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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十三章 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』
110/126

夏の終わりに淡き夢みし古書店で

 昔話はむかしむかし、から始まりめでたしめでたしで終わる。


 かつて、バター香るパン屋の近くにあった小さな古書店を知っている者はお店を探す。かたわれどきに導かれるように扉が開かれているお店、古書特有のその匂いをさせてなんだか子供心に不気味さを感じた古書店『ふしぎのくに』、そこには桃色の髪をした外国人。

 美人だがどこか人を食ったような態度の店主がいて、多分……きっと彼女は初恋の相手だったのだろう。


 もし、まだお店があれば彼女はもういい歳だろうし、結婚もしているかもしれない。久方ぶりに戻ってきた勢いもあったが、あんな小さな古書店良く考えれば未だ続いているなんてあり得ないかと引き返そうとした時、懐かしいバターの香り……足は記憶しているかのように自然に向かい……

 

「あった……古書店『ふしぎのくに』だ」

 

 そう、ご存じ神保町の某所に存在する古書店『ふしぎのくに』少年は青年になり十数年の時を超えて再びやってきた。店に入るときっと後悔する。されど、ここまできたんだという気持ちが後押し。

 

「こんにちは……」

「はい! あなたの? 私の! だーん、たーり、あーん!」

 

 当時の少年、現青年、一ノ瀬双葉は秒で後悔した。


 十数年前と変わらない姿で彼女……いや、あの当時の店主にそっくりな女性がカウンターでお酒を飲みながら出迎えた。

 娘だろうか? とても綺麗だが、記憶上の彼女よりもより軽い印象を受ける。

 

「おや、君は確か双葉くんじゃない? アタシよ、アタシ! 覚えてない?」

「僕の記憶上のダンタリアン店長はオレオレ詐欺的な感じで話しかけてきませんよ……てか娘さんか親戚の方?」

「ノンノン! アタシが! あなたの? 私の! だーん、たーり、あーん!」


 両手を上げてそう言う彼女は十数年前と同一人物だという、流石にそれには双葉も引っかからないが、どうせきたので少しは話を合わせてやろうかと。

 

「じゃあ店長、今何歳ですか?」

「実はアタシもう店長じゃないの! 今日はセシャトさんもマフちゃんも急な用事が入ったからアタシが勝手に店番してるだけよ! 双葉もう成人してるよね? お酒飲もーよー! あと女性に年齢を聞くものじゃないね」

 

 既に何本か空にしたワインのボトルが転がる店内。抜群のプロポーションに獣のような挑発的な瞳とこれまた異様に整った顔が可愛そうなくらい地雷臭香るダンタリアン。

 

「店長飲み過ぎですって、なんかこれデジャブするな……」

「と言うかさ、双葉がここにやってきた。という事は何かの縁があるね。どれ、アタシが久しぶりに何か朗読してあげようか? 昔みたいに膝枕なんかしてさぁ! 奥の母屋……寄ってく?」

 

 上目遣いにそう言うダンタリアンに双葉はゴクリと喉を鳴らした。その反応を見て、ダンタリアンは自らの太ももをパシパシ叩きながら大喜び。

 

「ギャハハハ! 双葉、エロガキだと思ってたけど、さては童貞だね?」

「違いますよ! 毒のありそうな肉は食べないだけですよ」

「へぇ、人は怖いもの見たさってのがあるんだぜ? 動物に本来備わっている筈の本能から逸脱した反応さ、だから幾千幾万の怪異を人は想像し、今なお増え続けてる。そうだね、そんな怖い物見たさな冒険の旅に双葉を案内しようか?」

 

 ヒックとお酒の匂いを漂わせながら、豊満な谷間の中から銀色の鍵を取り出す。


「君に見合う物語はこのあたりかな? 『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』じゃあ、目を瞑って」

 

“тачονογνωση(Web小説疑似体験)“

 

