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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十四章 『双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~ 著・普門院 ひかる』
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個性の古典的かつ新しい表現について

「駅弁は駅で食う物なのに、普通にその辺で売っているのは解せねーのですよ」

 

 お昼ご飯に蛸壺みたいな容器に入った弁当を購入してカウンターで食べようと思っていたマフデトの元に入店客。

 

「いらっしゃいなのですよ。秋文じゃねーですか! 今日はセシャト姉様は休みなのですよ?」

 

 そう、古書店『ふしぎのくに』超常連の秋文少年の来店、マフデトは知り合いということで蛸壺弁当を食べながら話を聞こうとパカりと蓋を開ける。

 

「いつ見てもこの弁当を考えた奴のセンスには脱帽なのですよ」

 もふもふとかやくごはんを食べながら「私に何か用なのです?」と聞くので秋文は「ファンタジー物で面白いWeb小説知らないかなって思ってさ」「てめーも相当読んでるのですよ。わざわざ私に聞く必要もねーと思うのですけど……まぁいいのです。面白いのベクトルがどうかは別として、キャラクターを感じやすい物を一つ教えてやるのですよ」

 

 と弁当を食べながらスマホを操作するマフデトが見せた作品。

 

「『双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~』?」

「一時期、少しだけ方言物が流行ったのですよ。その際に生まれた残滓の一つだと思うのですけど、方言ってのは個性なのですよ。ある種、三人称の上手い使い方として確立しているのかも知れねーのです。まぁとりあえず読んでみるのです」

 

 本作は読んでいると分かるのだが、割と関係なしに実際の名称が普通に出てくる。しかし、架空生物と当然、固有スキルのような異能力も出てくる為、まずこの作品の世界設定という物を知るところから秋文は始める。

 

「そういえばマフデト君、大天使って結構位が低いんだよね? このま聖書の解説本を読んで知ったんだけど」

「熾天使の位が本作でも高いって言ってるのですけど、単純に役職の話なのですよ。なんなら一番強い天使はミカエルでもルシフェルでもなく大天使のガブリエラなのですよ。こいつも入れ替えで熾天使になったりとか宗教の考え方はガバガバなのですけどね」

「そうなの?」

「悪魔の役職が先か天使の役職が先かは私も知らねーのですけど、悪魔の序列も役職関係なしに下位役職でも序列が上にいたり、上位役職でも序列が下にいたりするのです。天使の大きな設定って知っているのですか?」

「なんだろう?」

「悪魔は人間が好き、天使は人間が大嫌いなのですよ。まぁ、要するに光と風で神に作ってもらった美しい自分達と、水と土塊でできているのに神に寵愛を受けている人間という構図で、神の命令だから嫌々人間に関わってるくらいあるのです。ルードヴィヒに対しても超上から目線なのはこういう理屈なのですよ。ここでルードヴィヒに合わせて天使も方言使って話し出したら超カオスだったのですけどね。方言は三人称と相性が良いのがよくわかるのですよ」

「うん、読んでて僕もそう思った」

 

 三人称の地の文があるからこそ、キャラクターの言葉がダイレクトに入ってくる。これもある種の言葉遊びの一つなんだろう。そして、ダイレクトに入ってくるのでキャラクターの命をより感じることができる。恐らくこの手の作品を最初に書いた人は某漫画のワンシーンに影響され笑いを取りに行く事を狙ってたのだと思われるが、その副産物としてキャラクターを身近にするという技法を見つけたとも言える。

 

「逆に三人称全てが方言で書かれていたとすると、これは相当面白いかもしれねーのですけど、相当筆力がいるので中々手出しはできないかもしれねーですね」

 

「ルードヴィヒはイケメンで、国の立て直しをするという目的ができたわけなのですよ。天使を一人従者につけて……でも会話文を読むと日本昔ばなし的なのですよ」

「日本昔ばなしも大分ファンタジーだからね」

「出されるご飯の量とかヤベェのですよね!」

 

 クスクスと笑いながらマフデトは引っ張りダコ弁当、通称蛸壺弁当を食べ終わると、手を合わせて「ご馳走様なのですよ」と言うと、蛸壺容器を母屋の食洗機にいれに行く「どうせ客なんて来ねーので、中はいるのですよ!」とマフデトに誘われて秋文は母屋にご一緒する。

 

「そういえばセシャト姉様が新しいエスプレッソマシンを購入したのですよ!」

「えっ、また?」

「……またなのですよ」

 

 秋文の想い人、この店のもう一人の店主セシャトは甘いお菓子とコーヒーが大好きである。そんな中でエスプレッソマシンを何度となく導入していた。古書店『ふしぎのくに』はあくまで古書店であり、カフェではないが、遊びに来ればお菓子とお茶をもれなくご馳走してもらえる。

 そんなセシャトは読書をしながら最高のコーヒーをと少ないお小遣いでこのあたりを強化して今に至る。

 

「私の母様が、カンヌ映画祭の控室でも使われてるエスプレッソマシンを買ってあげたらしいのです。割とうまいので飲んでいくといいのですよ」

 

 ポーションを選ぶとそれをエスプレッソマシンに入れてボタンを押す。母屋のお菓子入れからマフデトはチョコボールとアポロを選ぶと適量皿にザラザラと出した。

 

