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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十三章 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』
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UFOの証明、そういう考え方もあるというお話

 ダンタリアンと双葉が去ったバッカスのバー、厄介な客がはけたと、巻きタバコに火をつけて一服していると一人の客。

 

「まだやっておるかの?」

「もう閉店、だけどいいよ。相手があなたなら話は別だ。何を飲む?」

「元老院、ストレートでもらえるかの?」

 

 金髪に褐色のちんりくりん、パッと見子供だが、セシャト達を作った神様、神様が頼んだ焼酎ストレートに少しバッカスは難色を示す。できれば洋酒を頼んでほしいところだが、所望されたのであれば出すしかないと、煌びやかなボトルをトンと出して一言皮肉。

 

「魔王じゃなくてよかったのか?」

「魔王の素直な味が好きなのはまだまだ若者だの。私はこちらの方がまろやかで好んでおるぞ、しかし子供だけで山に川にと、こんな悪ガキがいるから、痛ましいニュースはなくならんのかもしれんの?」

 

 神様は御神酒でも舐めるように元老院のストレートを口にする。そして「鳥刺あるかの?」と居酒屋メニューを頼んでくるのでバッカスは「自家製のパンチェッタなら」と返す。「ならそれで良い。厚めに切っとくれ」とあくまで焼酎を楽しむ気でいる。神様は何もないところから『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』の擬似小説を取り出すと開いた。

 

「神様。碧くんを襲ったのはなんだと思う? きゅうりを食べたのも?」

「どでかい鯉とか貴様は思うか? 確かに子供の足くらい吸い込んで引っ張るし、きゅうりも食うだろうの。だが、碧に起きた何かは分からんであろう? 悪ガキ共はビビって帰ったしの。これはカッパだったかといえばカッパだし、カッパでないといえばカッパではないの。要するにUFOの証明みたいな物だの」

 

 あっ! UFOだ! といえばそれはその時点でUFOではなくなる。彼らに起きたなんらかの事件はカッパだと思えばカッパの起こした事件なのだ。

 そしてバッカスはふとある事に気づいた。

 

「あなたが来た理由は、この作品『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』の本質の為か? あなたは皆から“神様“と呼ばれる。しかし全書全読の神なんて聞いた事がない。そんな神が存在するのか?」

「ここにおるであろう? 私の事を神様として知っている者をTwitterでも使って探してみるといい、割とおるからの。なら私は神様だの。まひる達はお祭りを楽しむどころか、オガミサマの正体に迫っておるが、祭という環境で行うのはあまり私は良いとは思わんぞ! しかしこの豚の生肉の塩漬けうまいの!」

「パンチェッタだ! 祭でオガミサマを探るのが何が悪い?」

 

 塩の効いたパンチェッタと度数が低めのいも焼酎のストレートはよく合う。神様が舌鼓を打ちながら、祭の本質について語った。

 

「祭ってのは本来祭事だからの。この世ならざる者がいても無礼講、その姿を暴くのは言語道断。だから日本も大陸も欧米も仮面をかぶって祭りは楽しむであろう?」

「その結果、随分イカれてきた実の兄を見つけるわけじゃないか」

「それもまた祭りだからの。百日詣も広義の意味では祭りだからの、分かるか? ダンタリアンの妹。祭は必ず終わらせる方法があるものだの」

 

 なるほどとバッカスは神様の前に置いている元老院にグレナデンシロップと本来はオレンジジュースのところ、ポンジュースを使ってカクテルを作る。

 

「さしずめ、元老院サンライズといったところか。時に神様。ベビーカーおばさんとはなんだったのか?」

 

 怪人ベビーカーおばさんは異常者のフリをしてたが優日の痛い奴を見る目に退散したか、あるいは元々どこか壊れていて明らかに異質な優日に会合して本能的に危険を感じたのか、文章の前後関係からして前者の可能性が高いが、フリだとして、そんな行動をしている時点で異常者であり、怪人である事には間違いない。

 

「なんというか、朝陽はアレだの。貧乏くじを引いてしまったの。大体クソガキの“なんで僕だけ“は自業自得な事が多いが、こやつはまさにとばっちりと言える。同情するぞ。しかしそれ美味そうだの! 私にも一杯作っておくれ」

「まひるは良い姉だな。少し年が離れていても子供同士、大抵泥沼の喧嘩に突入したりするのだがな。“仲直り“とやらはこの物語にどういう意味を持つのか……無粋だったか?」

「いや、しかし貴様の姉のダンタリアンと貴様は喧嘩をする事はあるのか?」

「あの愚姉と? 神様、知っているか? 喧嘩は同レベルの者でしか起きないんだ。まひるも十分、深淵にどっぷり浸かってるって事だろう」

「二人は喧嘩じゃないがの、これお代わりだ!」

 

 元老院サンライズがよほどうまかったのか、それとも朝陽と対になるカクテルを楽しみたいだけなのか、神様の場合は食い意地が張っているので前者八割といったところか……

 

「神を神のままでいさせてやらないまひる少女を神様はどう思う?」

「それこそ人間の性であろう? 人間は探究の怪物だからの、そしていつも脅威と相対しそれらに打ち勝って来た。しかし、このまひるの学友。地味に凄い奴だの」

 

 作品を都合よく動かす装置であると言ってしまえばそれまでなのだが、神崎莉奈氏は話を重ねる毎に味が出てくる。三兄弟の友人枠で言うと朝陽の小学校の友達達が前面に出ている分最初は影は薄かったがいつの間にか、三兄弟を喰うぐらいの存在感は出てきたのではないだろうか?