 さぁ、目を開けてご覧と、ダンタリアンは言う。双葉はあぁ、これだこれと見知らぬ街でダンタリアンと並んでいる事に驚かない。2回目なのだ。あの摩訶不思議な体験は夢じゃなった。それどころじゃない、ダンタリアンがおススメしようとした物語が頭の中で朗読される。

 

「オガミサマって、100日も祈らないとダメなんですか?」

「あのさぁ、双葉。知っているかい? 人間って困った時にさ、神様仏様! 助けてぇ! って祈ったり拝んだりするだろ?」

「えぇ、まぁ」


 ダンタリアンは縦割れしたパープルアイの瞳孔を大きくして笑う。


「あれってさ、願い叶えてくれるんだぜ?」

「えっ、そうなんですか?」

「あぁ、だけどさ。それって一体何に祈ったり拝んだりしてるか分かってないでしょ? 本来、神頼みってのはさ、このオガミサマみたいにすっごい時間がかかるもんなんだよ。そんなすぐに願い叶えてくれる神様なんてさ……大抵ろくなもんじゃないよ」

 

 オガミサマのモデルも同一のお話をベースにしているかもしれない。


 本来願いとは時間がかかる物であり代償が必要なのだ。オガミサマで言えば百日間の真剣なる信仰が必要なわけで、すぐさま願いを叶えてくれる何かが、良い物のわけがないのだ。本作の紹介とは直接関係はないが、あえてそう記載させていただく。今まで神様、仏様助けてください! と軽々と、安易と願っていた貴方、あるいは貴女。それは一体何に頼んでいたんですか? 

 実は良くない者に願いを叶えてもらっていたのかもしれません。

 

 例えば、書の大悪魔ダンタリアンとかね。

 

「これ、いきなり日にちが数日飛んでますね。所謂時系列逆順ってやつですか?」

「おぉ、あの可愛らしい頃に教えてあげた言葉を覚えていたかい! そうだね。スロータイプの回転形式に位置するだろうね。13日から入っているのは固定観念として不吉な13を意味しているのか、あるいは意図せずその日付からスタートしたか、まぁでもそこはあまり気にする必要はないよね? 気にすべきはオガミサマ参拝翌日から12日までの間さ! あえてここをすっ飛ばしている時点で大事なファクターになる可能性が極めて高いね」

 

 次のお話は導入として第一話に相当するので、走りは小学生児童の作文らしい物からの始まりとなるのだが、これが中々違和感が強い。どうしても子供の精神年齢とどうやってもズレが生じる為起きていると言えよう。

 

「こう言うのってさ、漫画や映像作品だと、それっぽい汚い字で書かれた物でカムフラージュするだろう? だから同じ内容でも割と受け入れやすいんだけど、しっかり国語能力がついている学生や大人が子供の文章を書くとわりかし丁寧かつ不自然な物が出来上がるんだ。これは小説のある種限界だね」

「まぁ、確かに漢字も多分小三で覚えるような物のみを使ってそれ以外や字画の多い物はひらがなにして表現してるんですよね。これが丁寧すぎるんですか?」

「うん、存外子供はひらがなに頼り、意味不明にカタカナを随所使うんだよ」

 

 当方お子さんがいる方の文集をいくらかかき集め、それらを見ると平均してそんな表現が随所に見られた。これを小説表現するのは流石に難しいなと、そのまま真似をしてタイプで文字起こしをしても異様に不自然な物になりました。

 

「そんなことより、ここで気にしたいのはモモカくん、十七歳ピチピチの女の子についてだね!」

「犬の十七歳って相当な年齢でしょ?」

「そうね。彼女、モモカちゃんは物語のタイトルにもなってるし、このご高齢だ。片足突っ込んでいるんだろうね?」

 

 ムコウガワにさ。

 とダンタリアンは双葉の耳元で囁く。

 

「なんか朝陽くん、達観してますね」

「いやいや、子供ってさ。幼いなりに案外アタシ達大人と同じくらいの精神なんだぜ、だから最近の子は幼いって大人になったらみんな言うわけさ。自分が子供の頃は……ってね? 違うんだよねー! 子供と大人の生きる世界は時間の感覚も世界のあり方も違うんだよ。ありゃある意味異世界だよ」

