表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十三章 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』
114/126

web小説とホラーの相性の話

「さて、なんの前触れもなくモモカくんが亡くなったという情報が入ってきたわけだ。そして朝陽くんの願いはいじらしくも死んでしまったモモカくんを返してくださいと来た」

「冥界の門みたいですね」

「おや、知ってる口だね。じゃあとりあえずバッカス! 何かワイン開けてちょーだい!」

 

 カウンターにはダンタリアンと瓜二つのショートカットのバーメイド。ワインセラーから猫の絵の入ったボトルを取り出した。

 

「安価だけど味は美味しい。シュヴァルツの猫なんてどう?」

 

 二人の反応を聞く前に開栓し、グラスに注ぐ。ポーション代わりに海老のアヒージョ。二人の読んでいる作品をバッカスも読んでいたかのようにワインを注ぐとこう話し出した。

 

「さて、物語が半分まで進んだところで最初に戻るらしい。要するに答え合わせの前のネタバラシのターンに入ったという事かな?」

「まぁまぁ、双葉に一番下の妹よ! 心して次のページを読もうじゃないかぁ!」

 

 0日目は、三兄弟の家族、モモカが没した日でもあった。朝陽くんは健気かつ、家族の死を受け入れる事ができずに恐らくは禁じ手であろう。再びモモカに会いたいと願った。

 

「愚姉、貴様ならどのように皆をモモカという犬に遭わせるか?」

「そんなん、全員殺しちゃえばいいんぢゃない?」

「……っ! ダンタリアン店長!」

 

 白ワインをスッと飲み干して熱い息を吐くとダンタリアンは「冗談に決まってんでしょ! まぁ、でも朝陽くんの願い方だとそう持っていく良くない者もいるかもってお話ね! バッカス、それお代わり」

「愚姉、少しは遠慮を覚えろ。しかし本来、ペットの死という物はいつかくる親や兄弟との別れの準備として慣れるものだ。この橘の子らは優しいのだろうが、いつの日か受け入れなければ近親者の死と直面した時、心が死ぬぞ」

 

 十七年生きた犬は大往生だろう。が、時間ではない。他者からすればペットは物かもしれないが、当事者達からすればかけがえのない家族である事には違いない。それだけ愛されたモモカは十分すぎるだろうし、逆に言えばモモカを想いで縛ってはならないというのが仏教的考えだろうか?

 

「おや、優日くん、高二病かな? と言いたいところだけど、何か含むところがあるよね? 人では無くなってしまったとな? これって二つの解釈があるのを双葉は分かるかい?」

「う〜ん、あぁ。まだ人である可能性ってやつですかね?」

「そうそう! ちゃんと読めるようになってんぢゃん! お姉ちゃん嬉しいよ!」

「誰がお姉ちゃんですか! ダンタリアン店長、ついに小さいオッサンまで出てきましたよ!」

 

 最近あまり聞かなくなった集団催眠あるいは集団法螺話の小さいおじさんである。古くはヨーロッパの古い家に住み着く妖精だとかなんだとかあるが、酔って鼠か何かを見間違えた可能性が高いだろう。そして見つかると厄介と言われている小人は朝陽に助言をしてくれる。

 

「この小説、存外うまく書かれているな。はっきり言ってWeb作品のホラーで文章を持って恐怖を煽るのは不可能に近い。何故ならこれら投稿系サイトは大抵イラスト投稿もできたりするから、そちらにマンパワーを振った方が限りなく成功させやすい。代わりこの作品はまさか、あるいは、もしかしてを煽る書き方をしている。結末を読ませる為に必要なテクニックだな」

 

 バッカスが炭酸水を飲みながらそう話すので、ダンタリアンは赤い顔でワインのおかわりを所望する。

 

 嫌々グラスにワインを注ぐとダンタリアンはワインを通して双葉、バッカスを見つめ……。

 

「さぁ、何が本当で何が虚構なのか、三兄弟は正常なのか異常なのか、面白くなってきたよね? まひるちゃんの仮説は正しいのかな? 封印をとく手助けの代わりに願いを叶えてくれるんだって、もしそうならアタシも叶えてもらおうかな? 二十年くらい平成に封印されてたしぃ。おっと次はナイトメアぢゃん!」

「愚姉、ナイトメアとは?」

「あぁ、むかーしね。プレイヤーが死ぬゲームを追想して行うゲームみたいな! ナナシノゲームのベータ版みたいなのが一時期流行ったのよ。フリーゲームで色んな製作者がこぞって作ってたよ。王様ゲームとかがメディア進出したんだっけ? まぁそれの亜種が意味深系の作品だったりと派生はあったけど、この辺はVチューバーに食い物にされ初めて多分、この世から無くなっていくだろうね」

 

 黎に届いた命令もそれらのよくある実行し難い命令が来た。虫を三十匹殺して食べろとの事、昆虫とは書かれていないのだから、カテゴリ的に生きたエビでも買ってきて三十匹茹でてすりつぶしてツミレにして食べればいいと師匠ちゃんは言っていたが、高校生達からすれば虫といえば、その辺にいる昆虫だと思ってしまうだろう。

 ちなみに虫という物は本来病気の概念の事を言います。一つ賢くなれましたね?

