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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第三章 『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』
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古き良きアメリカ映画の雰囲気を楽しみながら

三月なのです。三月は去ると言うのですよ! 私は個人的に一つの別れを経験したのです。きっとこれは慣れる事はないと思いますし、慣れたくもねーと思うのですよ。皆さんは、友人や家族、恋人。いつでも会える人がいつまでもずっといるわけじゃねーですから、大事に、仲良くしてくださいなのです!

マフデトは本日、古書店『ふしぎのくに』の母屋に相容れぬ二人。一人は関西の古書店『おべりすく』の店員。アヌ。

そして……


「マフデトさん、こちらはどちらさんや?」

「はじみましてぃうやっちーシーサーやいびーん!(初めまして、私はシーサーです)」


 そう、マフデトを狙うギャルの一人。

 シーサー。

 またよく分からない言葉で喋るなとマフデトは思いながらいつ帰るんだろうと思っていたら……


「あぁ、こらご丁寧にどうも。ワシはアヌやで! よろしくなシーサーちゃん!」


 マフデトは驚愕した。

 通じたのである。

 アヌはうちなー口をある程度理解して、シーサーと楽しくやっている。

 そしてチーンと音が鳴った。

 コストコのモッツアレラチーズのピザ。マフデトの大好物なのである。これをアヌと一緒にWeb小説の話でもしながら食べようと思っていたのだ。


「おっ! ピザ焼けたんか! ほな食おか?」

「これ! いっぺーすちぃ!(これ、一番好き!)」


 もっちゃもっちゃとピザを食べるアヌと、シーサー。

 マフデトはたまにやってきたお兄ちゃんを他の人に取られたようなそんな気持ちになりながら、自分もピザに口をつける。そして秒で機嫌を治した。


「うめぇのです! そうそう、今日はアヌ兄様とWeb小説の話を沢山してぇのですよ! 何かおすすめはあるのですか?」


 アヌは目の前のマフデトを見る。ドイツ軍人を模したような制服を着たショタ。そして、自分の横でピザをもふもふ食べる。

 黒髪、褐色の黒ギャル。彼女は沖縄から来たのだろう。アヌはゼロカロリーのコーラを一口飲むと、少し目を瞑ってから話し出した。


「せやなぁ、こういうみんなで集まって昔はようDVDとか見たよなぁ、特攻野郎Aチームとか、ホットショットとか、おもろかったよなぁ! まぁ、そんな古き良き洋画の設定を持ちながら、現在のクリエイターの視点で描かれた『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』」

「おぉおおおお! なのです!」

「????」


 マフデトはアヌが言った作品の読者であり、興奮しているのだが、シーサーはWeb小説を知らないので、ただただハテナを頭に増やしていく。


「知っとるか? テロリストは物語を作る上でありがたいもんやねん。かつて、ガンナーはネイティブアメリカン。インディアンを悪者にし、実はインディアンは悪くないと歴史が証明されたら次は宇宙人と戦う事にした。が、それも飽きられると次は、テロリストや! 公式に世界の敵やからな! 本作もそんなテロリストと戦うわけやけど……世界中のテロリスト、実は元々どこが発端か知っとるか?」


 アヌの話は面白い。

 それにマフデトも、シーサーも「しぁびらん」と知らないと言うので語った。


「日本の極左派、赤軍派が、今でいうテロの仕方イスラエルで教えてん。ただし、当時のイカれたそいつらの信念まで受け継がれよったから、えらい事なってるんや。まぁそんな信念なきテロリズムを今の時代はテロリストというわけやな! そんな連中、ウィルス兵器を持ち出す世界規模のテロリストの首謀者暗殺に、遺伝子をいじった超兵、ドールズが任務に送り込まれたところで始まる」


 おぉ! とマフデトにシーサーは拍手をする。


 狙撃銃による殺害を試みようかとするが、実際の軍警や、こういう対テロ部隊による暗殺とは殺害であり、確実にクリアした上で、至近距離での射殺の事を言う。


「スズメバチの駆除ってカッケェのですね!」

「まーふー。テロやーれ、ミツバチやあらん?(マフ、テロってミツバチじゃない?)」


 とシーサーが言うので、アヌは頷いた。


「おぉ、シーサーの姉ちゃん、よう知っとるな。テロリストの組織形態をミツバチっていうよな。えらい古いスラングやで、まぁ、ブーンとうっさく飛んでるドローンやからスズメバチなんやろな。で、敵のバーンズや。こいつは大物やな? テロリズムは信念か、ワガママを通す奴がが統べる組織が強い。そして何故かそういう奴にはシンパが集まりやすいんや」


 本作は、現在の世界よりも治安が悪く、技術が進んだ世界をして、超兵器としての超兵が敵味方と存在する。


「実際、強化兵。いわゆる超兵は世界各国で研究されとった。正直、戦場ストレスを奪い去るって意味でタブレット。要するに抗うつ剤を使うのが今やな。一応ジュネーブ条約で、人体改造は禁止されとる。これも悲しいかな、旧日本軍や旧ソ連軍もお偉いさんから死なない兵隊を作れと無茶言われて研究した時期はあったらしい。作品においてこの超兵が出てくるのはそれだけでアンチテーゼに思えるの」

「しかし、こいつら、戦場にいるのに若干お気楽なのですよ!」


 これには、唯一の本土決戦を経験している沖縄のシーサーが語り出した。

 少し静かにウチナー口もなく。


「まーふー、命のやりとりをしていて、殺す連中は殺す覚悟をしている物だよ。湾岸戦争では戦場をみた古参兵がテレビゲームみたいだって揶揄したんさー、お気楽なくらいじゃないと、まともに戦えないんさー」


