷をガブガブと、三人が一旦箸を休めた時にシーサーが静かに語る。

「たうぇーワニかだるぅくとぅーあん?(二人はワニ食べたことある?)」

「は? テメェ、マジで日本語しゃべるのですよ!」


 そう言うマフデトの頭をガシガシと撫でながら、アヌがシーサーの話をサポートした。


「マフデトさんはないと思うけど、ワシは食うた事あるでぇ! なんてゆーか鶏肉みたいな味やの! まずくはないけど、そんなにうまくもないな。ジョンも食うたったらええねん!」


 アヌは冗談を言うが、恐竜みたいな怪物級のワニを相手だ。そして爬虫類としてはワニは大分頭がいい。本作にもあるように、ワニは共食いを行う種。劣勢形質を共食いして種の存続をして白亜紀からその姿をほとんど変えなかった神話の時代よりも前から存在する怪物である。

 こと生命力においては群を抜いている。


「流石にドールも逃げるが勝ちなのですよ。こういうところなのですよね。超兵でありながらも、流石に怪物や猛獣相手はヤベェのです」


 かつて、アメリカ人のハンターにもっとも危険な猛獣は何か? と聞いた時、口を揃えてこう冗談を言った。“ライフルを持ったハンターさ“と、要するに人間は銃無くして猛獣とは対等に語れない。

 語ってお腹がすけば、目の前の本格沖縄料理に舌鼓を打つ。ソーミンチャープルはミミンガーと紅生姜で炒めてあり、とてもうまい。


「人狩り用に、二足歩行機械がモナリザ。と言うのは実に趣があるのですよ!」

「ほぉ、なんでや? マフデトさん」

「モナリザはどこから見ても目が合うのです。常にマークしてくる。そして一応男か女かわからねー。さらに作者は天才ダヴィンチなのですよ」


 総称する。性別不詳のセンサーがついたAI。


「まーふー、うむさ〜かんげーやんやー(面白いこと考えるね!)」


 これはマフデトの勝手な想像ではあるが、天才ダヴィンチ由来の絵画名の兵器そしてその絵画は男なのか、女なのか未だ議論が続くモナリザを人型兵器の名称に選んだのであれば、実にヨハネの予言のようではないか……

 あまり話が脱線するのもよくないので興味がある方はヨハネの予言を調べるといい。


「まぁ、でも日本って戦犯戦犯言われとるけど……ほんまに日本が世界にやらかした事は戦争云々よりもゲリラ教えた事やな」


 日本は平和ボケをしているとよく言われるが、戦時中の日本は軍事大国であり、世界一戦艦の類を保有していた事はあまり知られていない。世界地図もそんな日本を皮肉って小さく描かれているのだが、実のところ日本は割と大きな国。帝国軍人は世界最強の軍隊と未だに言われている。


 硫黄島の戦いなどのゲリラ戦、戦死者の比率を米国と日本で割り出してみれば、いかに帝国軍人のゲリラ戦法が恐ろしかったがわかるだろう。

 ちなみに、北海道をホームにする日本国最強の第七師団、某国の最強師団青龍部隊瞬殺できると言われる最新兵器を持つこれら機甲師団が七十年以上前の日本帝国軍と戦えば負けるだろうと言われている。

 また、米国グリーンベレーはもはや存在しない帝国軍をモチーフにしてあり、あるいは仮想敵に作られたスペシャルフォースである。


「アヌ兄様、ドールズと戦えば帝国軍人は勝てるのですか?」

「さぁ、どうやろな、流石に人間のスペックがちゃうからな。ただ……福岡四師団久留米特化連隊やったらわからんで……」


 爆弾三勇士として知る人とぞ知る命知らずの部隊である。米軍が震え上がり、裸足で逃げ出すほどの力を持っていた。アヌはそんな事を考えながらマフデトとシーサーに語る。


「米国の兵隊は基本的に帝国兵をベースにしとるからな。ドールももしかしたら、そういう訓練受けとるかもな……一言で言うと、多分身体能力はまぁドールズには絶対勝たれへん……けど、心の部分やな。そこはドールでは帝国兵には勝たれへんやろな。ワシらの話も逸れたけど、作品の話もそれとるな丁度ええわ! 一旦頭をクリアにしよか!」