 

「願いを叶えてくれる神様。これは有史以来様々な文献に登場するけど、神話一つ読み解いても願いは叶わない物ってのが相場なんだよね。千手観音ってとんでもないのを人間は生み出しちまったけどね。基本的に願いってのは自分で勝ち取るもので願掛け程度にしておきなさいよってお話なの。それ以上は我慢しなさいね。だってさ、何か背負わされてまで叶える程の願いはこの世にはないよ」

 

 実際そうだろうかと双葉は思う。朝陽のように家族が誰か欠ける事への許容できないストレスという物もあるだろうし、例えば死に別れた恋人、あるいは路頭に迷わない為のお金。人は案外何かを背負ってでも叶えなければならない願いは多岐に渡る気がする。

 

 しかしながら完全に酔っ払った状態のダンタリアンはカウンターテーブルに突っ伏して妹だという瓜二つの凛々しいバーメイドを見つめる。

 

「愚姉、少し飲み過ぎだ。トニックウォーターのジンジャエール割でも飲んで酒を出せ」


 コトンとノンアルコールカクテルのジンジャートニックを受け取りながら据わった目でダンタリアンは尋ねる。

 

「氏神信仰ってさ、各地にあるけどやばくね?」

 

 氏神信仰における最高に敷居の高い物は、天皇の御所になる神社である。天皇家は歴とした人間ではあるが、長い歴史を見ると、これこそ世界唯一、実在する神様とも言える。エジプトのファラオ信仰に近い系譜を持つその考えだから成立するわけだが、日本の神道、神の国、神の子という、世界一進んでいる先進国でありながら中々趣がある。

 そしてこの最高品格ではない物でも氏神信仰は多い。何年か前に紹介した作品にも神社物がありそこで詳しく説明しているが、日本はわけの分からない物を祀り讃える傾向にある。臭い物には蓋をしろどころか、恐ろしい物は祀って神様にしてしまえという考えであり、有名なのは菅原道真などだろう。

 

「あの、これよくよく考えると、橘家以外にも色々飛び火してますよね?」

「こっくりさんの十円玉みたいなもんじゃね? あいつも一つの願いを叶えてくれる何かじゃんよ。代わりに誰か祟ますよってね」


 日本版ウィジャ盤。こっくりさん、最初に考えた奴は天才だと思う。弟子入りしたいくらいには創作力がある。曖昧だが興味深い設定に、曖昧だが銅鏡代わりの十円玉を使った降霊。呼び出す神々に名前はない。八百万の何かを呼び出している設定。

 

 酔いがいい具合に回っているダンタリアンに変わりバッカスが語る。

 

「物語はいよいよ終盤ってところか? 四方津でよもつか、読み方だけだとこれも黄泉を意味するんだがな」

「そうなんですか?」

「迷ひ家、ヘンゼルとグレーテル。色々あるだろ? 不思議な場所で何かを食す事をよもつへぐいと言ってな。要するにその地に染まるという意味なんだが、昔は寿命も短かったから二度と故郷に帰れない。要するに別世界の住人になっちまったって考えられてた。黄泉の釜で煮込んだ物食ったように自分は故郷では死者になったってな。黄泉ってのは今と違って昔は少しだけロマンチックな意味で使われてたって知ってるか?」

「えっ、そうなんですか?」

「あぁ、今よりお前さん達のご先祖様はプラトニックな愛を語り合う傾向にあったからな。輪廻という考え方、本来はダメ人間の烙印なんだが、黄泉帰りまた出会いたいなと身分の違う男女が語ったそうだぞ。して、この物語の本質はやはり冥界の門だな、元になっているゲームでは霊という物がそもそもトランスにより垣間見れるある種の中毒状態だった訳だが……果たしてな。さて、何か作ろうか?」

 

 双葉はそのビデオゲームをかつてプレイした事がある。というか、ダンタリアンが店主をしていた十数年前にダンタリアンと神様と肩を並べて母屋でびびりながらプレイした覚えがある。当時はあのゲーム以外も本質の理解に苦しむ作りのゲームが多く輩出されていた。

 こういう時に食べたり飲んだりするものは物語の雰囲気に合う物と相場は決まっている。ダンタリアン似の美女に双葉は少し意地悪な注文をする。

 

「じゃあ、『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』にあったカクテルなんかを」

「ふむ、承知した。して、君は私が用意したカクテルを全て飲み終える覚悟はあるか?」

「どういう意味ですか?」


 表情筋が死んでいるのか? というくらい真顔のバッカスだったが、いくつかボトルを取り回しそれらをステアし、双葉の前にグラスをコトンと出すとそのカクテルの名前を伝えた。

 

「コープス・リバイバーだ。やってくれ」

 

 死者を目覚めさせるカクテルと言われているそのナンバー一。ナンバー四まで飲み続けると、黄泉返った死者を再び深い眠りにつかせるという意味を持つ度数の強いカクテル。

 

「どういう意味でこちらを?」

「君はもしかして君が死んでいるという事を気づいていないのか?」

「えっ……」

 

 冗談を言いそうにないバッカスにそう言われ、双葉は今までを思い返す……すると小さくバッカスがクスりと笑った。

 

「冗談だ」

『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』皆さんはどこまで読まれましたか? あるいは、もう2周目でしょうか? 私は今月、コロナウィルスに罹患してしまい。ベットの上で流して全て読み直してみましたよぅ! 一気読みをするより、ちょこちょこ読んだ方が本作は面白いかもしれません! これぞWeb小説ですねぇ! まだまだご紹介は続きますよぅ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