 

「要するに意図しない脇役の人気というやつか?」

「というよりも、この莉奈という誘導役がいないと物語が滞りやすくなるからの、どうしても怪異に明るくないまひるのお助けキャラとして行動する内に目立ちすぎているという事だ。だって貴様の姉が日がな一日、スマホで砂嵐を眺めていたらどうするかの?」

「あの愚姉は頭がおかしいからそのくらいはするだろう。関わり合いにはなりたくないがな」

「……まぁの。普通は誰かに助けを求めたいものだ。しかしこの年頃は不思議と親には相談しにくいらしくての、結果として兄貴が地蔵菩薩に石をぶつけよった。実に罰当たりな事だ」

「地蔵を封印に使うというのも驚きだが、殺された子供の供養としてなのだろうか?」

 

 お地蔵様は菩薩なのでぶっちゃけた話、仏教では最高レベルの仏である。ちなみに最高位は如来だが封印の守に使うのは基本最下層の明王等が多い。その為この地蔵菩薩の封印は子供の首があるのかもしれない。

 神社の鳥居に仏教の地蔵とオガミサマの封印は神社仏閣の境目が曖昧な時代に成された事が分かる。逆にいえばそれだけヤバいであろうオガミサマを慰めるのに、神様、仏様に神頼みしたとも捉えられる。

 このオガミサマ伝説であるが、日本三大怨霊の菅原道真公、平将門、さらにはえた非人弾圧と色々組み込まれたような分かりそうで分からない得体の知れない物である。古来から人間の恨み程怖い物はないと言われてはいるが、本作につっこむわけではないが、当方のミーティングで民俗学、神学方面に明るいヘカさんが語った感想として弔いとして慰め、埋葬すべき墓なのに、それを広義の意味として封印、結界という祭事の道具に六つの首使ったから怒ってるんじゃないかという面白い意見があった。

 よく墓場で霊が出るというネタを日本も海外もよく行うが、本来穏やかに弔われ眠る場所である墓場は最高の聖域であるという設定が各宗教観念であるので、本来霊は立たない事になる。

 これが弔い、されどオガミサマの封印は冷静に考えるとどうも、あかんやろ! という使われ方をしているのは頷ける。

 

 オガミサマのヤバさに触れて心折れそうなまひるに対して友人達の聖人感にただただ安心感を覚える。

 

「天野と莉奈はなんなんだ? 守護天使か?」

「こいつら中坊とは思えん行動力と肝が据わっておるものな」

「しかし……恐ろしい高い気温の中、公園で紙芝居とはこいつ新手の死神か何かじゃないのか?」

「うむ、確実に子供を殺しきに来ておるな。しかも紙芝居の内容もまさに頭がアレな……この街怪人多すぎるであろう! 神保町などジャンケンおじさんくらいだったのにの」

 

 オガミサマの影響なのか、それともそこそこに治安のアレな地域なのか、こうべ町に住んでいると小学生達の話題には欠けない位ユニークな人々が生息している中、まひるはエンディングへの道をまたひとつ見つける。オガミ様の正体。

 夫婦岩の近くにあるなら鷲林寺の牛女あたりも関係があるのかもしれないが、そこは不明である。

 

「さて、バーは三杯程飲んで出るのが、作法だからの。酔いすぎず空気を楽しんでの!」

「愚姉に聞かせてやりたい崇高な考えだ。オガミサマは家族の封印を解きたいのかもしれない。やはり、首を封印に使ったのは問題外だったのではないのか? こんな重い話を中学生が受け止めれるかというと難しい話ではあるがな」

 

 三杯目の元老院サンライズを飲み終えた神様の手元にデミタスのカップでエスプレッソを差し出す。

 これより物語は祭の終わりに進んでいく。しかしまひるの心境が変わってもいる。元々は橘の家族にあだ名す得体の知れない邪な何かという忌むべき対象だったわけだが、今やオガミサマに関して同情すらし始めている。

 日々おかしくなっていく優日、モモカの死を受け入れられていない朝陽、自らも深淵に足を踏み入れつつも一番現実が見えすぎているまひる。

 彼らの夏が終わると共に物語も読者にその答えを見せる。

 

「さて、こんなところまで来て山登りをしようとは貴様の姉も戯れ遊びが好きよのう?」

「愚かの極みだからな。愚姉は、物語を読むだけで満足できず深淵の底までなめないと気が済まないのだろう」

「まぁ奴は昔からそういうところがあるからの」

 

 特等席で物語の完結を迎えようとしているクレイジーなダンタリアンとそれに付き合わされた不幸な読者である双葉を想いながらゆっくりとコーヒーに舌鼓を打ち呆れた顔でバッカスは尋ねる。

 

「物語のキャラクターに関わることは御法度じゃないのか?」

「……うぬぅ、大丈夫だと思うのだがの……大丈夫だよの?」

 

 答えぬまま、バッカスは大丈夫じゃないだろうという表情を神様に向けた。

『タソガレモモカ 著・著・桃原カナイ』皆様は夏休みはどうお過ごしされましたか? まだ大学生の方は夏休み中でしょうか? もう秋空が顔を出していますよね? でも、まだまだ夏の名残が見られますし感じられます。それでは次回、一ヶ月に渡り覗いていた深淵に蓋がされます。それまでにもう一度本作を楽しんでみてはいかがでしょうか?

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