 

 そう、子供を馬鹿にしてはいけない。彼ら彼女らは我々大人をよく見ている。それは恐ろしいくらいに、目に見える妖怪がいるとすれば、それは子供からすれば大人であり、大人からすれば大人と子供なのだ。

 

「さぁ、本作の役者は出揃ったようだね。朝昼夕の仲良しなお兄ちゃんとお姉ちゃんと弟くん、父君を早くに亡くしているから、母君が三人を女手一つで育ててきっと兄も姉も、どこか気を遣っている部分もあるんだろうね。甘えたい盛りの弟はたくさん甘えさせてあげたい、母にはできるだけ苦労はかけたくないってさ……さぁ、でも本作は少しばかりホラーなわけだよね? この夏、全アタシが堪能した名作さ! 続きが気になるかい? ねぇねぇ双葉ぁ!」

 

 そう語られなかった翌日と12日ここには朝陽くん失踪の物語が関与しているらしい。当方民俗学が得意な方が“こうべ“と言う言葉と百日参りは、百日祝いの事で、首、頭、元、神戸。その全てが神に関する意味がある事を解いていた。要するに七五三も同じで、良くここまで生きてくれたと神に感謝しなければという物をモチーフにしている可能性をミーティング、若い第三世代の皆さん曰くミーツで何度か話を聞いた。

 

「まぁ、読みますけども……ダンタリアン店長。全然話変わりますけど、どうして日本の部活って自由度が低いんですかね? 優日くんがバド部辞めようかと思う気も分からなくはないんですよ。部活なんて趣味じゃないですか、それが作中の弱小校でも半ば強制的な参加を強いられるって、なんかリアルですね。僕は土日潰したくなくて部活は入りませんでした」

「その心は?」

「ダンタリアン店長に出逢い、その10年後くらいにこうしてまた出会えた事ですかね?」

「百点の解答じゃん!」

 

 昼間から酒瓶を手元に仕事をするダンタリアン、今は店長ではない。セシャトさんもマフデトさんも急用で店に出られなかったので、クローズのハズの店を勝手に開けて、店番を勝手にしているだけの不審者だ。

 

「双葉は消しゴムに好きな人の名前とか書いてた?」

「いやぁ、そういうローカルネタ懐かしくは思いますが、自分のところではなかったですね。なんというかこの作品はジュブナイル感が凄いですね。昔、僕もこの手のゲームやった事あるんですよ。都市伝説を検証していく物なんですけどね」

 

 本作を紹介するにあたり、ゲーマーアヌさんにそのレトロゲームを借りミーツ内でもその説明をしつつ本作及びそのゲーム考察を繰り返していたのだが、少しプレミア価格となったが手に入るのでプレイしてみたい方は探してみてください。

 そんな双葉の言葉にダンタリアンは「作者がその作品に強いインスピレーションを受けたって言ってるから間違いないよ。ところで双葉、続きは赤提灯の下でやらないかい? そろそろおでんの“いちこう“が開く頃だよ」

 

 さぁさとスタイルの良いダンタリアンと歩くとお水の同伴みたいで嫌だなぁ思いながら「双葉はお酒いける人?」「嗜む程度には」「じゃあ行こう!」と、十数年前と変わらぬ姿の店主がいる古書店。


 既に神保町ではない場所にいる事をダンタリアンも双葉も忘れ、

 これより双葉は子供の頃と同じ不思議な体験が待っていることも知らない。


 夏の酣、夏の残滓に魅入られて。

 

 

久しぶりの作品紹介ですねぇ! 今月は『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』夏らしい作品を募集したところ、とても素敵で面白くちょっぴり冷やっとする作品の登場です。夏は暑かったですが一番みんなが盛り上がる季節でもありますよね? また来年、と夏にお別れする前にもう一度この一ヶ月間、夏を楽しんでいきましょうね!

是非、皆さん『タソガレモモカ 著・桃原カナイ』丁度完結しましたのでお楽しみくださいねぇ!

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