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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十三章 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』
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その辺の見知らぬ大人は怪人だったりする話

「さて、残り一ヶ月を切ったわけだが、ここからは伏線回収のターンに入るわけだな。起承転結でいえば結びの準備を始めている」

 

 ホワイトラムをショットでゆっくりと舌で転がすバッカス、目の前では爆睡しているダンタリアン。双葉はコープスリバイバーのナンバー2を舐めるように飲みながら話を聞いた。

 

「赤い向日葵か、タネは存外普通のネタだったらしいな。そしてこれはサービスだ」

 

 コトンと差し出されたポーションはヒマワリの種。実に洋酒によく合う。「いただきます」と言って双葉は一粒それを食べるとバッカスはニヤリと笑う。

 

「それは南米産の向日葵によく似た花なんだが、種には幻覚作用があり、複数食べるとトリップする」

「……えっ」

「という都市伝説が昔あってな。そんな嘘を言って向日葵の種を食べた後に車に乗って高速で死んだ奴がいるとか? それにしてもユダヤの星に漢字とは学生の考える事は面白いね」

「快眠のおまじないって奴ですか?」

「あぁ、六芒星というのがまた良いところをついてる」

 

 正三角形を水、逆正三角形を火としているユダヤの星、それを頭寒足熱に充てていると言ったところか? 日本は古来より自然の摂理を支配するという意味で裏五芒を使う事が多いので、どちらかといえば六芒星という物に馴染みはあまりない。

 

「どうやら、コイツは快眠のおまじないじゃないんだろう。本当に快眠したければ、そこで潰れている愚姉のように酒でもしこたま飲めばいい」

「快眠じゃなくて泥酔ですよ……それにしても僕もどちらかといえば寝つきは悪い方なんですよね。あれってなんとかならないですかね?」

「君も六芒星の中に快眠と書いてみればいいじゃないか」


 そんなあからさまに怪しげなオカルトで寝れるなら苦労はしないが、願掛け程度に双葉はやってみようかなと本気で考えた。

 

「優日くんも言ってるように悪夢を見ないのはないですかね?」

「夢を見続けているというのは浅い眠りと聞くな。それも悪夢だ。気持ちのいい物じゃない。悪夢で死んでしまう人も中にはいるらしい。夢のコントロールでも覚えればいいんじゃないか?」

「できるならとっくにしてますよ。あー、橘家。いい感じに不穏になってきてますね。まひるちゃんも優日くんも何か良からぬ事が続いてますから、怪異の影響の本質ってこういうものなのかも知れませんね」

 

 実際、精神を病んだ者や心が壊れた者を介護する家族は高確率で同じく壊れる。最悪自殺するケースが多い。あれらは目に見える怪異の正体とも言える。

 本作におけるメインの主人公はまひるなのだろう。彼女は実の兄に怪異を垣間見て読者と同じ一つの答えに辿り着いた。

 

「コープスリバイバー、ナンバー3だ。ぐっとやってくれ! 遅効性の毒のようにじわじわ回ってくるだろう? 気付けとしての役目は終わり、酒に飲まれ始めている今の気持ち。それこそが深淵に足を一つ踏み入れた感覚に似ていると私は思う。どこまで行っても酒は薬物だからね。双葉くん、オガミサマとやらは何故このタイミングで優日を引き摺り込もうとしているんだろう? もっと早く行っても良かったとは思わないか?」

 

 ニコラシカを舐めるように飲みながらバッカスは嬉々とした瞳を向けて双葉に尋ねる。双葉もフラフラになりながらコープスリバイバーを飲みそれに応えた。

 

「もしかすると優日くんにはその片鱗みたいな物はあったのかもしれません。神社が一つ燃えたでしょう? あれをまひるちゃん達は封印が解けたと考えています。その封印がとけた事で優日くんに怪異が侵食する速度が速くなったと思うのが自然じゃないでしょうか?」

「存外つまらない事を言うんだな。まぁその線が及第点だろうけど、もう少し面白おかしく読んでもいいんじゃないかい? 例えば、優日は既に……朝陽は既にとね」

「もしそうなら結構悲惨な話じゃないですか。なり代わりってのも都市伝説では定番ですけどね。それよか、プールの開放日って一週間くらいあったんですよね。ダンタリアン店長と神様とよく行きましたよ」

「へぇ、愚姉が小学校のプールに、入れるのかい? 犯罪の臭いがするけど」

 

 かつては地域の人々もプールに入る事ができた時代があった。今はロリコン、ショタコンと犯罪者の温床になりかねない為大抵禁止にはなっているが大らかな時代もあったものだ。

 

「店長はビール持ち込んでめちゃくちゃ監視員の先生に怒られてましたね」

「だろうね。本当に迷惑しかおこさないね。この酔っ払いは」

 

 グースカ良い潰れていたダンタリアンだったが、ムクリと目覚める。そして「迎え酒なんでもいいよ」というので、渋々バッカスはローヤルをロックグラスに注ぐ。

 

「子供の無尽蔵の体力も水遊びには勝てないもんだぜ! みんな、プールの後の眠そうな顔は今でも思い出せるよ。帰ってそーめん食べながら寝落ちするんだ。ベビーカーおばさん、双葉の時代にもいたよね? 少し壊れてしまった大人、何か理由があるんだろうけど、子供達からすれば怪人の出来上がり!」

 