「マフデトくん、意外とこの作品ってハイファンタジーしてるよね?」

「そうなのですよ。ただルードヴィヒが東北や何故か播州訛りしているだけで、割と設定は厚めなのです。主人公の目的は分かりやすいので中身を濃厚にしてるんですが、少し説明調な部分はダレるところでもあるのです。異様に覚える事の多いゲームをさせられた時の気持ちなのですよ」

 

 マフデトもまたセシャトと同じ本の虫、どころか本の蟲なのでどんな文章でも基本的に問題なく読めるが、Web小説の苦手とする部分について指摘しておいた。何故ならこの秋文もまた数年Web小説を読み精通してきた中学生である。

 

「聖書もこういう書き方してたりするよね? あれは翻訳した人に左右されるのかもしれないけど」

 

 聖書も念仏も一言で説明すると物語なのである。というか、常識を説明した物語なのでこの手の説明調の文章というのは、作者が読者に伝えたい事という意味合いが強い。しかしその世界を作った創造主である作者ほどの理解を読者が作品から得るのは中々難しい。

 それ故、Web小説は削りのテクニックも必要だったりする。


「ルードヴィヒさん、特にチートがあるわけじゃないのにめちゃくちゃ強いね」

「まぁ、だから神託があって天使のハラリエルと共にあるわけなのですが、よく考えたらこの方が普通なのですよね!」

「というと?」

 

 秋文の疑問にマフデトはホットミルクの入った牛柄のマグカップをコトンと置くとエスプレッソマシンにおいて即席カプチーノを作る。

 

「ナメクジ雑魚みたいな奴にチート持たせて目的遂行させるより、元々めちゃくちゃ強い奴を目にかけて目的遂行させる方が目標達成確率は極めて上がるのですよ。これも一つの俺TUEEEE系譜なのですけど、ルードヴィヒの場合はここまで強くなるに至る部分も少し説明されてるのです」

 

 二人は読んでいて同じ声をあげる。

 

「「出た! 無詠唱!」」

 

 昨今の作品にある実力者の称号のように扱われる魔法の無詠唱発現。これに関しては詠唱をして発現するという事を省略している為、なんでそうなるのかは置いておいてとにかく凄いらしいというパワーワード。

 物凄い古い作品においても実はたまに散見される設定で、それらになるとどうやって無詠唱が成立しているか等も事細やかに説明されているので、気になったら探してみるといい。

 

「ルードヴィヒは好き嫌いが分かれそうな主人公なのですよ」

「そうなの? 僕は好きだけど」

「騎士としてはこれほどにない騎士なのです。精神も成熟、技術も魔法も至高のそれなのです。そして人間としても完成している。そんな人間を基本的に評価する連中はまぁ、つまらないというのですよ」

 

 これは作品のキャラクター故、外れる部分もあるのだが、人は完璧な者に近づき難い性質を持っている。特に日本人に多いのだが、欠点がある方が友人が多いみたいな物だろうか?

 そういう意味ではルードヴィヒは恐ろしいくらいに完璧超人である。

 

「だから、方言使ってるんじゃない?」

「そうなのです! 方言は決して欠点ではないのですけど、このクソ真人間に付与された特徴はチートなんかじゃなくて、方言なのです」

 

 個性の作り方には色々ある。スケベな主人公だったり、運が信じられない程悪かったり、お金に縁がなかったり、方言キャラだったり。

 万人から愛されるキャラクターを作るのは恐らく難しいだろうが、万人受けしやすいキャラクターとなると、それら個性を付与してやればいい。

 

「マフデト君の個性は、セシャトさんにそっくりな美形なのに、びっくりするくらい毒舌な事だよね?」

「うるせーのですよ! てめーに至ってはNPCくらい影が薄いのですよ! 私のは毒舌じゃねーのです。これが私の普通なのですよ」

 

 二人でカプチーノを飲みながらケラケラと笑う。さて次のページを読もうかと二人が思った時、古書店『ふしぎのくに』に来訪者。

 

「ただいまん! 誰もいないん? ヘカが帰ってきたんよー!」

 

 二人は顔を合わす。これまた珍しい人が帰ってきたなとマフデトは店に出る。それに秋文も続いてヘカを迎える。

 

「ヘカ姉様、いらっしゃいなのですよ!」

「マフデトさん、ただいまなんな! 今日は秋文くんもいるんな? これ差し入れなんよ!」

 

 ビニール袋一杯のエナジードリンク、黒いおかっぱ目元の大きな隈、生白い肌に、ゴシックロリータ。古書店『ふしぎのくに』の長女とも言えるヘカがやってくる。彼女もまたWeb小説に精通した一人、何か面白い話が聞けるんじゃないかと秋文も期待して、

 

「ヘカさんこんにちわ!」

「“さん“じゃないん! “お姉ちゃん“なん!」

「“ヘカお姉ちゃん“こんにちわ……」

「それでいいんよ!」

 

 虚な目を大きくさせて笑うヘカを母屋に読み合い第二ラウンドが開始される。

『双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~ 著・普門院 ひかる』今年最後の紹介作品はこちらになりますよぅ! 少し前に流行った方言物と濃厚なファンタジーが織りなす素敵な物語をみなさん一ヶ月間一緒に読みましょうね!

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