 いきなりどうした! とアヌとマフデトは見ていると、シーサーは突然寝息を立てて眠り出した。毛布をかけてしばらくシーサーを見てから大丈夫だろうと話を続ける。


「マフデトさん、ビーム兵器や! どうやら、人間をそのまま切り裂くような凶悪な兵器や、実際ビーム兵器は記載はそのまま心停止をさせるような地味な用途になるやろと言われてんねん。なんでか分かるか?」


 圧倒的に火薬の兵器の方が威力と汎用性が高いからである。

 本作の電磁砲の威力は凄まじい。が……これはまさにバイオテロのレベルのだろう。作中では電磁ビームで焼かれた人体の異臭を放つシーンがあるが、瞬間的に焼き切ってしまうレーザーメスを想像。後には放射能汚染と同一の電磁波汚染されている地帯となるだろう。


「それで、ドールズなのですね」

「まぁ、人を殺す兵器は毒やウィルスが一番やろーけど、安全かつ確実なもんはやっぱり実弾やろな。跳弾や誤射で死ぬ人数なんて限られてるやん」


 案外えげつない事をいうアヌにマフデトは驚愕する。レールガンも今後戦艦に主砲として実践配備される議論が行われるが、同じく大型モーターによる電磁波汚染が問題になってくるだろう。

 にしてもである。


「バーンズカッケェのですよ! 私はどちらかというとヒーローが好きなのですが、このバーンズはグリザイアのオスロみたいなのです!」


 超兵部隊の突入に対して、紳士的で、野生的でそして圧倒的な戦闘能力でドールズに迎え撃つテロリストの首魁バーンズ。敵を魅力的に描くというのは作品においてはやはり才能というべきだろう。

 もちろん、主人公のカイルやミラもカッコよく、生き生きとしているのだが、それらが束になってかかって一筋縄ではいかない敵を造形する。

 かつて、古書店『ふしぎのくに』で何度となく議論され語られた事だが、主人公を作る熱量、これに匹敵するほどの熱量を込めて作られるものがヴィランなのだ。


「せやな、バーンズは確かにやばいし、かっこええ、こいつほんまに倒せんのか? と思わせられて、作者もごの字やろう。で、バーンズ逃亡に対して、悔しい、そして生きててよかったと思ったところ、ミラが注文した戦場でも届けてくれるハンバーガー、これセットいくらすんねん!」


 実際に日本円で我が古書店『ふしぎのくに』財務担当のシステム部がこのセットの価格を算出した。恐らく、配達用ドローン等を使用し、このドローン本体価格が大体日本円で300万。そしてその破損や配達保証の保険金が月々10万程。

 かつて一杯200mlの牛乳をアメリカの富豪が搾りたてを海上沖に注文した時(ドローン等はない)の時で一万五千円程だった事。

 人件費の排除と、危険地帯である事。大体アメリカはバーガーを注文するとポテトとシェイクはセットでついている事が多い(クーポン併用など)。ただし、外食産業は大体一食10ドル。バーガーは5ドル。


「7500円から15000円くらいのセットとちゃうか?」

「悪魔みてーに高ぇ……と言いたいのですが、戦場ですし納得の価格なのですよ」


 二人はハンバーガーが食べたくなり、マックデリバリーでマックを注文する。そして続きを語る。


「デザインチャイルドといえば、あれやな。おっかない重工棚田ん所の社長の妹」

「アリアなのです? そういえばあいつもそういう出生だったのですよ。それにしてもロス・エンジェルス。天使達が堕ちた街……バーンズこいつ日本人じゃねーですか?」


 そう、これは実は面白い。ロサンゼルスを日本だけはロスと呼ぶ。略語は世界中ではLAだ。そしてドロップかダスト、或いはフォール、アウト。このあたりが堕ちる。ただし、日本人はロストを失う、落伍と翻訳できる。

 しかしながら、天使達の街、ロサンゼルス。天使達が落ちてきた街と訳すと、アメリカ人は喜ぶかもしれない。

 本作とは真逆の意味になるが……


「言葉遊びが日本人は好きやからな。デザインチャイルド発表から、八年後バーンズの声明発表、わずか七年で、対応するスーパーフォースの編成。まさにアメリカらしい速さやな。これは多分、共和党の大統領やったと考えてええな……今がバイデンやから、二期目でワンチャンこの世界や」

「何故共和党なのです?」

「戦争大好きやからや、これからようやく本作は始まるわけや。ほんまにええ作りしとる! この三話目で期待しかないやろ?」


 マフデトも『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』は読んできた。本作はある意味、こういうのが読みたいのだと……最近のヘタれたアメリカの映画業界に意を唱えるような作りにも思える日本人が楽しみたいものがそこにある。


「マックデリバリだ。あけろ!」


 聴き慣れた声が玄関から聞こえるので、マフデトは取りに行く。そこには神保町のバイト戦士。

 中国系の可憐な少女・木人の姿。


「チキンタツタのセット、四つ。三千二百円だ!」

「木人、てめーの分もあるのですよ! 食っていくのです」

「……わかった」

「しかし、四分の壱から考えると。ミラが頼んだセットの十分の一くらいの値段なのですね」

「何言ってるんだ?」


 木人がそう言うので、マフデトは嬉しそうにスマホの画面を見せて、一緒に作品を楽しもうと誘う。

 

『サヴァイヴ・アライブ ―殺戮人形の矜持― 著・玉屋ボールショップ』

今回は、SF、ミリタリーを募集し、師匠ちゃんが推した本作を選ばせてもらったのです。独特なのに、なぜか知っているような世界観、そして魅力的な数々のキャラクター達。そして、目まぐるしい時系列の展開。ぜひ、楽しんで欲しいのですよ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 驚くほど詳細に分析されておられますね! ありがとうございます!
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