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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第三章 『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』
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引き算のテクニックと読者を置いてきぼりにする魅力

さて、この前セシャト姉様に連れられておススメのコーヒーをご馳走になったのです。

頭がおかしいと私が思ったのは、カフェ巡り、1日で5店舗は流石にやりすぎなのですよ。朝から夕方まで、朝食から夕食あでカフェで過ごした事はきっと今後ないのですよ

 母屋にてマクドナルドのハンバーに三人、歯を入れながら語る。


「本作のきったない描写は、欧米の本質といってもいいのですよ」

「せやな……少し前に中東の武力組織がおったけど、残酷さ、戦争大好き民族としては欧米には敵わへんな」


 本作は、人によっては不快感をもろに感じるような描写が多く描かれている。が、作品内の世界観を感じさせるのには重要なファクターであると言えるだろう。暴徒が起きる。凄惨な事が日常という事はもとより、各メインキャラクター達の過激な発言や行動。

 世界が歪んでいると当然そこで生きる人々も歪む。


「まぁ、私が生きてきた場所も人買い、売春、麻薬の運び屋。子供のできる仕事なんてものは選ぶ程のこともないクソッタレな物が多いしな。大陸は個で、欧米は群という違いはあるのかな。ドールズはヒーロー、いいじゃないか」


 Lサイズのシェイクを吸いながら中国少数民族の木人が三つ編みをといてからぎこちなく笑う。


「木人ちゃん、何がええんや?」

「アメリカ人という連中はメンタルは弱い割に、勢いと感受性は世界一だからな。憧れ、そして讃えられる相手がいるという事は殺伐とした世界においての光だ。ドーズルがヒーローなら、まだこの物語のアメリカは死んじゃいない。むしろこの国の国民は、こういう状況になって初めて、立ち上がるかもしれないぞ」

「ロボコップの世界観のデトロイト、或いはバットマンのゴッサムみたいな世界観でも必ずヒーローはおるもんな? 本作は、キャラクターを人間離れさせるという事に注視しとるな? ズレとる、若干ヒールじみた描写が多い。ミラも可愛い子やのに、やや不潔。いや、日常っちゅーもんを気にしない行動やな」


 そう、ちょっと大袈裟に、わざとらしいくらいの演出。それがまた90年代、黄金期の洋画を思わせる。これは物語なのだなと、そうエンターティメントに思わせる為に、カッコいいと、また不快感を感じさせるのかもしれない。

 物語を楽しませるスパイス、リラックスとストレス。

 本作は間違いなく人を選ぶだろう。


「作品世界に反して、作品構成は素直な作りだ。わかりやすくて、頭に入ってくる。故に、見せたいシーンやキャラクターの魅力が率直に入ってくるな」


 チキンタツタを食べ終え、マフデトが用意したチリソースにポテトをつけながらそれを食す木人にマフデトはパチンと指を鳴らした。

 牛乳を飲みながら、


「木人はよくわかってるのです! 本作はカッコ良さ以外にも世界観に合わせた環境、描写。そしてリアルをしっかりと詰め込んであるのですよ。カイルもミラもジョンも少しばかりイカれやがるのですけど……仕事、戦になると違うのです。これはよく躾けられた軍人その物なのです」


 かつて、米国の某部隊。

 ここではスーパーフォースと言っておこう。そこで十五年程活躍していた方と話す機会があった。曰く。普段はなんら変わらない。ギャンブル好きだったり、女好き、なんなら口に出せないようなタブレットを使う物。無法者も多くいるのだが、ことミッションになると、機械のように彼らは変わると語る。


「そして、この作者はよくわかっている。戦争であれば強いのはフルサイズだが、こういう狂った暴徒鎮圧には、ショットガンが一番だ。ダブルバレル、ソードオフか……現実的には及第点だな」


 木人がポテトがなくなった事で、マフデトが入れてくれたフレーバーティーの香りを楽しみながら言う。元大陸の殺し屋がそう言うのだ。

 それ故、マフデトとアヌは満点をもらうには何を使えば……? と疑問に思う。


「なんや、マシンガンとか機関銃みたいな方がええんか?」


 当然、日常生活で銃なんて使わないアヌとマフデトは木人の回答をまつ。


「もちろん、フルオートショットガン、カラシニコフだ」


 正確な個体名称はサイガという。状況にもよるが、暴徒鎮圧に向いているショットガンは反面、素早く操作すると高確率でジャムりやすいという難点がある。圧式によるマガジン装填も当然ジャムる事はあるのだが、当方の武器関連の担当者もニ百発程ハワイで乱射して一度もジャムらなかった為、信頼は強いだろう。

 しかし、木人は補足した。


「色々と狂ってしまった状態、まともに銃の供給ができているとも思えない。コピーカラシニコフやコピーマカロフは大量に出回るかもしれないが、ショットガン・カラシニコフは高級銃の一つだ。故にメンテナンスが楽な銃器が残っているという点を考慮すれば、この描写は満点だな」


 故にこのシーンではより簡易的、ジャムっても解体すら簡単なこの銃が選ばれていると思うと感慨深い。


「しっかし、嫌にスメルを推してくんな! 下水の匂いよりも酷い体臭っちゅーのもどないやねんな。気にはなるけど、作者匂いフェチか!」


 アヌはどちらかといえばノーマルである。故に、冗談としてそう言ったのだが、やはりここには冗談が通じない少女が、GI値がばか程高い海外製のバターピーナッツが挟まれたクラッカー。そんな物を齧り、木人が据わった目で言う。