 怪人赤マント、口裂け女とこれらのモデルも実際は存在したのかもしれない。本当に些細な少し壊れてしまった大人だった者が噂で大きくなり都市伝説まで格上げされたのか今となっては不明だが、今よりも昔は言葉通りの怪人は多く存在した。

 

「モモカはしっぺい太郎みたいだね。それにしても次は電車の怪か、うまく一つの物語に多くの話を織り交ぜてくるものだね。あの百日後に死ぬ奴よりこのあたりはうまいかもしれない」

「確かに違和感はないですよね。長編なんですけど、各話を独立させている部分もありますし、にしても優日くんはきさらぎ駅にでも迷い込んだんですかね?」

「バッカスも双葉も頭硬いさんね。謎の駅と電車は鉄板じゃない。アタシが懐かしいのは029432よ。むかーし電話で怖い話を聞けるサービスがあったのよ。まひるちゃんの電話から流れる謎音声、これは物語を結に近づける為の装置としての役割があるんだけどさ、電話からの謎ダイヤルもかつては都市伝説として多く排出されてきたのよ。面白がって集英社とかもこぞって色んなサービス展開してた時期もあったしね」

 

 恐らく裏山への位置情報と考えられるこのダイヤルとかつてのダイヤルネタはあまりリンクしないのだが、分かる人からすれば深読みしすぎてしまう描写が多い。

 

「逆に言えば、物語の構成上、人によって感じ方が大きく変わってくる部分もあるのかもしれないな。本質は百日詣とオガミサマでありながら、まさに作品自体が読者の記憶をかりたて未知なる表情を見せてくれるか」

 

 バッカスはそろそろ帰ってもらいたいなと、冷蔵庫からババロアを取り出して強制的にデザートタイム、そしてお引き取り願うつもりでそれをトンと双葉とダンタリアンの手元に置く。

 

「ここで一つ、まひるちゃんは間違いを起こしているね。神という概念だね。アタシは大悪魔だけど、特定の地域では神様さ! バッカスだってそうだろ? 神と悪魔と鬼と怪異とこれらって、全部ひっくるめて神様なんだよね。特にまひるちゃんの生まれた日本という特異な国ではさ、最初に戻るんだ。願いを叶えてくれる何か、何かは分からない者にすがっているわけだよ。でもそれを祀り、祈り、願う時点でそれがどれだけよくない物でも神様になっちゃう頓智なんだよね。祈りの門が人の思う願望器ではなかったように、オガミサマにはオガミサマのルールがあるわけさ、しかし……人間とは特に日本人は古来から妖魔、神々の類ですら調伏してきたわけだよね。これは傲慢で、そしてとても今の言葉を使うと胸熱だね」

 

 八百万の神々とか言っている時点で宗教観が世界レベルで見てもズレていることへの賞賛と皮肉。バッカスはロックアイスを電動かき氷機に入れて、器に氷を盛るとその上からリモンチェロットをたっぷりとかけた物をダンタリアンの前に差し出した。

 

「三分以内に食べれなければ出ていけ、そろそろ閉店だ」

 

 スピリタスに漬けたレモンシロップが香る美味しいかき氷だが、その見た目の美しさに反して強烈な度数で襲ってくる。

 

「えぇ、かき氷三分以内に食べるとか常識的に無理でしょ?」

 

 と言いつつモッモッとかき氷を食べ始め、秒で下顎を冷やした。目を瞑り頭を叩くダンタリアン。夏の風物詩である。

 

「どうせならスイカにウィスキーの瓶ブッ刺したの出してよ。まぁいいや、そろそろアタシ達のぶら怪異も終着駅に向かってそうだし、お暇しようかな? お勘定」

「迷惑料こみ三百万」

「マ?」

 

 黒いカードを取り出しだダンタリアンは冗談だと思ったが、本当に三百万請求された事にと惑いを隠せずにいた。

 

「昔はぼったくりバーも都市伝説だと思われていたらしいぞ。じゃあな愚姉」

 

 そう言って放り出されたダンタリアンと双葉、今は宵の口どころか完全に宵闇の中、どこへ行くのかと思うと……

 

「へぇ、双葉。カッパってさ、尻子玉抜くじゃん? あれさ、超エロくね? 完全に世が世なら、いや昔からカッパってのはそっち系だったのかな?」

「ダンタリアン店長、酔いすぎですって、そろそろ帰りましょうよ。てか、ここどこですか?」

「いやあぁね。ここから先周りして、まひるちゃん達の結末を覗き見して帰ろうじゃないかぁ! ねぇ双葉! 今から登山決行だよ! 隊長はアタシ! ほれいっち、に! いっちに!」

 

 そう言ってなんの道具も持たずにヒールのままダンタリアンは真夜中の山に向けて歩き出す。カッパが尻に手を突っ込むのはそういうプレイではなく魂抜き取っているという事なのだが、酔っ払っているダンタリアンには説明しても意味がないかと諦め、そしてまひる達の結末を見るってなんだよとか思いながら、双葉は同じく暗い、いや眩い山へと足を踏み入れた。

 

いよいよ残すところご紹介もあと数話になりましたねぇ! もう世間では秋の空気がしていますね? 忘れ物はありませんか? 今年の夏は今年しかありませんからね! 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』皆さんは読了しましたか? 実は私、コロナウィルスに罹患してしまいずーっと本作を考察してましたよぅ! では次回もぜひお楽しみに!

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