 本作は二人称がたまに挟まれる。これはメリットとデメリットを同時に孕んでいる。Web小説を好む読者は、案外そういう物だと受け入れてくれる物だが、製本した本を親しんできた読者は突然の強制的シーン変更にストレスを受ける。


 かつてのテレビアニメにおける総集編だと思ってもらえればわかりやすいか?


 昔は話数が異様に多かったので良かれと思って、今までのおさらいをしており、今はアニメ制作が追いつかない為に差し込まれる。

 クリエイターの考える事は意外と似ており、小説作者も作品世界を楽しんでもらい、より理解をしてもらおうと、脱線した話を差し込むか、あるいは作品が追いつかないか、うまく筆が進まないので脱線した話を入れる。

 古書店『ふしぎのくに』ではマフデトさんが後者をよく行うので、年長組に怒られる。


「……あれは仕方がねーのですよ! 自分が納得いく物が書けねーのに続きを公開できねーから作品を上げてるのです! でもこの差し込みは脱線というより、閑話なのですよ。バーンズがいかにしてテロを……いや、この場合は革命と言った方がいいかもしれねーのですよ。それを実行した理由。人によっては頷けるかもしれねーのです」

「アメリカがテロリストを根絶やしにするのに、爆弾の父を使ったよねー? 本作の『D.A.S.T.O.』という兵器がどんなだかわからないけど、昔のアメリカならやりかねないさー!」


 言葉がわかりやすくなったとマフデトが思っていたら、北谷を再び飲み始めているシーサー。現在の最強兵器は各国後生大事に抱えている核兵器となるわけだが……本作が相当する兵器が『D.A.S.T.O.』と呼ばれている超兵器なのだろう。無に帰すというバーンズの表現からして、かつて日本が兵器転用できないかと研究していた中性子爆弾。いわゆる原子核破壊兵器に相当する物ではないかと予想される。


「アヌ兄様は兵器とかの話になると止まらねーのですよ! 軍事マニアなのです!」

「アヌさー、すごいねー? えらいねー!」

「いや、アンタら、ワシがこんだけ語りたくなるっちゅーのは、経済面や社会面も本作はよう米国っちゅー国を独自の見解も入れながらしっかりと、日本人に意識させる作りにしとんねん! わかるか? これは米国人じゃなくて、日本人がこういうアメリカ! という先入観を貫かせてくれる背景があんねんって、だからこういうワシらの話が盛り上がるんやんか!」


 こう考えて欲しい。海外の日本というものは私たちからすれば「ん?」という物が多くあるだろう。だが、あれは現地の人からすれば理想の日本なのだ。親しいアメリカという物は実はリアルのアメリカではなく、私たちが聞き知った。見知った映画やドラマに出てくる人達なのだ。妙にテンションが高く、コメディーに特化して、ジョークが寒い。が……実際、いねーよ! ねーよ! というそんな人達に私たちは魅力を感じ、親しみを感じ、続きを楽しもうとするのだ。

 ここで、本来のアメリカ人の気質を書いておこう。勤勉で、丁寧で少し几帳面で神経質……割と保守的。


「案外、私たちに似ているのですね……」

「チガウヨー、まーふー! 人間っていうのは地域性や文化は違うけど、大体同じような行動をする人の方が大多数さー」


 という事である。食事が終わるとマフデトは空になった皿を片付けてお風呂を自動で沸かす。そしてシーサーにこう言った。


「テメェ! もういい加減帰れなのです!」

サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜 本作は普通に面白いのですよ。ただ、場面が行ったり来たりすることが苦手な人もいるので好き嫌いははっきりするかもしれねーですね。逆に言うと編集された時、省かれてしまう部分なのでディレクターズカット無しだと思うとお得じゃねーですか?

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