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セシャトのWeb小説文庫-Act Vorlesen-  作者: 古書店ふしぎのくに
第十二章 『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』
109/126

6の数字が終わる月に導き出した結論

リゾット風のオートミールをバクバクと食べ、喫茶店の定番、ナポリタンに手を伸ばしコーラで流す。

 

 

「ヘカを差し置いて『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』を読んでいたとはいい度胸なんな?」


 今日はいっそう目の下の隈が酷い。不健康そうな白い肌に黒を纏う彼女はまさに屍人のようである。

 シュトゥットガルトという地名を聞いてヘカは空になったナポリタンの皿をカンカンとフォークで叩いて別の料理を所望しつつ同居人の欄に話を振った。

 

「シュトゥットガルトは寿司屋だらけなんな? コンラートとヴィルは逃亡先で寿司デートなん!」

「ヘカ先生、それはこの前観光で行ったシュトゥットガルトというだけで絶対この時代寿司屋なんてねーっすよ」

 

 割愛するがシュトゥットガルトはドイツ最大の観光地にして最大レベルの街なので少しいけば古城もあり、中心の街は割と各国の料理が食べられる。

 値段は引くほど高いが……

 

「まぁ、狭いヨーロッパでも最大の街を観光地化できるんっすから、東京もそういう風に作り替えればいいんすけどね。先生の自称庭、アキバみたいに」

「おい! 欄、東京は観光地なのですよ!」

 

 マフデトさんがそう言うが、欄は指を振る。

 

「世界最大レベルの発展都市というだけであって……まぁ今はシンガポールに負けてますけどね。よくよく考えると観光名所なんてたかが知れてるんすよ。私たちが思う観光地って北海道とか沖縄とか温泉地とかちょっと田舎的な場所を想像するっすよね? 考え方の違いなんすけど、それが大いに今回の大規模感染ウィルスの一件で観光業にダメージを与えたわけっすよ。それが東京という大きな街に集約されていれば、淘汰される店舗は非常事態宣言なんてあろうとなかろうと遅かれ早かれ淘汰されていくのでそこまで経済にダメージは与えなかったっすよ。潰れる店には口が裂けても言えねー事っすけどね。このシュトゥットガルトっすけど本作の時代背景でも結構盛んな街だったんすよ。しかも多くの人種が入り乱れてましたし、木を隠すには森っすね」

 

 既に日本人コロニーもあったりした物だから、歴史と呼ばれる時代から本質は変わっていないのだろう。長期滞在の危険性を除けば、一瞬身を隠し行動決定の思考を巡らすには割といいルートをコンラートは取っている。

 

「そういう事なんな! 中々にいいルートを取ってるんよ!」

「さすがヘカ姉様なのですよ!」

「それ、自分が今説明した内容をヘカ先生が反芻しただけっすよ?」

「欄、てめーは黙ってるのですよ! 窓から放り投げられてーのですか?」

「ほらほら、マフデトさんみたいな少年に慈悲を与えるかどうかのコンラートさんの名裁きを読んで読んで!」

 

 名裁きどころか、またしてもエクソシストこと化け物殺しのご登場である。

 伏線ではあるのだが、このエクソシストわりと支離滅裂なのである。

 

「自分がゴミ呼ばわりしている人様の子に迷惑かけてるのですよ。師匠ちゃんあたりなら、お前が死ねっ! ってオットーにいいそうなのです。しかし、この作品内では吸血鬼は迫害の対象であっても決して驚異的な存在ではなさそうなのですね」

 

 ヒグマ一頭殺すのでもまたぎが複数人でライフルで射抜く程には危険生物であるが、エクソシストは高確率で単独で仕事をこなしている。

 

「この場合、吸血鬼がというより、本作の全般の異形が人間の延長戦みたいな事なんじゃねーっすか?」

 

 そのオットーと呼ばれたエクソシストはどうやら異形の殺人鬼であったらしい。一般的に殺人鬼なんて連中は現実でも人じゃない。行動理念も性的趣向も不明すぎて言葉通り獣を通りこして化け物である。

 

「あー、これ面白い展開やな。切り裂きジャック、あれドイツ系の人間やったよな? あれもまた異形化した人間と言えば本作の化け物概念が見えてくるの。肉体の変貌だけでなく精神の変貌、精神構造と行動理念が変わった概念の違う亜人、それが異形や……まぁそれだけやと一般的にはただの異常者止まりやから、不死者である付加効果つけてあるんが本作の異形と言ったところか」


 ※補足すると切り裂きジャックのDNAを昨今鑑定したところ、ドイツ系だったという事が分かった程度で実際はどうかはもはや闇の中である。

 

 ザ! 異形に迫る! という話をしている中で、ガチの異形どころか千年程か生きている妖怪が店長をしている店のカウンターでそんな議論をしている中、むふーと鼻息を荒らして遅れてやってきたヒーローが叫んだ。

 

「そんな事、どうでもいいん! このシーンはまさかのヴィルのライバル登場回にして、ようやく二人の味方になった教会関係者が出てきた事なん! エロゲで言えば攻略対象が増えた感じなんな! なんとかたすキラルとかの展開なんな!」

 

 やや不穏な空気が流れたが殺伐どころかのほほんとした空気が漂う展開、こちらは好き嫌いが分かれるだろう。


「不幸大好き人間のレシェフさんとかやと、イライラしながら読んどるかもな!」

「ヘカはこのくらいの塩梅は嫌いじゃないんな!」

「自分もこういう流れに慣れてるっすね」

「右に同じ」

 

