書いていない内容を考察しない事も正道
「不思議な世界観とわんは考えるよー」
シーサーはトーフチャンプルと沖縄版炊き込みご飯、じゅーしーを作ってマフデトと自分の夕食とする。シーサーの家事スキルに少々驚きながらも世界観の違和感についてマフデトは尋ねた。
「何が言いたのですか?」
「戦争が形式化していて、戦略と戦術が重視されなくなったーって異常よー。オリンピックのように戦争を捉えているなら御前試合でもいいさー」
「まぁ、言われてみればそうなのですよ」
戦争というのは政治活動の一環の為、本来戦略と戦術が重視される。というより戦争の理由という広義の意味で主張を通す為の超暴力。それに勝ち、利権であるとか、自国の考えを無理やり通す戦略と戦術が展開されて然るべきだが、本世界において騎士道が重視されるという事で、政治活動の一環でありながら、貴族のお遊び感覚が混じっている。結果、兵士と戦場をゲーム盤とその駒に考える者もいると捉えるべきか?
「一つは魔物の存在かもしれんねー」
魔物を害獣と捉えた場合。恐らく地域的には他国間で争っている場合ではない脅威の自然獣害、この場合は魔物害的な悩みの種になるのだろう。ことオーク、ゴブリン、オーガ等、定番三役者の連中が日本のファンタジーにおいて凶暴な怪物として現れる。
「私たちの世界なら銃火器があるので、オークだろうとオーガーだろうとドラゴンだろうと一撃なのですよ! でも、剣と盾の世界、魔法が主力兵器の世界においては魔物は確かにヤベェのですよ」
「そうとも言えんさー」
大抵、雑魚として狩られる魔物を一つ思い浮かべてほしい。続いて蝗害という物を想像してほしい。アフリカなどで良く起きるバッタやイナゴの大量発生。その大量発生した物が雑魚として狩られる魔物だったとしよう。
さぁどうなる? チートを持っているルードヴィヒクラスならもしかしたら全滅させられるかもしれない。現実世界では軍を動かして対処するも大半はどうする事もできないという。相手は虫ケラだ。食害されるだけで死にはしない。
が、魔物ならどうだろう? 撃ち漏らした魔物が突貫してくる。人間には体力や魔法の限界という物があるだろう。
結果としてはその集落は間違いなく滅びる。さらに厳しめに考えるとルードヴィヒは生存できるだろうが、その全てを守り切る事は不可能だろう。
そんな者を相手に頭を悩ましている政治家がただの人間相手の戦争ごっこに頭を捻るだろうか、と考えて見るのも面白いかもしれない。
「なんなら戦争ですら、対魔物の軍事訓練程度かもしれないよー」
「オーク襲来、こいつらって確か蝗害がガチでモデルになってるのですよね?」
「一説だけどねー。話を聞いた人が大袈裟に又聞きして生まれたのかもねー、本作には死神が存在しているというのが、ちょっと面白いんさ」
少し考えて、嗚呼とマフデトは理解する。邪眼の天使サリエラ、サマエル。ドラクエなら即死魔法のザラキの名称でも有名な天使だが、これら天使設定のモデルを作ったユダヤ・キリスト教の教えから考えると一神教なので、死神という物は存在しない。神以外は全て悪魔か人間か、天使かみたいな括りになる。
本作の世界観を垣間見た場合、少なくとも天使を統べる神と、その他の神概念がある事になる。これは日本という特殊文化圏に生きる人がかいた作品だからと切り捨てるよりはもう少し深く作品を理解していきたいと思う。
「ルードヴィヒは本世界においては恐らく超常現象レベルのチートなのですけど、流石に自身の限界、手の届く範囲を理解しているのは造形としてはしっかりしてるのですよ。バランスがいいのですよ」
「あんれんな?」
そうなの? と聞いてくるシーサーにマフデトはキャラクターの造形について少し語った。ファンタジー作品の主人公は目立って然るべきである。その為パターンとしてあり得ないくらい強いか、あり得ないくらい弱いか、物凄い美形か、太々しい感じか、このあたりはテンプレートとしてよく使われる。本作は物語進行上、ルードヴィヒがあり得ないくらい強い設定を取られているが、彼一人で世界を救えるか? というと、そういう役割ではない。彼の運命に与えられている仕事はあくまで騎士として、剣としての在り方。その為のチートや知識を盛り沢山持ってはいるものの、それ以上の事を行わない。
彼はこれだけの力を持ちながら王にはならないのか?
「ルードみたいな力を持った騎士王がいたんさー。残念ながらうまくは国は回らなかったねー」
恐らくであるが、ルードヴィヒは王にはならないだろう。それは彼の役割ではない。彼の役割はなんだろう? 恐らく、月並みな言葉だろうが、彼はヒーローなのだ。英雄という意味のヒーローというよりは、こうでありたい、こうだったら良い。と思えるところに彼の姿がある所謂正義の味方としてのヒーロー、それが双剣のルードという物語なんだろう。
「普通に日本円でという説明が入ったのですよ。昔の海外作品の翻訳見てーなのです。ルードヴィヒの一族は一体何者なんでしょうね?」
「順当に考えれば、ルードヴィヒの一族は転生者か転移者とかで多くの情報を持っているとかが順当なんさ?」
ルードヴィヒの技能は親やその親、祖父や祖母に聞き齧っただけという可能性はあるが、ならその技術や知識を持った奴は一体何者なのか? もちろん、一族のどこかでそういった伝説的人物にそれらを継承されたのか、あるいは本当にルードヴィヒの一族が発明したのか?