「匂いが強い者は強いんだ。ある種、自己の主張だからな、体臭がきつい奴は今の時代は敬遠されるが、人間がもっと動物的だった頃は、ハーレムだったろうな。ちなみにアヌさん安心しろ。人間はストレスに弱い。どんな強烈な匂いでもその内なれる。故にカイルは少し敏感なのだろう。人間の臓物と排泄物を浴びながら、進軍してれば、その香りに酔いしれるようになるらしい」


 小説にしても漫画にしても、カッコいいキャラクターはより、カッコよく、可愛いキャラクターはより可愛く。という基本のスタイルがある。

 被せという物なのだが、ミラ一つとっても、彼女のスメルについて何度も情報として入ってくると……

 不思議な事に、


「ミラが魅力的なキャラクターに、個性的なキャラクターとして頭に入ってくるのですよね。引き算の被せというべきなのでしょうか?」


 マフデトがそう言うので、アヌは微笑ましくマフデトを見る。本作がいかに荒廃した世界なのか、十分後の未来があるかどうかという極限を表現にするのに、いかに治安が悪いとか、いかに人が死ぬとかそんな足し算よりも……


「なんというか、文化的でない非現実性を読まされる方が、やばい世界に感じるよな。諦めであったり、生存に、戦を主軸とした生き方をする事で3大欲求に関わる部分を引いているキャラクター達の行動と発言、ほんまに引き込まれるで!」


 例えば、チート系の作品は延々と足し算をした方が魅力的なのだ。有名な作品にワンパンマン等である。方や本作はアナコンダや、ブラックラグーン等の排他的引き算の魅力。


「ワシもマフも作品書くけど、引き算はあんまり上手く使わへんもんな? どちらかといえばワシは泣かせ芸やし、マフは世界系やもんな? レシェフさんがよう使いこなしてる感じか?」


 レシェフさんの書く、元米国軍人が小学生に転生し、同級生が首吊りをしている下でディキシーをバックミュージックに踊る作品があるのだが、本作の作者とレシェフさんは気が合うかもしれない。


「やめるのです! この前、リアルになろうバンされたのですよ! 本作でもギリギリ、大丈夫な範囲で作品を展開しているのです。それは、読者に読ませる為、運営からの邪魔をさせないれっきとしたテクニックなのです!」


 本作はストレートな下衆な発言も多いが、直接的にリアルタイムの表現からしっかりと外してある。

 そしてもう一つ特筆すべき事がある。


「この作品、時系列をタイトルにまとめてしまっているんだな。これの方が強制的で違和感がないな」


 口寂しくなった三人は、アヌがお土産に持ってきた、鰻の骨煎餅をお茶受けに物語を読み合う。そんな中でレシェフが気づいたその件について。


「あー、確かにのぉ! 大体、視点が変わったり、人称が変わったり、時系列が変わったりすると、前書きとか、本文内に入れる作者は多いよな。説明的でわかりやすいねんけど……あれされたら、感情移入しにくいねんな」


 ご丁寧に、ここからは一人称です。とか、○○の視点になりますとか書かれているアレである。非常に読者の事を考えた配慮である反面、どうしても意識が削がれやすい。


「ある程度は読者を置いてきぼりにしたり、強制的に、こういう話なのです! と突きつけるのも大事なのです。作品という物は読者あっての物である以前に作者あっての作品なのですからね」


 そういう事である。そして本作の作者は、リアリティにも重視している。こちらは当方、古書店『ふしぎのくに』も同じ感性を持っており、存在する物の名称は基本そのまま使う。

 DCコミックスや、バットマンのくだりなどである。例えば、本作の文章にバット○ンという表記や、あるいはオリジナルの作品名などを入れた場合。同じく感情移入しにくくなる。

 そして、当方のアヌさんはDCヒーローが大好きである。バットマン対スーパーマンを三回観に行った程である。そしてとてもいい父とエディのお話の中アヌは割って入った。


「知っとるか? バットマンって頼まれたわけでもなく、唐突にゴッサムシティの犯罪者しばいとるから、あいつも実は犯罪者やねん。それも私的な理由で暴力行為を繰り返しとるやろ? これ実は公式でも言及されとる豆知識な」


 バットマンは本当にただの人なのに、自らの肉体と科学の粋を持って異能力を持つ怪人を倒したり……なんとあのアメリカヒーロー最強のスーパーマンともただの人間でありながら互角に渡り合った。ある種、今の日本の創作物が忘れてきてしまった物が垣間見れる。


「本作もバットマンビギニング以前や、昔のジャッジドレッドとかの世界観やキャラクターにもろ影響されとるよな。よっしゃ! 一旦映画鑑賞に変えるでぇ!」


 テンションを上げたアヌに対して木人は巨大な配達のリュックを背負って、


「私は次の仕事だ。マフデトさんご馳走になった」


 そう言って帰って行く。アヌはマフデトをじっと見るが、「映画は見ねーですよ!」

 と言われたので、続きを読むため、母屋の冷蔵庫からビールを持ってきた。

『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』本作は敵を、悪をかっこよく見せる芸当には脱帽なのですよ。本作の紹介への反響も中々あり、やはりこういうアクションはみんな好きなのですね! 3月は去るのですよ! 置いていかれないように追いかけるのです!

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― 新着の感想 ―
[一言] ありがとうございます! バットマンは確かに影響を受けました!
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