 欄にメジェドはヘカに続いてこの流れが好きだと語る。方や嫌いではないが、もう少しシビアな展開を望むのはダークサイドの二人。

 

「所謂緩急というやつなのですね。別に嫌いではねーんですけど、私はノンストップ逃走劇&終わりに至る物語の方が趣向が合うのですよ!」

「そうでありんすな! コンラートがどんどん壊れていって、ヴィルに手を出さない代わりに、誰かれ構わず食欲と性欲の吐口にする化け物に変わっていく物語とかの方がそそるかや!」

 

 なんとたすキラルのエログロ物を普段から嗜みペシミストのレシェフさんの作品を毎度読まされている二人からすると刺激がやや足りなかった。

 要するに、このあたりの展開の動かし方も賛否あるわけで、全てを満足させるという事は難しい。

 

 しかし本来敵対すべき存在が共に行動するというのは基本的に胸熱の展開である。コンラートが人としての理性を失ったら然るべき対処を取るという一応の忠告を行うが、それはコンラートではなく、マルティンが自分自身への決意や覚悟のように思えるのもまた胸熱である。

 

「日の出が早いんな? まだ四時半くらいなのに日が昇ってきたんよ! 闇に生きる吸血鬼の時間がそろそろ終わるんな? コンラートは自ら、深淵に堕ちると思い込んでるん。でもそう思える間はまだ大丈夫なんな? 知性も理性もあるんよ」

 

 欄がハイネケンを瓶ごと飲みながら片目でヘカを見つめる。

 

「ヘカ先生もたまには思慮深い事言うんすね。コンラート神父は中々に罪深いっすよね。大好きなヴィルに介錯をお願いするんすから。これぞ最高の愛……といったところっすか? まぁ、ヴィルからすれば溜まったもんじゃねー状況っすけどね。この場合は独りよがりのアガペーに頼るより、人に戻れる方法を探すという前向きな姿勢になれないのがコンラート神父の可愛いとこっすね」

 

 骨董品のような異形を誘き寄せる為に囮作戦が始まるわけだが、その異形と自分を重ねコンラートはそれっぽい事を言う。愛する者に殺してもらいたい。正直、ごめん被るわけである。逆の立場ならヴィルを殺せるのか? そう問いただしたい。

 おバカなコンラートに小一時間問いただしてみたい。


 多分、泣きそうな顔で“無理だ“とかいうだろう。自分にできない事をヴィルにやらそうとするな! という激論が実は当方のミーティングでリアルヘカさんが語っていた。

 コンラート神父のヘタレ具合は愛である。彼のアイデンティティそのものだ。当方の大人組はコンラートともし出会うことがあればハイネケンを三ダースくらい用意して一緒に飲み明かしたい物だと語っている。

 

 この四時半夜明けというのも我々大人組がガチ夜更かしをして、コンラートの活動が鈍くなる時間まで飲み明かしながら語った内容であるが、酒に弱くなり、日の光に弱くなる。しかし、肉体は人のそれよりも強固である。

 

「この作品の異形という連中は一体なんなん? という核心に迫りたいんな? 決して無敵ではないん。でも人間の手に負える存在でもないん。自然の摂理から完全に逸脱したわけではないん」


 万物の霊長論である。人間は地球の現支配者である。あらゆる生物の生殺与奪権を持ち、時には滅ぼし、時には生物の保管を行う。仮定ではあるがコンラートは豚の血液でもある程度栄養価になるらしい発言をしている事からやはり当初の考察通りモーラ系統の吸血鬼であるらしい。本作には全く触れられていないが、モーラは雑食であり、最も人に近い吸血鬼と言って過言ではない。

 

 結果として……

 

「コンラート、人間に戻れるんじゃねーです? 神父失格的な事言ってる割に未だにうだうだ神に縋ってるので紛れもねー女の子の日を常時拗らせてるのですよ! 吸血鬼化と書いて終わりのねー生理なんじゃねーですか?」

 

 極論ではあるが、いろいろな辛い経験をした事も大きく関わっているが、吸血鬼になるという事で間違いなく彼を構成するなんらかのホルモンバランスは変わったのだろう。例えば、本当に彼が子を宿す事ができるように変わってきているとすれば……よりマフデトさんの皮肉ぶった冗談は核心にすら変わる。

 このコンラート神父、生理現象疑惑を付与したところで、数え役満確定として聴牌としておこう。

 

 コミカルなオットー退治も中々いい味を出していて個人的には嫌いではないが、このコンラート神父、生理疑惑を頭の片隅に置きながら読んでいただきたい。彼の全てのネガティブな鬱思考が許容の範囲に思えてくる。

 

「うん、中々事前予習としてはいい感じなんな! これで今日のBLフェスタはより楽しめるんよ! もうこのまま開店までいるん!」

 

 ヘカがトレードマークの魔剤、モンスターエナジーをポシェットから取り出して一杯やっている姿を見て、誰がBLフェスタは丁度今完全に終わった事を話し出せばいいのか全員がアイコンタクトを取り合い、ため息をつくのは店長・汐緒。

 

「ヘカさん、誠に残念なお知らせがありんすよ」

『堕ちた神父と血の接吻 ― Die Geschichte des Vampirs ― 著・譚月遊生季』さて、本作のご紹介ですが、本日をもって一旦終了とさせていただきますよぅ! 当方が導き出した一つの考察と結論ですがコンラート神父は女の子というとんでもない暴論ですね! しかし物語の予想も感想も読み手の自由ですよぅ! そしてそれを提供してくれた譚月遊生季さん、一ヶ月間ありがとうございました! この場を借りて御礼申し上げます!

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