「この時点では書いてねーことを考えても仕方がねーのですよ。それにしてもルードヴィヒはできた奴なのですよ。身分の垣根の事もしっかりと考えているのです。今後の為に訛りを直していくとかにならないのが物語のいいところなのですよ!」
かつて、日本で一斉に言葉を統一した事があったのを知っているだろうか? 徳川家が国にその権利を返した頃、各地域のお偉いさんで会合をしたのだが、今と違い、日本という島国に数々の国があったわけでもちろん使う言葉が違いすぎて、全く通じなかったのだ。その為、日本語の統一を行い今に至る。方言はその時の名残なのだ。
「偏見的に田舎の言葉といえば東北訛りというのは絶対東京人の感覚なのですよ」
「かもしれないねー! うちなーもすんごい田舎さー、でもうちなーの言葉を、本土の人はちゅらかーぎーって言ってくれんさ!」
「北海道弁、関西弁、博多弁、高知弁、沖縄弁あたりは男子も女子も得してる系の方言なのですよ。でもこれらを異世界系のキャラクターが使っててもあんまりインパクトねーのですよ。そもそも沖縄の言葉使う異世界とかカオスすぎるのです」
マフデトは冷蔵庫から牛乳を取り出して、グラスにロックアイスを入れるとガムシロップを入れてアイスミルクを作るとシーサーに差し出した。
「この作品ちょいちょいおもしれーなと思うのが魔王を倒した勇者のレベルが83だった。しかし、これは少し盛ってあるってとこなのです。昔のロールプレイングゲームのラスボス倒す頃って大体カンストが99か100のところ、60レベル前後でクリアできる仕様になってるのですよ」
「ドラクエとかエフエフとかねぇー」
「まぁ、この作品の話をした時に、アヌ兄様や師匠ちゃんに聞いた話なんですけどね」
かつてのゲームで80レベル体まで育てる連中は暇人のレッテルを貼られ、今はカンストまでプレイするプレイヤーは廃人などと言われる事が多い。
当方の大人組からすると、本作の説明じみた文章はとても味があって面白いと好評である。
「この作品ではじゃがいもが主食なので、ドイツ的な、ペール的な料理がありそうなのですね」
「アルジュリア系かもしれないさー」
ジャガイモをすりおろしてホットケーキミックスに混ぜて焼くと、ジャガイモのパンケーキが出来上がる。本作やドイツ系をベースにした異世界作品の食事をしてみたいなと思ったら一度試して見てほしい。少し塩を入れて焼くのがミソである。
「肉屋がある。野菜屋があるという少しズレた感覚、いいのですね。そもそもルードヴィヒが住んでいる地域ではその感覚はズレてねーわけなのですけど。確かに、家畜を放牧してて、必要な時に潰せばいいし、普段は狩りに行けば新鮮な肉は手に入るのですよ」
「うちなーでは魚がそうねー、でも魚屋はあるよー」
「そりゃ、そうなのですよ。ほしい魚が簡単に釣れれば魚屋なんていらねーのですよ」
「ジャガイモがないというのは不思議さねー、魔法とかなくても簡単に作れるよー」
ジャガイモは半分に割って灰でもつけて適当に埋めておけばどこでもすぐに増える。その分土壌を殺しやすいが、ドイツが食糧難の時に命を繋いだのもこの作りやすさ増えやすさに一目置かれていたが、それ以上に強烈な芋といえば農林1号だろう。しかし、この手の作品はサツマイモ系はあまりでてこないのは何故だろう?
「さて、今日はこのくらいにして今日はもう寝るのですよ! 秋文が泊まっていくと思って、色々買い込んでたのですが、無駄になったのですよ。シーサーてめー、私の寝床に潜り込んできやがったらぶち殺してやるのですよ!」
「まーふー! 夜はこれっからっさー! 大人の階段登るんでー」
興奮した目でマフデトのベットの中に潜り込んでこようとするシーサーにマフデトは言った側からこれから虫ケラを見るような目でシーサーを見つめる。そして対泥棒、強盗用の装置を発動させる。枕の後ろにあるスイッチを押すと、罠が動作し、シーサーは害獣か何かのように天井にぶら下がる。
「今日は一晩そこで寝るといいですよ。このクソビッチが! なのですよ! てめーみたいな奴が沖縄のイメージを悪くするのです!」
そう言ってマフデトは仮眠所の電気を切った。
『双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~』読んでるのですか? 方言物でありながら全くブレない普通のハイファタジー、あまり笑いをとにいく事もなく、昔の富士見ファンタジア文庫を彷彿させる本作はわかりやすく読みやすいのですよ!




